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1.ビジネスの現場でこじれたままになっている問題の多くは、関係性のなかで生じる「適応課題」である。適応課題は、互いの「ナラティヴ」の間に溝があることにより生じている。
2.ナラティヴとは、立場・役割・専門性などによって生まれる「解釈の枠組み」である。著者は、対話によってナラティヴの溝に橋を架けることを提唱する。
3.対話とは、準備・観察・解釈・介入という4ステップで「新しい関係性を築く」プロセスを意味する。その第一歩は、自分のナラティヴを脇に置くことである。
本書は、静かな語り口が非常に印象的な一冊である。しかし、その言葉はしっかりと読者の心に刻まれていくだろう。それは、多くのビジネスパーソンと向き合ってきた著者の経験が、文章ににじみ出ているからだと推察する。
表紙には“Dialogue and Narrative”と刻まれている。本書でいうナラティヴとは、ビジネスをするうえでの専門性や職業倫理、組織文化などに基づいた「解釈の枠組み」のことである。組織の中で起きている、「わかりあえなさ」や「やっかいな問題」は、ノウハウやスキルが通用しない問題のことが多い。そして、当事者同士のナラティヴの間に溝ができていて、しかもそのことに気づいていない状態である可能性が高い。
そこで著者は、自分のナラティヴをいったん脇に置いて、相手のナラティヴを観察してみることをすすめている。溝を越え、相手のナラティヴのなかに飛び移って、こちら側を見てみるのだ。そうしたことを通じて、当事者間に「新しい関係性を構築すること」が可能になり、物事は解消に向かっていく。こうした一連のプロセスをダイアローグ、対話と呼んでいる。
対話の本質は、「相手の身になって考えても、相手の身になれないということを受け入れておく」ことともいえる。それを心構えのレベルではなく、実践に裏づけられた再現性の高いメソッドとして提示しているのが、本書の革新的な点だ。
不要な対立を避け、組織の未来を明るいものにするために、ぜひ身につけておきたいアプローチである。