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    映画『影踏み』篠原哲雄監督インタビュー “映像化不可能”を実現した縦軸と横軸

    2019年11月15日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    11月8日(金)にロケ地の群馬県で先行公開された映画『影踏み』が、15日(金)、ついに全国公開されました。

    山崎まさよしさんが14年ぶりの映画主演をつとめる『影踏み』は、『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64―ロクヨン―』などで知られるミステリー作家・横山秀夫さんの同名小説を、『月とキャベツ』『花戦さ』などで知られる篠原哲雄監督が映画化したもの。

    今回ほんのひきだし編集部は、篠原監督にお話を伺いました。

    篠原哲雄(しのはら てつお)
    1962年2月9日生まれ。東京都出身。明治大学法学部卒。その後、助監督として森田芳光、金子修介、根岸吉太郎監督作品などに就く傍ら、自主制作も開始。1989年に8ミリ『RUNNING HIGH』がPFF89特別賞を受賞。1993年に16ミリ『草の上の仕事』が神戸国際インディペンデント映画祭でグランプリ受賞。国内外の映画祭を経て劇場公開となる。山崎まさよしが主演した初長編『月とキャベツ』(96)がヒット。その後、『洗濯機は俺にまかせろ』(99)、『はつ恋』(00)、『命』『木曜組曲』(ともに02)、『昭和歌議大全集』(03)、『深呼吸の必要』『天国の本屋~恋火』(ともに04)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06)など多彩な作品を手がける。近年の監督作品に野村萬斎主演の『花戦さ』(17)、いくえみ綾原作の『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』(18)、文音&草笛光子が主演した『ばぁちゃんロード』(18)など。『月とキャベツ』のスタッフが再結集して制作した『君から目が離せない Eyes On You』(19)では、山崎まさよしが主題歌を提供した。

    影踏み
    著者:横山秀夫(小説家)
    発売日:2007年02月
    発行所:祥伝社
    価格:723円(税込)
    ISBNコード:9784396333294

    ―― 横山秀夫作品はその多くが映像化されてきましたが、そのなかで『影踏み』は長らく映像化不可能といわれてきました。『影踏み』の映画化が決まって原作を読んだとき、どんなことを考えましたか。

    「啓二をどう表すか」が当然課題になってくるだろうなと思いましたが、同時にそれが面白いとも思いました。

    啓二は主人公・真壁修一の弟であり相棒です。彼の存在ゆえ『影踏み』は映像化不可能といわれてきたわけですが、彼を(映画に)出さないという選択肢はありませんから。啓二の描き方は、原作を読んでいる時点でだいたいのところは決めていました。原作での啓二は、小説だからこその描き方です。「映画ならではの見せ方を」と考えたとき、“実在”を色濃くするという結論に至りました。

    それからもう一点、ポイントとなったのが、尾野真千子さんが演じている「久子」という人物です。修一と啓二は幼い頃、久子をめぐる恋のライバルでもありました。でも原作では、久子の話はあまり描かれていないんですよね。

    映画では、修一と啓二の話を横軸、彼女の話を縦軸にして、どう物語を膨らませていくかを考えました。なので修一と啓二だけでなく、ヒロインの存在も非常に重要でしたね。

    ―― 次に、北村匠海さん(啓二役)、尾野真千子さん(久子役)のキャスティング理由について教えてください。特に北村匠海さんは、キャラクター造形という点からも難しかったのではと感じましたが。

    まず久子については、劇中に出てくる「あの人は私なんです」というセリフ、これに込められている強固な意思が彼女のキャラクターを象徴しています。過去2作一緒に仕事をしてきたなかで信頼もありましたし、芯の強い女性というイメージから尾野さんにお願いしました。

    北村くんについても、僕は最初から彼がいいなと思っていました。

    啓二は、ちょっと影がありながらも“光”を持っている存在です。そもそも「啓二をどう表現するか」がポイントだったので難しいキャスティングでしたが、ナイーブそうで苦悩が画になる表情の方、それでいて凛々しさを持った青年を、ということと、山崎さんが彫りの深いタイプなので、その点も加味しつつ「北村くんはどうかな」と思っていました。

    ―― 2016年の伊参スタジオ映画祭で山崎まさよしさんと横山秀夫さんが意気投合し、山崎さんとも伊参とも縁の深かった篠原監督にオファーがあった……という流れで映画化の話が進み、「主演:山崎まさよし」は自然に決定していたと伺いました。山崎さんにとっては実に14年ぶりの映画出演となるわけですが、山崎さんの「真壁修一」はいかがでしたか。

    中国では監督のことを「導演」というそうですが、僕は演出の方針として、演ずることに導き、どんな映画でもその役者さんに“その役として存在してもらう”という方針で、山崎さんにもあまり細かい注文はつけませんでした。

    とはいえ山崎さんが真壁修一を演じるというのは最初から前提としてあったので、表情や言葉遣いなど、彼が表現したとき自然になるように脚本開発の段階から意識して作り込みました。

    ――『影踏み』は、警察小説が多い横山作品のなかで、「官」ではなく「民」、しかも泥棒=犯罪者を主人公にした作品です。山崎さんは横山作品をすべて読んでいるほどの大ファンだそうですが、この“唯一の例外”に臨むのは大きなチャレンジだったのではないでしょうか。

    真壁修一は、自分なりの“正義”をもって行動しているけれど、その行動が社会的には“犯罪”であるという矛盾を抱えている。でもその犯罪にも、自分なりの正義を貫いている。そういう人物造形を、原作者の横山秀夫さんも含めて撮影に入る前に話していたので、その時点でいわば「役作り」はできていたわけです。「この存在そのものがその役だ」という考えに寄り添っていけば、演出をあれこれ言う必要はありません。

    長いセリフも多かったので山崎さんはずいぶん苦労したと思いますが、「僕は俳優じゃないですから」と言いながらも、彼の佇まいが活きた「真壁修一」をやってくれました。

    ―― 最後に、本作のキーである“影”について伺います。篠原監督ご自身は、こういう“影”の存在を普段から感じることがありますか?

    『影踏み』の“影”はやっぱり特別だと思いますけど、僕自身でいうと弟(音楽プロデューサーの篠原廣人さん)がそうですね。性格が全然違うタイプなので、子どもの頃はそうでもなかったんですが、近いフィールドで仕事をしていることもあって、どこか弟を見ながら生きている感じというか、友人とは違う距離感・関係性だなという認識があります。

    ―― 近くて、どこかしら自分とつながっている感覚というのでしょうか。

    そうですね。生き方も全然違いますし、他者なんですけど、自分とはまた異なる“自己”のような感覚もあるというか。修一にとっての“影”は余計にそうだと思います。

    でもその“影”って自分だけが感じているものなので、本当に他者そのものなのか自分自身から生み出されたものなのか、オーバーラップするような、区別が曖昧なところがありますよね。

    ―― そういう“影”が必要なときもあれば、それを乗り越えることで一人の人間として強くなれるという側面もありますよね……。本日はありがとうございました!

     

    映画『影踏み』作品情報

    STORY
    世間のルールを外れ、プロの窃盗犯として生きてきた真壁修一(山崎まさよし)。ただの「空き巣」とは違う。深夜に人のいる住宅に忍び込み、現金を持ち去る凄腕の「ノビ師」だ。証拠も残さず、取り調べにも決して口を割らない。高く強固な壁を思わせるそのしたたかさで、地元警察からは「ノビカベ」の異名で呼ばれていた。ある夜、真壁は偶然侵入した寝室で、就寝中の夫に火を放とうとする妻の姿を目にする。そして彼女を止めた直後に、幼なじみの刑事・吉川聡介(竹原ピストル)に逮捕されてしまう。2年後、刑期を終え出所した真壁は、彼を「修兄ィ」と慕う若者・啓二(北村匠海)と共に、気がかりだった疑問について調べ始める。なぜあの夜、自分は警察に補捉されていたのか。そして、あのとき夫を殺そうとしていた葉子(中村ゆり)という女の行方は? 恋仲の久子(尾野真千子)が懸命に止めるのを振り切り、自らの流儀で真実に迫っていく真壁。裏社会を結ぶ細い線が見えてきた矢先、新たな事件が起こって……。

    山崎まさよし
    尾野真千子 北村匠海
    中村ゆり
    竹原ピストル 中尾明慶 藤野涼子 下條アトム 根岸季衣 大石吾朗
    高田里穂
    真田麻垂美 田中要次 滝藤賢一 鶴見辰吾 /大竹しのぶ

    原作:横山秀夫「影踏み」祥伝社文庫
    監督:篠原哲雄
    脚本:菅野友恵

    配給:東京テアトル

    11月15日(金)全国公開

    https://kagefumi-movie.jp/

    © 2019 「影踏み」製作委員会

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