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  • 夢=なりたい職業じゃないよね?新章タラレバ娘は“夢”を探すフリーターが主人公

    2019年12月01日
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    黒田順子:講談社コミックプラス
    Pocket

    東京タラレバ娘シーズン2 1
    著者:東村アキコ
    発売日:2019年10月
    発行所:講談社
    価格:484円(税込)
    ISBNコード:9784065172285

    これほど登場人物と自分を置き換えて、あれやこれやと考えながら読む漫画はないのではないでしょうか。脳の中のある部分では漫画を見ているのに、違う部分では今までの自分の人生を検証している……そんな脳のパラレル状態で読み続けました。

    待ちに待った『東京タラレバ娘シーズン2』、一体、どんな設定でどんな登場人物なんだろうと期待に胸を膨らませてページをめくったら、いきなり冒頭から崩れ落ちそうになりました。

    タラレバ言ってたら 時代が変わってしまった

    アイタタタ。昭和的な表現で恐縮ですが、これはもう急所を一発で当てられたも同然です。昭和・平成・令和と3つも年号を生きて来た女にとって。

    主人公の廣田令菜(ひろた れいな)は、1989年1月5日生まれ。つまりギリギリ昭和生まれの30歳。
    東京で両親と実家住まいのフリーター。お金も彼氏もないけれど、自宅のソファーに寝転がり、コンビニ神スイーツを食べながら映画を見る生活に満足しています。

    派遣でしか働いたことがない令菜の新しいアルバイト先は、小さな区立図書館。ここで働く10歳年上、彼氏ナシの森田昭子(しょうこ)は見た目は堅物っぽいのに、いきなり連れて行かれたのはボーイズバーでした。全く違うタイプなのに、なぜか全員同じ名前で、しかもイケメン!
    思わず初めてエールフランスに乗ったとき、キャビンアテンダントが全員男性で全員違うキャラなのに超イケメンだったので、“ウハウハ”(古っ!)してしまった25年前の自分を思い出してしまいました!!
    そして、またとんでもないキャラの登場です。90年代を彷彿とさせる派手な花柄スーツを着た暑苦しいナルシストで、誰もツッコむことすらないダジャレを言う昭和臭プンプンの男。

    しかも、こっちが赤面しそうなことを初対面にもかかわらず聞いてくるのです。

    君の夢は何ですか?

    私の夢って何だっけ? と、また私の脳の一部が真面目に考えていると、別の脳がイケメンボーイよしお5号のセリフに反応します。

    この国ってみんな「夢」って言われると
    ほぼ「なりたい職業」って意味に捉えちゃいますよね

    おっしゃる通り! 今回も、東村アキコ先生の観察眼は鋭い!!
    仕事ではなく「人生単位で叶えたい夢」が何なのか思いつかない令菜は、小学6年生のときに書いた自分の夢を知り、愕然とします。

    まっ、そう来るよね、『東京タラレバ娘』だもんね。と私は納得したのですが、それなりに今を楽しみ結婚願望のない令菜は戸惑います。
    そこで令菜は、子供がいる友人に結婚して良かったことを聞くと、

    自分が子供の時 楽しかった色んなイベントを
    もう一回味わえるってことかなぁ

    これこそが自分の思い描いていた夢だと気づく令菜ですが、このセリフに私は、今度こそ急所をつかれた気がしました。
    私の場合は自分がやりたくてもできなかったことを娘とやりたいという願望なのですが、例えばキティちゃんグッズをごっそり買う、8段飾りの雛人形を飾る、ピアノを習う、遊園地や動物園に行く、クリスマスや誕生日を祝う、観覧車に乗るetc.……。

    さっきまで令菜との共通点を見つけて笑い、令菜より優っている部分では優越感に浸っていたのに、ここでは心の奥底に沈め蓋をしていたものを掘り起こされた気分です。まるで埋めたことさえ忘れていた「タイムカプセル」をこじ開けられてしまったような。

    前シリーズと比べ、恋愛に対してエンジンのかかりが遅かった令菜も、自分の夢を叶えるためにいよいよ動き出します。
    そして、どんなふうに出てくるのか楽しみだったタラの白子とレバーの「タラ・レバ」コンビも、バージョンアップして登場します。

    『東京タラレバ娘シーズン2』は、相変わらず色々なことを考えさせられる漫画ですが、安穏とした日々を送り間延びしていた自分に、もう一度気合を入れてくれる作品だと思います。

    試し読みはこちら

    (レビュアー:黒田順子)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2019年11月4日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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