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  • 【5G】は何が新しい?携帯電話がつながる理由から最新の“通信技術”までを解説

    2020年09月05日
    知る・学ぶ
    草野真一:講談社BOOK倶楽部
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    5G
    著者:岡嶋裕史
    発売日:2020年07月
    発行所:講談社
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784065204955

     

    それは第5世代を意味している

    5Gという呼称を聞くことが増えました。サービスを提供しはじめた企業のほとんどが移動体通信事業者(ドコモ、au、ソフトバンクなど)であることから、多くの人が新しい通信規格の呼び名だろうぐらいのイメージはもっているでしょう。少し詳しい人なら、5GのGとはGeneration、すなわち世代という意味だと知っているかもしれません。

    いかにも、5Gとは携帯電話(移動通信システム)の第5世代をあらわしています。第5である以上は当然、第1世代があるわけですが、それがどういう状態で、第5とはどう違うのか、説明できる人は多くはありません。

    本書は、それをわかりやすく、平易に解説してくれる本です。しかも、かなり深いところ(「電波とはなんだろう」など)から説明しており、この手の書物で生まれがちな「わかったつもりになる」軽薄な理解を防いでくれます。本文とは直接関係のない話題はコラムの形でまとめられており、各章の末尾には、かならず「第○章のツボ」としてその章の要点が説明されています。ともすれば難解になってしまう内容(電波は目に見えないので解説が難しい)を、できるかぎりわかりやすく説明しようという本書ならびに著者の心づかいのあらわれです。

     

    1Gから5Gへ

    本書がしていない通俗的な表現で説明すると、1Gすなわち第1世代の携帯電話とは、平野ノラがパットの入った服を着て肩からぶら下げているアレです。「しもしも~」ってやつです。第1世代の携帯電話はバブル時代の象徴的なアイコンだったので、平野ノラの「オッケーバブリー」な芸に適していました。
    あれがどうしてあんなにでかいのかというと、むろんポケットサイズにする技術がなかったからですが、アナログ電話だからというのもとても大きな理由になっています。
    じつは、携帯電話は2Gからデジタルになるのです。そのことによってメールの送受信も可能になり、携帯電話は大きな技術革新を果たすことになりました。
    (本書も語っていますが、デジタルがアナログより優れているという意味では断じてありません)

    ノラのアレを起点とし、携帯電話はいちじるしく発展しました。現在あなたが持っているスマホ/携帯電話は4G。パソコンを使ってしか見ることができなかったウェブページをいつでもどこでも見ることが可能になり、動画の閲覧もできるようになりました。

    そして5G。本書のタイトルにあるように、それは大容量・低遅延・多接続が特徴です。
    たとえば現在、われわれは「容量」に関して制限を受けています。わかりやすくいうと「ギガ縛り」があるのです。たいがいのスマホ/携帯電話には、「使っていいのは1ヵ月に6GB(ギガバイト)まで」というような制限があります。
    これは、スマホ/携帯電話を持っている誰もが、ギガの縛りなく青天井で接続すると、ネットワークが維持できなくなる、というやむにやまれぬ事情から生まれたものです。言い換えればこれが4Gの限界であり、そこを気にしなくていいのが5Gである、と単純に理解することも可能でしょう。

     

    5Gが描き出す夢

    5Gがもっともその効力をあらわすのはIoT(Internet of Things)だといわれています。IoTとはモノのインターネット、すなわち家電などのネット接続です。部分的には、スマホを使って帰宅前にエアコンのスイッチを入れておくとか、すでに実現しています。

    5Gが当たり前になった世界の夢としてよく語られるのは、クルマの自動運転です。

    自動車がすべてインターネットにつながれば、個人が自動車の制御をする必要はありません。交差点ではクルマが勝手に止まるでしょうし、高速道路に至れば速度をあげます。住宅街や通学路ではドライバーが意識しなくても徐行します。救急車や消防車などの緊急車両が近づいたらクルマが勝手によけて先行させます。道に迷うこともありません。

    これは「今、もっとも求められている技術」だといっていいでしょう。高齢になれば自動車の運転は難しくなるため、運転免許証の返納が求められていますが、田舎になればなるほどそれは困難です。田舎では電車やバスなどの公共交通機関が発達しておらず、クルマがなければどこにも行けません。そのことがますます公共交通機関の経営を圧迫し、廃線や発着本数の減少を招いています。まさに悪循環です。

    クルマの自動運転の実現は、これを解決する手段になり得ます。

    とはいえ、これは「夢」にすぎません。

     

    未来のかたちを思い描く

    本書は1Gから4Gまでの携帯電話のあゆみをていねいにふりかえり、5Gでなにがもたらされるのかを語っています。しかし、5Gが当たり前になった世界の姿に関しては、ほとんどふれていません。

    おそらく、勃興期からインターネットをはじめとするテクノロジーに接してきた著者にはわかっているのでしょう。理論をもちいて語ることは可能だ。しかし、絶対にそのとおりにはならない。
    利権やら既得権益やらそれを使って一儲けしようというたくらみやら、さまざまな要素によって技術は成長します。理論だけを眺めるならば、それはひどくいびつでゆがんだ姿に見えるものです。
    テッド・ネルソン(現在のウェブの元となる概念を提唱した人)は、インターネットが今の形になるとは考えていなかったでしょう。たぶん、矮小化だと思ってるんじゃないかな。しかし、彼の理想としたものには真実はありません。真実はあなたの目の前にあります。

    5Gは、どんなことに使われるかわからない、どんなことにも使えそうだ、という意味でまだ無限の可能性を秘めています。西部開拓の歴史は終わってしまっても、こうしたフロンティアがある限り、人類には楽しい未来が待っているのだと思います。

    本書があえて多くの紙数を費やして「今、実現されていること」を詳細に語り、未来についてほとんどふれることがないのは、結局のところ「それは夢にすぎないから」だと思われます。実際の姿はここからは見えない。たしかなのは「変わる」ということだけです。これは著者の真摯な姿勢のあらわれでしょう。

    5Gという新技術をもちいてどんな未来を開くのか。本書はそこに関わっていこうとする人にとって、最高のテキストになるはずです。

    (レビュアー:草野真一)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2020年8月6日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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