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1. 教養を身につけるとは、文化遺伝子のリレーの担い手となるということだ。教養とは、知識+人格である。この文脈における人格は、「相対化」と「闊達(かったつ)さ」に集約できる。
2.教養の道の歩みには、認知バイアスや偏見・先入観といった落とし穴がある。これらを回避するひとつのアプローチが、「批判的思考」という自分に対するツッコミである。
3.知らない言葉で思考することはできないので、語彙を豊かにすることが決定的に重要になる。それは自分の言葉の制約から、より自由になることを意味する。
本書のターゲットは「大学の新入生と高校生、そして背伸びをした中学生」とされているが、大人にこそ読んでもらいたい内容だ。本書の特長を4点あげる。
まず、その内容・主張がきわめてまっとうなことである。著者は「教養とはなにか」「なぜそれが必要か」という問いに真っすぐ向き合うところから議論を始める。そして認知バイアスや偏見・先入観といった、教養の道を歩むうえでの落とし穴と、そこに陥らない方法について触れる。巻末では、教養を磨くための実践スキルが紹介されている。
次に、最新の研究の知見が取り入れられていることだ。したがって、本書を読むと新しい発見や、意外な見方に出会える。たとえば、社会的に評価される「共感」についてである。その共感が秘める意外にネガティブな側面など、なるほどと思う。
さらに、本書は基本的にエンターテインメントをめざして書かれている。著者が自分でそう書いているから間違いない。とにかく脱線が多い。ただし伏線はしっかり敷かれているので、まったくの無駄話ではない。著者はかなりの映画ファンのようなので、同じ趣味を持つ読者であれば人一倍楽しめるだろう。文章も弾けまくっている。
最後に、教養を切り口にすることにより、いまの日本の社会の諸問題がどのようにして起こっているのか、構造的に理解できるように書かれている。本書の底流には、現代社会に対する著者の怒りにも似た問題意識があるのが感じられる。大人に読んでもらいたいゆえんである。