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  • TVアニメ放送中!心の傷を負って生きる「妖精兵」たちの物語『Fairy gone』

    2019年10月19日
    楽しむ
    黒田順子:講談社コミックプラス
    Pocket

    Fairy gone 1
    著者:不二涼介 Five fairy scholars
    発売日:2019年08月
    発行所:講談社
    価格:495円(税込)
    ISBNコード:9784065162422

     

    この春、テレビで放送され、10月6日より第2クールが始まっている話題のアニメ「Fairy gone」が、コミックとなって登場。
    妖精を兵器として操ることができる「妖精兵」が登場する斬新さに加え、このコミックの見所は、戦争の真っ只中ではなく、戦争後に行き場を失くし、心の傷を負って生きる「妖精兵」たちが出て来ることだと思います。

    話の中心となるのは、違法妖精取締機関「ドロテア」第一部隊・隊長代理のフリー・アンダーバーと、生き別れの幼馴染を探すため、マフィアの用心棒となった少女、マーリヤ・ノエル。
    2人が出会ったのは、組織(マフィア)主催の闇オークションでした。フリーは身分を偽り潜入捜査中で、マーリヤと共に商品の警備を任されていました。

    この日の目玉は、門外不出であるはずの「黒の妖精書」。

     

    今から200年前、5人の妖精学者によって書かれた「妖精書」は、原本、青、赤、白、黒の5つがありました。ところが、「妖精憑き」という現象が書かれている「黒の妖精書」のページだけが抜け落ちていたのです。

    「妖精兵」になるには、人間の胸に妖精器官を移植しなければならないのですが、「妖精憑き」の場合は、妖精が直接人間に取り憑くので威力は強大。

    その「黒の妖精書」を盗み出したのが、妖精を自由に操ることができる「妖精兵」のヴェロニカ、通称ヴェル。このヴェルこそが、長年、マーリヤが探し続けていた幼馴染だったのです。

    そして奪われた「黒の妖精書」を取り戻すため、自分の妖精を出現させ、ヴェルと戦うフリー。実はフリー自身も「妖精兵」だったのです。

    この対戦中、ひょんなことから、マーリヤの中に妖精が宿り、マーリヤは妖精を操るようになります。つまりマーリヤこそが「妖精憑き」なのではないのかとなり、マーリヤはフリーが所属する違法妖精取締機関「ドロテア」の一員になります。

    と、まだほんの出だしなのに状況設定は、なかなか複雑です。
    こうした現実離れした世界をリアルに見せるためには、当然、細かい設定が必要になるのですが、早い段階で理解しておかないと頭に入って来ませんよね。
    実は私はアニメを見ていなかったので、妖精を出現させる方法がわからず、あれれ、見落としたかな……となりました。
    こういうとき、コミックは便利です。前のページをパラパラめくり、すぐに読み直すことができるわけですから。
    お陰で妖精を出現させるには、「妖精兵」が自分の心臓部付近をぎゅっと握るのだということがわかり、だから妖精の器官を移植する手術が必要なのだという設定を理解することができました。

    もう1つ、こうした壮大なストーリーの場合、登場人物がどんどん増えて、あれ? 誰だっけ? なんていうこともよく起きます。
    しかし、1人1人のプロフィールがストーリーの途中で紹介されるので、混乱せずに読むことができました。これこそが、コミックならではの良さだと思います。

    たくさん出て来る登場人物の中で、私が特に気になったのは、人工妖精の密売の摘発現場でフリーとマーリヤが戦ったウルフラン・ロウ。実はウルフランは、フリーのかつての戦友で、現在はマフィアの一員。どうやら彼にも戦争で受けた深い傷跡があるようで、憎しみと哀愁を帯びた表情が美しいとさえ思ってしまいました。

    巻末の「おまけ漫画 汚れた戦士」のページに、統一戦争で各国が生み出した妖精兵は300人以上。その中で生存が確認できたのは、17名とありました。つまり、この先まだまだ「妖精兵」が出てくるということです。
    ヴェル以外にも「黒の妖精書」を狙う新たなマフィアも現れ、様々な地域や時代が交錯し、話もどんどん広がっていきそうです。
    この壮大な世界観を掴むためにも、まずはコミック版『Fairy gone』を読んでからアニメを観ることをオススメします。

    (レビュアー:黒田順子)

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    ※本記事は、講談社コミックプラスに2019年9月8日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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