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世界中で広がっている新型コロナウイルスの影響により、カミュの代表作『ペスト』が世界中で読まれています。
ペストという“目に見えない敵”と対峙した市民の姿や、「なぜ私がこの病気に?」「なぜ今このときに?」と答えの出ない現実を突きつけられる不条理さが、コロナ禍で不安の中生きるわたしたちと符合します。
日本国内では、小説の文庫版が2月初旬から急激に売れ始め、2月以降だけで10回以上増刷されています。約70年前に発表された名作が、いまこれだけ手に取られていることに、文学という存在の大きさを感じさせられます。
しかし、『ペスト』は450ページ以上の長編小説であり、“不条理”の研究者でもあるカミュゆえの難解な内容ということもあって、じっくり腰を据えて読みたい作品です。興味があって原作小説を購入したものの、積読になっている人も少なくないようです。
まずは、今月発売された『60分でわかる カミュの「ペスト」』がおすすめです。
『ペスト』は、1940年代の当時フランス領だったアルジェリア・オラン市が舞台。医師のリウーが一匹の鼠の死骸を見つけることから物語が始まります。
市内では鼠の大量死が起こり、それに呼応するように死者が相次ぎます。患者の症状からリウーは、これをペストだと宣言し対応するよう行政や市の医師会に働きかけますが、どちらも決断できないまま時間だけが過ぎていきます。
▲行政の指示がないとペストだと断言できない医師会(右)と、医師会のお墨付きがないと動かない行政(中央)。それに憤るリウー(左)。現場と政治のギャップは、コロナ禍に生きる私たちも共感するのではないでしょうか。
初動に遅れたオラン市は、感染者が増え続け、とうとう封鎖されます。市民が外に出ることは許されず、ペストに怯えながら日々を過ごすほかありません。
「どうしてペストがこの市に」と嘆き、「どうしようもない」と絶望する市民。ペストは神からの啓示だと宗教への信仰を深める人も出てきました。この混沌とした市内で、医師のリウーとその友人タルーは感染症と闘う道を選びます。
▲ペストが流行する直前にオラン市に住み始めたタルー(右)。若く聡明な彼がリウーを力強く支えます。
この後、リウーとタルーはボランティアの保健隊を結成しペストに立ち向かいますが、不条理なリアルは物語の最後まで2人を襲います。
カミュは『ペスト』を通して、人間の在り方を問います。
命を選別しないペストを前に、うなだれる市民になることも一つの選択肢かもしれません。しかし、2人のように自ら保健隊を結成しペストと対峙することを選ぶこともできます。それぞれの道には、道理はありますが正解はありません。答えの出ない問いに対して、読者に深く考えることを促します。
『60分でわかる カミュの「ペスト」』は、マンガとあらすじを駆使し『ペスト』のエッセンスを抽出、難解な作品を60分で理解できるように構成されています。
本書には、新型コロナウイルスに対峙する今と『ペスト』の世界をリンクさせた著者・大竹稽さんによる解説を収録。withコロナを生きる私たちの在り方を考えさせられます。
「『ペスト』が難しくてなかなか読み進められない」「気になってはいるものの、読む時間が取れない」という人におすすめです。