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    本来の“物語の面白さ”と、紙の本でしかできない楽しいしかけを:原ゆたかさん・原京子さんインタビュー

    2019年12月29日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    まだゾロリに出会う前、迷い込んだ森で、オオカミの山賊・ウルウルに捕まってしまったイノシシの双子の兄弟・イシシとノシシ。

    「さて、どうやって食べてやろうか……」と言われ、これは大変!とあわてたイシシ・ノシシは、続きが気になってたまらなくなるお話をでっち上げ、一日、また一日と生き延びようとします。

    「かいけつゾロリ」のスピンオフシリーズ「イシシとノシシのスッポコペッポコへんてこ話」。第3弾『百桃太郎』について、原ゆたかさん・原京子さんご夫妻にお話を伺います。

    百桃太郎
    著者:原京子 原ゆたか
    発売日:2019年10月
    発行所:ポプラ社
    価格:1,210円(税込)
    ISBNコード:9784591162620

    〈この記事はインタビュー後編です。前編はこちら

     

    紙の本でしかできない「めくる楽しさ・開く楽しさ」を

    ――『百桃太郎』は、観音折りのパノラマページも見どころの一つです。数えてみたら5か所もありました。開いてみると、お話の世界が広がります。

    ゆたか: 子どもの頃から、雑誌や本で細かいところまで描き込んである絵が大好きで、僕はそのページの中に入り込んでいつまでも遊んでいられました。そんな楽しさを次の子どもたちにも伝えたいという思いをこめて、パノラマページをたくさん描いてあげたかったんです。でもいざ描き始めると、こんなに大変なんだとちょっと後悔しました(笑)。

    京子: 製本の都合で観音ページを入れられる場所は決まっているので、お話の重要なシーンがそこにちゃんとくるように調整するのが大変でしたね。『オーボラーラ男爵の大冒険』を「つっこみカード」付きにしたり、「へんてこ話」シリーズでは毎回何かしら“実験”をすることにしているんですよ。でもまあ、今回は思っていたよりずーっと大変でした(笑)。

    ―― しかも、観音ページはすべてカラーなんですよね。挿絵って本を読み進める楽しみの一つですけど、まさかそれがパノラマでフルカラーだなんて豪華です。

    ゆたか:「へんてこ話」シリーズを実験的なものにしようと思ったのは、やっぱり紙の本でしかできないことをしたいからですよね。われわれは紙の本で長くやってきましたけど、デジタルに取って代わられるんじゃないか、ひょっとしたらこれが最後の紙の本になってしまうかもしれないという危機感があります。「デジタルじゃなくて紙の本でしかできないことを、今のうちにやっておこうよ」ということで、本を開く楽しみを味わってもらえるように、観音ページを入れることにしたんです。

     

    物語を作るときに大切にしていること

    ――(インタビュー前編で)“待つ”ことについてのお話が出たので伺いたいのですが、『百桃太郎』って、シリーズ10年ぶりの新作なんですよね。刊行が発表されたときには「ついに!」「前作を読んだときは小学生だったな」と懐かしむ声も上がっていました。

    京子: 実はもっと前から着手はしていたんですけど、東日本大震災が起きて、当初考えていたものから大きくお話を変えることにしたんです。

    ゆたか: 最初は「桃だけじゃなくて、いろんなものが川に流れてきたら面白いよね」ということで書き進めていたんだけど、どうしても津波の映像と重なってしまうからやめることにして、それからしばらく詰まってしまいました。

    京子: それからどういう導入にするかいろいろと考えていたら「そういえば桃太郎のおばあさんは、どうやってあんなに大きな桃を陸へ上げたんだろう」という話になって、「どうやって持ち上げたのか考えてみよう」ということで再び動き出したんです。

    ―― 実は昔話って、そういう“ツッコミどころ”がたくさん隠れていますよね。6年前には「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました」という広告コピーが話題になりました。

    ゆたか:「いったい鬼にどんな悪さをされたんだろう」って思うよね。そこは僕たちも考えました。理屈っぽい二人だから、すぐ討論会になっちゃうんだけど(苦笑)。

    ―― ケンカになることもありますか?

    京子: イヤ~な空気になることはあります(笑)。

    ゆたか: まあ、それはしょうがないよね。でも「こういうことがやりたいんだよね」と説明して相手が納得しないってことは、きっとそのまま本にしても、読んでくれた子の何人かは納得しないってことだと思うんです。だから、めっちゃ面白いギャグを思いついても、お話の邪魔になるなと思ったらしかたなく諦めます。

    京子: アイデアを生むのは彼のほうが圧倒的に得意で、私はどちらかというとそれを広げていくほうが得意なんです。なので、彼が考えたことを文章でリアリティを出すという役割分担でお話を作っています。そのためには何回でもキャッチボールをしないと。時間はかかりますけどね。

    ―― 今回『百桃太郎』のお話を作るときは、どんなことを大事にされましたか?

    ゆたか:「なぜ鬼ヶ島へ行くことになったのか」を考えていたとき、「これは復讐劇になっちゃうのかな」「やり返して本当にスッキリするのかな」「鬼はその後どんなふうに暮らしていくんだろう」「困ったらまた、村を襲いにきちゃうんじゃないかなあ」……と想像がふくらんでいきました。でも今の世の中と同じで、自分だけの都合とか、片方から見て正しいことだけを通しても解決にならないじゃない。相手が悪いにせよ友情のためにせよ「戦ってやっつけよう」という展開になりがちだけど、そこはゾロリと同じで、相手を傷つけずに何とかうまくやれないかなあ、というスタンスでお話を考えました。

    京子: 鬼たちも人間も動物も、みんなそれぞれに助け合って生きていくような、ホッとする終わり方にしたいなと思っていました。

    ゆたか: さっき震災の話をしたことともつながるけれど、たとえばべつの土地に暮らす人たちが困っているとき、それにどんなふうに関わるか。そんな視点も盛り込みました。でも、大人が求めがちな“ためになるいい話”にするつもりはなくて、ワクワクする、ドキドキする、ホッとするという物語の根本的な楽しさに特化するというのが大前提です。昔話って、もともとは、おばあさんが囲炉裏端で、子どもにウケるようにおおげさに盛ったりして、どんどん話がめちゃくちゃになっていっても、その時その話が楽しければよかったんだと思うんです。デヴィッド・リンチの映画みたいに(笑)。

    京子: 大人的には「リンチの悪夢を見せられただけだった」と面白がれるし、勝手に意味を考える楽しさがあるかもしれないけれど、活字、特に子どもの本になるとそうもいかないですよね。やっぱり子どもたちには、ワクワク、ドキドキしつつ、ちゃんと納得いくお話を作りたい。布石を打って後からそれが活きて、ああよかったと、最後にハッピーエンドで締めくくる話に構成したいんです。

    ゆたか: 大人っていつの間にか常識的になっちゃって、「こうあらねばならない」ってことばかり考えたり、子どもに押し付けたりしがちです。僕はやっぱり、いつまでも“プロの小学生”でありたいなと思います。大人が「子どもにはこうあってほしい」と思っていることを伝えるんじゃなくて、子どもの気持ちになって「こういう話が聞きたかったな」と思うものを作っていきたいですね。

     

    気になる次回作は……!?

    ―― 待望の3作目が出たばかりですが、すでに次回作を楽しみにしている読者も多いと思います。あとがきのページでは、イシシとノシシが「ピノキオの冒険話もまだしてないだな」「とっておきのサンタの話や、おまぬけなどろぼうの話もウルウルは気に入ってくれただよ」とお二人に詰め寄っていますね(笑)。

    京子: 実はもう、次のお話は決まっています。当初から10冊くらいのシリーズにしたいなと考えていたので、少なくとも5冊くらいまでは出せるといいですね。

    ゆたか: それから、このシリーズはイシシ・ノシシがゾロリに出会う前のお話なので、最後は「かいけつゾロリ」の1作目につなげたいんです。今はまだ、もらっていこうとした腹巻きはウルウルに取り上げられたままですし、イシシ・ノシシはゾロリの存在を知りません。それに、彼らは山賊としてゾロリに出会っていますけど、まだ山賊でもないですからね。「もしかするとそのうち、ウルウルから『ゾロリっていうすごいやつがいるんだ』っていう話が出てくるのかも」とか、「イシシ・ノシシはいつから腹巻きをするようになるんだろう」とか、ゾロリの本編のお話も思い出しながら楽しんでもらえると嬉しいです。

    京子: オオカミのウルウルは、初めこそ「食べてやる」としか思っていなかったのが、だんだん心を開いてきていますよね。イシシ・ノシシが山賊になった後の、修行の話なんかも面白いと思いますよ。どんなふうに「かいけつゾロリ」のお話につながるのか、ぜひ楽しみにしていてください。

    ―― 本日はありがとうございました!

    百桃太郎
    著者:原京子 原ゆたか
    発売日:2019年10月
    発行所:ポプラ社
    価格:1,210円(税込)
    ISBNコード:9784591162620
    オーボラーラ男爵の大冒険
    著者:原京子 原ゆたか
    発売日:2009年03月
    発行所:ポプラ社
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784591105306
    へいきのヘイタ
    著者:原ゆたか 原京子
    発売日:2007年10月
    発行所:ポプラ社
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784591099315




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