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  • 注目の高校生作家・鈴木るりかさんが心惹かれる文学とは

    2019年12月04日
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    ほんのひきだし編集部
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    2017年10月、中学2年生のときに『さよなら、田中さん』でデビューし、文学界を騒然とさせた鈴木るりかさん。今年10月には、その続編となる『太陽はひとりぼっち』が発売されました。

    本作でさらにパワーアップした「るりかワールド」を届けてくれた著者は、現在高校1年生。忙しい日々を過ごすなか、くり返し手にするという2作品について、エッセイを寄せていただきました。

    太陽はひとりぼっち
    著者:鈴木るりか
    発売日:2019年10月
    発行所:小学館
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784093865562

     

    心惹かれる昭和文学

    狐狸庵先生こと遠藤周作は『ぐうたら社会学』のなかで、「憂鬱な時、心面白くない時、それを開いてみることにしている。(中略)私はそれを再読、三読するたびに何か心晴れるのである。」といって、ご自分で作られた一冊の切り抜き帖を挙げているが(新聞や雑誌に載った「あわて者」の記事を集めたものらしい)、私にとって「再読するたびに何か心が晴れる」のは、まさにこの『ぐうたら社会学』なのだった。

    ぐうたら社会学
    著者:遠藤周作
    発売日:2011年05月
    発行所:集英社
    価格:576円(税込)
    ISBNコード:9784087467031

    狐狸庵先生のエッセイを初めて読んだのは、没後何十年かの特集が組まれた文芸誌に掲載された作品で「新幹線に乗った時、間違えて座席にあった他人のお弁当を食べてしまった」という話だった。読んで声を出すほど笑ったエッセイは初めてだった。弁当を食べられてしまった男性と狐狸庵先生とのすっとぼけた会話が何ともおかしく、さらにこのあと、トドメのオチがある。まるで完璧な極上のコントのよう。

    以来、狐狸庵先生のエッセイを読むようになったが、読後なぜ「何か心が晴れる」のか。それは「ちゃんとした大人にならなくても大丈夫だよ」と言ってくれているような気がして、奇妙な勇気が湧いてくるからだ。

    私は小さい頃、周囲の大人に「ちゃんとしなきゃいい大人になれないよ」「ちゃんとした大人になるためにしっかり勉強しなさい」などとよく言われた。

    だから「ちゃんとしなきゃダメだ」と思い続け、気を張って自分で自分を疲れさせ、ちゃんとできない自分に落ち込むこともあったが、狐狸庵先生のエッセイを読むと「なんだ、別にちゃんとしなくても大丈夫じゃないか」と思えて、凝り固まった全身に再び血が巡るように安堵し、大いに救われたのだった。

    そのような読まれ方を、狐狸庵先生が望まれたかはわからないが、読書というのは本来とても個人的なもので、感じ方、捉え方は自由なのだ。

    短編集は売れない、と時々耳にするが、好んで読むのは短編集だ。高校生になり、授業数と宿題が増え、帰宅後も読書時間を確保するのが以前より難しくなった。長編は2、3日、間を置いてしまうと、次に本を開いた時、再びその世界に入り込むのに少し時間がかかるが、短編だとほぼ一気に最後まで読める。そこがいい。今のライフスタイルに合っている。

    繰り返し読むのもやはり短編だ。三浦哲郎の「みのむし」(『ふなうた 短篇集モザイクII』(新潮文庫)収録)は、もう何度読んだことだろう。自分でもわからないほど再読しているが、飽きるどころか、読むたびに衝撃に打たれ身が引きしまる思いがする。流麗でありながら、過不足のない的確な文章、情景がありありと浮かぶ。東北弁がさらに哀しみを増す。どこを切っても血が流れ出す、生きた人間を描いた作品。この短さで、この深さ。

    私もいつかこんなふうに、誰かにとって生涯忘れられない、心を震わせる短編を書きたい。それができたら、もう書く事をやめてもいい、とさえ思っている。でもこの地点にまで到達するのは並大抵のことではないので、これからもなんとかしがみついて、細々とでもずっと書いていくのだろうなあ、と覚悟している。

    鈴木るりか
    2003年、東京都生まれ。小学4年、5年、6年時に3年連続で、小学館主催の『12歳の文学賞』大賞を受賞。2017年10月、14歳の誕生日に『さよなら、田中さん』でデビュー。10万部を超えるベストセラーに。韓国や台湾でも翻訳される。2018年、地方の中学を舞台にした2作目の連作短編集『14歳、明日の時間割』を刊行。韓国でも翻訳されている。現在、都内私立女子高校1年生在学中。

     

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