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昨今猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症。これをきっかけに本格的に浸透し始めている「在宅勤務」という働き方には、当然メリットもデメリットもありますが、「好きな音楽を流しながら仕事ができる」ことをメリットに挙げる方は多いのではないでしょうか。
しかし、もしかすると、流す曲の種類──格調高いクラシック音楽か、荒れ狂うヘビメタか、はたまたポップなアイドルソングか──によって、知らず知らずのうちに仕事のパフォーマンスが大きな影響を受けているかもしれません。実際に、音楽配信サービスなどが提供するプレイリストには「仕事・勉強が捗る」「気分が落ち着く」など、“音楽を聴く目的”にあわせて組まれたものも多くあります。
音楽が、人間の心理と行動に及ぼす影響とは? 早川書房から刊行されている『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』では、さまざまな実験によって明らかになった事実が数多く紹介されています。
たとえば、本書のタイトルにもなっているワインにまつわる実験では、
・ワインショップの客は、店内でポップスが流れているときよりクラシック音楽が流れているときの方が、3倍以上高価なワインを購入する
・ワインの味の感じ方は、そのとき掛かっているBGMに影響される。力強くヘビーな曲を聴くと力強くヘビーな味に、甘美でソフトな曲を聴くと甘美でソフトな味に感じる傾向にある
という、驚くべき結果が示されています。
本書で扱われている内容はさらに多岐にわたり、「音楽が喚起する感情」「音楽の好みと性格の関係」「音楽療法」「音楽はIQや思考力を向上させるか」「音楽の才能とは何か」「人が音楽を愛する理由」など、考えうるテーマはほぼ網羅されているのではないかと思うほどの充実ぶり。現代社会では、私たちは意識せずとも音楽に囲まれて暮らしていますが、その音楽こそが私たちの生活を形作っている面もありそうです。
事実や結果の単なる列挙ではなく、読み物として非常に平易で面白く書かれているのも本書のポイントです。ところどころで挿入される気の抜けたジョークは、「国際レーザー会議で講演を行なったかと思えば、パブでギターを演奏してビールをただでもらっている」という著者ジョン・パウエルの、愉快な人となりの表れといえるでしょう。
これまで在宅勤務のときに単に好きな曲をかけていただけの人は、そのとき要求される仕事の性質(丁寧さか、スピードか、創造性か)によって選曲を変えると、従来以上の成果に繋がるかもしれません。