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1. 「面白い」は日常的に使われる言葉だが、じつに多義的な概念だ。大きく分けると、笑えるような「面白さ」と、興味をそそられるような「面白さ」があるが、両方の要素をもっているものもたくさんある。
2.「面白さ」は多分に個々の「感覚的」なものであり、「こうすれば面白くなる」というわかりやすい手法はない。大勢を集めて会議しても「面白さ」は生み出せない。
3.「面白い」は万人に与えられた十分な権利だ。生きること自体もまた、「面白い」を探す旅なのである。
「面白いことやっちゃいましょうよ」「こうしたら面白くなると思いますよ」といった言葉を、ビジネスの場でよく耳にする。耳障りが悪いわけではないものの、こういう人に「どんな面白いことなのか」をあらためて聞くと、どうも「面白い」を軽んじたような場合や、「全然面白くない」という場合が少なくない。さらには「面白いことを目指すポーズを取る」だけで、中身がまったく伴っていない人もいる。
「面白い」という言葉は抽象的であるがゆえ、なかば軽んじられて使われるケースも多い。その一方で、命がけとも言えるほどに「面白い」を追求し、「面白さ」をクリエイトする人もいる。「面白い」の使われ方や使う側の思いの差はあまりに大きく、「面白い」が持つ意味も「楽しい」「役に立つ」「興味深い」「有益である」など、実に多彩だ。
本書はこの難しいワードを細かく分析・解説し、「面白い」の使われ方を多面的に紹介してくれる。しかしより興味深いのは、「面白い」を万人に与えられた十分な権利として、そして「生きる道筋」として紹介しているところだ。特に後半で綴られる、孤独な若い世代に向けた著者の筆致は、心地良い読後感を与えてくれるとともに、生きること自体の「面白さ」にも導いてくれる。
「面白い」が持つ本質的な意味とその力を語った、なんとも貴重な一冊である。