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1.ハンセン病は、パキスタン全土で数万の患者を抱えながらも、専従医師はわずか5名で、北西辺境州には皆無だった。そのような状況を見捨てておくわけにもいかず、著者は、ハンセン病治療に従事することを決めた。
2.8年間におよぶソ連軍介入によって、もともと貧しかったアフガニスタンの国土は荒廃し、人口は半減して生産力は壊滅的な打撃を受けた。
3.著者らは、カラシャイ村に診療所を設置した。不安定な情勢や物資の確保など、問題は山積していたが、私心のない医療活動によって住民たちの信頼を得た。
中村哲医師が銃弾に倒れた――2019年12月、悲報が日本中を駆けめぐった。彼は、35年間にわたってパキスタンとアフガニスタンで医療活動を行い、2019年12月4日、アフガニスタンで銃撃されて命を落とした。
本書は、著者の現地での活動や現地の人々との関わりを通して、日本の国際化の問題点にも言及している。著者と支援団体「ペシャワール会」は、従来の欧米の海外協力活動とは一線を画し、欧米の医療を現地に持ち込むのではなく、あくまで現地の人材を育成し、地元の医療の伝統を守って活動を続けた。そこには、日本からはうかがい知れない、多大なる苦労があったようだ。
欧米諸国は、国際的な活動を進めるにあたって、現地の文化や伝統は脇に置き、欧米の方法を他国に持ち込むことをよしとしている。それは日本の海外活動も例外ではない。著者のアフガニスタンでの活動は、日本の排他的な社会との戦いでもあった。
本書は、著者のアフガニスタンでの活動について記されているが、著者が直面した問題は、近代思想と近代文明に依存して生きる私たち自身の問題でもある。不安定な状態が続く世界情勢を前に、今、私たちは国際社会に生きる一人の日本人として、何を考え、何を問題視し、これからどうしていくべきか――本書はさまざまな問いを投げかけてくれた。