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1.2020年度に行われる大学入試改革では、従来の「努力」に基づいた学力審査から、「主体性・多様性・協働性」を問う内容に重点が置かれるようになる。
2.2000年代後半より、大学の定員数が志願者数を上回り、学生が大学を選ぶ時代になった。
3.ネット社会になり情報・知識の地域間格差はなくなってきている一方、生まれ育った環境に左右される「身体的文化資本」の格差が生まれている。今後の入試は身体的文化資本を問うものになっていくため、子どもたちの身体的文化資本が育つような教育政策に切り替えていく必要がある。
「努力すれば報われる」「頑張ることに意味がある」は、日本で古くから言われてきた、王道の精神論である。日本は戦後数十年間、この独自の「ガンバリズム」のもと飛躍的な発展を遂げてきた。もちろんこの頑張りは間違いではないし、努力は必要だ。しかし、これは「一億総中流」という稀有なバランスで成り立っていた、当時の日本社会だからこそ功を奏した精神論だとも言える。
今の私たちを取り巻く世界は、個人的な頑張りだけではどうしようもない問題に溢れている。感染症、異常気象、格差社会……。真面目に生きているのに、頑張っているのに、なぜこんな事態になるの? と天を仰ぐようなことばかりだ。IT化などに伴い、今後はさらに予測できない時代になるだろう。そんな不透明な時代に必要な「教育」とは何か。本書は、2020年度に行われる大学入試改革を軸に、日本の教育問題に深く切り込んでいる。
長らく「努力」の結果としての学力を重視した大学入試が行われてきたが、この度の改革によりその路線が変わるという。もちろん基礎学力は必要だが、アイデア力、コミュニケーション力、コーディネート力などの多様な能力が評価対象となる。もちろん、この中には「努力する力」も入るだろう。
自分たちが受けてきた「教育」は、その時代の価値観を反映したものであること。今後は過去の「成功体験」を追随しても意味がないこと。本書を読むと、それがよくわかる。教育関係者や保護者ならずとも、一読して損はない良書である。