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2020年6月の発売以来、デザイン書としては異例のスピードで増刷を重ね、累計発行部数6万部となっている『見てわかる、迷わず決まる配色アイデア 3色だけでセンスのいい色』。発売前からそのわかりやすさ、使いやすさがSNSで話題となり、書店店頭でも売れ続けています。
類書の多いデザイン書の中でも、なぜ本書はここまでヒットしているのでしょうか。そのポイントとなる本作りの秘訣と販売戦略について、編集担当の宇枝瑞穂さんと営業担当の堺智子さんにお話を伺いました。
(写真左)インプレス ビジュアル&ライフ編集部 宇枝瑞穂さん
(写真右)同 出版営業局 堺 智子さん
―― まずは刊行のきっかけからお伺いします。
宇枝 著者のingectar-eさんは、著書の累計発行部数が30万部以上という実績があり、書店でコーナーが作られるほどの人気の方です。そのingectar-eさんとの別件での打ち合わせの時に、「配色の本を作りたい」というお話が出たのがきっかけです。
その後、テレビ番組で「3色」をテーマにお買い物をするコーナーを眺めているときに、ふと「3色に限定した配色本はどうだろう」とひらめきました。
プレゼン資料でも3色にまとめるとわかりやすくなるという手法があるので、デザイン全般で色選びに悩む方のニーズもありそうだと思いました。そこで著者に提案したところ「やってみましょう」という流れになったのです。
―― 「3色だけ」を使った配色アイデアに特化した本は珍しいのでは。
宇枝 3色だけで「センスのある配色」を表現するところがもっとも苦労した点です。また、パッと見てすぐに配色のポイントがつかめるように工夫しています。
本書はデザイナーはもちろん、専門知識がない人でも活用していただけるように想定して作っています。しかし、著者はプロ向けのさまざまなデザイン書を作ってきているので、掲載する作例のレベルがどうしても高くなってしまいます。そこで、センスが良くて、なおかつシンプルで真似しやすいというバランスをとるのが難しかったです。
▼ファッションやインテリアにも取り入れやすいニュアンスカラーの配色。豊富な使用例も掲載
▼プレゼン資料や名刺などビジネスシーンにも活用できる“3色”も収録
―― ジャケットも伝わりやすくていいですね。
宇枝 「3色だけでセンスのいい配色」というテーマを表現するために、カバーもタイトルやコピーの黒文字以外のグラフィックは3色で構成しています。発売当時、配色本の表紙で写真を使っている書籍はほとんど見かけなかったので、このマカロンの表紙が店頭でも目立っていたようです。書店員の方からは、「3色本」「マカロン本」と呼ばれています。
「え? これも3色?」という帯のメインキャッチコピーも悩みました。バナーなどを作る社内の担当者などにも、リアルユーザーとしての意見をもらって作っています。この表紙から、3色でも単調にならずにセンスのいいデザインが可能だとわかっていただけるのではないでしょうか。
―― 見開きでわかるという書籍の作りもとてもいいですね。
宇枝 配色本は「色の教科書」といったイメージがあり、既刊本は配色数が1,000以上など、掲載されている色の組み合わせがとにかく多いのですが、この本は92の組み合わせに絞っています。色の知識の少ない方はバリエーションがありすぎても迷ってしまうと思いますので、それがかえって良かったのだと思います。
「もう迷わなくて大丈夫」、そして「すぐに使える」という点が、本書の最大の長所といえます。
―― 発売前から反響があったそうですね。
宇枝 発売の4日前に、著者と親交のあるデザイナーさんがTwitterでオススメしてくれて、バズりました。6万くらいの「いいね」がついて、そこから火がついたのです。
配色の悩みを持っている人は多いようで、グラフィックデザイナーやWebデザイナー、イラストレーターといったプロの方々から、仕事でデザインする必要があるノンデザイナーの方や趣味でイラストを描いている方にまで、幅広く関心を持っていただけたようです。
堺 ほかにもデザイン関連の仕事をされている方のリツイートもあって、発売前にネット書店のランキングが急上昇しました。それを見た書店さんから注文がくるなど反響があり、発売日には完売書店も出たほどです。売れるとは思っていましたが、こんなに急激に動くとは思っていませんでした。
それからは、あれよあれよという感じで重版がかかりました。
▼本書の売上推移。発売以降、コンスタントに売れ続けているようすがわかる
―― 発売当初の書店店頭での反応はいかがでしたか?
堺 やはり「Twitterを見て探しに来られたお客様が多い」と聞きました。書店員さんからは「タイトルがすごくいいね」という反応が多かったです。
類書のタイトルは「かわいい」とか「きれいな」色という抽象的な表現が多いのですが、3色という少ない配色でおしゃれにデザインできる本は新鮮で、最初から積極的に仕掛けてくれる書店さんが多かったという印象です。
―― どのような立地や売場で反響が良いのでしょうか。
堺 まずは駅に近い大型店で反応がありました。芸術書売場がメインのスタートでしたが、デザインのお仕事をされていない方でも使える内容なので、新たに「資料作成にも使えます」という文言のPOPをつくり、話題書のコーナーでも展開していただいています。
本書はいろいろな場面で活用できると思いますので、芸術書以外でも展開していただけるよう、書店さんにアプローチしています。
この本を気に入ってくださったイラストレーターさん作成のPOP(下の図版2点)もご用意しています。生の声は説得力が違いますよね。
Illustration:セキサトコ
―― 売行きの後押しとなるような施策も実施されているそうですね。
堺 初速がとても良いので、社内で「3色10万部プロジェクト」を立ち上げました。重版が続いて6万部が見えてきた9月くらいから、マーケティング部、編集部、営業部が全社一丸となって、連携をとりながら進めています。
書店さんには、個店での仕掛けから始まってチェーン全体での取り組みにつなげていただいたり、読書週間と絡めて、本書の見本の無料ダウンロードとポイントキャンペーンを実施していただいたりしました。
―― 書店店頭での反響も心強いですね。
堺 紀伊國屋書店さんではチェーン全体で初速が良かったため、9~10月に本書の展開を強化していただきました。特に、梅田本店さんでは7か所に置いていただいています。
どの入り口から入っても目につくように、芸術書、パソコン書、ビジネス書、話題書などそれぞれのジャンル担当の方が売り伸ばしたいという思いを込めて、手書きのPOPとともに展開してくださいました。みなさんの愛が感じられて、本当にありがたいです。
さらに、本書の購入者特典として著者がデザインしてくれた、可愛らしいしおりが好評です。展開していただいているお店には、このしおりを特典として配布いただいています。
▼紀伊國屋書店 梅田本店デザイン書売場の平台では同著者の本と並べて展開
―― これからどんな読者に広げていきたいですか?
宇枝 いま購入されている読者は女性の方が多いですが、ぜひ男性の方にも本書を手に取っていただきたいです。作例がたっぷりで、すぐ実践できる一冊ですので、お仕事をはじめ、さまざまな場面で役立てていただければ嬉しいですね。
▼元書店員であり、「POP王」としても知られる本記事のライター・内田剛が本書を参考に作成したPOPがこちら