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  • 『離婚の経済学』不倫、再婚、経済的格差…統計・調査が明かす夫婦のリアル

    2020年06月20日
    知る・学ぶ
    田中香織:講談社BOOK倶楽部
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    離婚の経済学
    著者:橘木俊詔 迫田さやか
    発売日:2020年04月
    発行所:講談社
    価格:990円(税込)
    ISBNコード:9784065191514

    友人や知人から結婚の知らせを受けて、出会いのきっかけや2人のなれそめについて聞くことはよくある。一方、離婚と聞いてその理由や経緯を知ることは、本人が進んで話してくれる場合を除くと、憚(はばか)りがある。そのため、離婚の理由やその後の暮らしについても、断片的な知識しか得られないのが実情だった。しかし現代日本の離婚件数について、著者たちはプロローグでこう述べている。

    厚生労働省「人口動態調査」によれば、2018年に20万8333件の離婚が起きている。過去の日本と比較すればかなり多くの人が経験する事象になっており、離婚はいつ誰に降りかかっても驚かない時代となった。

    予想よりも多くて驚いた! 一般的に「別れ」というものは、大きなエネルギーが必要とされる。中でも最上級だと思われるのが、法制度上の「離婚」。感情や手間のみならず、あらゆる関係性が総動員される苦労は、さぞ大きいことだろう。それでも現実としてこれだけ多くの人が離婚を選んでいることに、思わず目を開かされた。そこに、次はこんな一文が。

    最後に強調しておきたいことがある。それは、離婚という事象は一人の男性と一人の女性が結婚後の人生のある時期に決行するものなので、男性と女性とでそれぞれの離婚動機とそれによる結末がかなり異なる点に注目した。
    こういう見方から本書を読んでいただければ、結婚・離婚なんて女性の問題だと思っていた男性読者もこれまでさほど論じされなかった話題に、新しい興味が湧くかもしれない。

    なるほど、私はどうしても女性側から話を聞くことが多かったので、男性にとっての「離婚」はほとんど知らない。そういう意味では、男女それぞれの事情を知ることができるのは、貴重な機会といえる。

    本書では2人の著者が日本における「離婚」という現象を、各種のデータを基に、さまざなま角度から分析している。くわえて離婚に関係する事態、たとえば「不倫」「再婚」「養育費の支払い」「経済的格差」などについても、その関連性が紐解かれていくのは興味深い。巻末の参考文献は13ページにも及び、国内外の資料名が列挙されていた。「離婚」に興味がある方の読み物としてだけでなく、「離婚」にまつわる諸問題を考えたい学生や研究者にも十分役立つのでは、と感じる濃度だった。

    さて、内容が気になった方にはまず、目次を眺めていただきたい。全8章からなる本書の、幅広い切り口が一目で伝わってくる。特に各節のタイトルは気になるものが多く、個人的には「離婚率のもっとも高い年齢」「ロシアでなぜ離婚が多いのか」「明治時代の離婚率は高かった」「軍国主義下の離婚」「不倫男女の経済的地位」「142万のひとり親世帯」「あなたの再婚は記憶力の欠如から?」などに興味をそそられ、初めて知ることも多かった。

    ちなみにページ数は通常の新書と変わりないが、読みごたえはものすごい。だから読み始めて「面白いけれどちょっと手ごわい!」と感じた方は、節ごとに読むもよし、グラフだけ眺めてみるもよし。そんな風に読み方を変えてみた後、余力のある時に全体を通して触れることで、きっと内容がするする頭に入ってくるに違いない。

    後半部では、男女の働き方や世帯所得、賃金や養育費といった、経済的な視点から見えてくる問題と「離婚」についても語られていく。また個々人の生活や労働に密接した社会制度や慣行が、時代の変化に追いつききれていない現状と、今後の見通しも提言されている。

    本書は、離婚についての「具体的な手段」を説明した本ではない。だが、性別や年齢、就業環境や子どもの有無など、それぞれの状況や家族形態によって論じられた内容は、離婚を視野に入れている方にとっては、さまざまな「未来の形」を現実的に見せてくれる。1人では知ることが難しかった離婚後の道や選択肢に気づく可能性もある。そして、「離婚」という出来事が「誰に降りかかっても驚かない」時代だからこそ、知識としても知っておくことには、十分意味があるだろう。

    (レビュアー:田中香織)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2020年5月29日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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