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  • KAKATO×オオクボリュウ『まいにちたのしい』インタビュー:3人が追求した“自由で気持ちいい”絵本作り(後編)

    2019年09月27日
    楽しむ
    ほんのひきだし編集部
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    ラップグループ「KAKATO」(環ROY×鎮座DOPENESS)とオオクボリュウさんによる絵本『まいにちたのしい』が、8月22日(木)、ブロンズ新社より刊行されました。

    声に出して読めば「言葉」「音」「絵」を乗り物にして、今よりもっと自由で楽しい気分になれること間違いなし! KAKATOのお二人とオオクボリュウさん、担当編集者の佐古奈々花さんに、ラッパー×アーティストならではの“初めて”がたくさん詰まった今回の絵本作りについて伺いました。

    (聞き手=YOURS BOOK STORE 有地、
    ほんのひきだし編集部 浅野)

    まいにちたのしい
    著者:KAKATO オオクボリュウ
    発売日:2019年08月
    発行所:ブロンズ新社
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784893096616

    前編から読む

    ―― 本当に、「言葉で自由に遊ぶ」を体現した作品ですよね。オオクボリュウさんはそれを絵で表現したわけですが、普段のお仕事と感覚は違いましたか?

    オオクボリュウ そうですね。そもそも、普段どおり描くと絵本にしては大人向きというか、絵が細かくなりすぎてしまうので、かなり削いでスッキリさせました。

    ―― キャッチフレーズに“うごく絵”とありますが、これは最初からあったコンセプトなんでしょうか。

    オオクボリュウ いえ、これはROYくんが後からつけてくれたコピーです。ただ「一枚の中に連続的に描いていく」というのはやってみたいと思っていて、『まいにちたのしい』の言葉に当てはめていったらうまくいったなという感じです。

    ―― 私、このシーソーの場面が特に好きなんです。物理的にシーソーがこういう状態になることってないんだけど、シーソーに乗っているときの体の浮遊感とか、遊んでいる最中のどんどんヒートアップしていく感覚が、このシンプルな線からよみがえってきて。一言でいうと、「オオクボさんはものすごく“線”が好きなんじゃないだろうか」っていう質問になるんですけど。

    オオクボリュウ 線、好きですね。

    鎮座DOPENESS このやりとり、エッセンシャルすぎてやばい(笑)。

    オオクボリュウ いやいや、真面目に答えますよ。僕、雑誌や本で挿絵を描いたり、アートワークを作ったり、いろんな仕事をしてきたんですけど、そのなかで最近「説明する絵を描く」ことにまったく興味がないことがわかったんです。「こういうシーンを描いてください」と言われたとして、そういう場面を絵で説明することには興味がない。だから、そういう仕事はしないようにしてるんです。
    僕としては、何かを伝えるっていうよりは、線があって、それがかっこいいとか、気持ちいいみたいなところに着地したらいいなと。『まいにちたのしい』でいうと、たとえば主人公と思われるこのキャラクターの顔。顔のようで、実は「顔に見えるだけ」なんですよね。構造としてはただの線の集積で、楕円の中のどこに点がつくか、直線が入るかで、それが目や鼻に見えたり、正面を向いているように見えたり、横を向いているように見えたりするんです。言ってしまえば、ただの図形が、その位置関係によって結果的に「そう見えているだけ」。

    ―― 目玉焼きを食べるシーンは顕著ですね。

    オオクボリュウ それでも自分の中では、これもまだわかりやすいし説明的です。たとえば個人的に何か作品を作るとなったら、もっと自由に描いていくと思います。

    ―― 躍動感もかわいらしさもあるのに、どこか記号的だなと思っていた理由がわかりました。

    オオクボリュウ それから僕、絵を一発描きしないんですよ。鉛筆で描いたあと、iPad で形を整えて、それをペンで描いて、自分の手癖をどんどんなくしていくんです。

    ―― 文章の配置も独特ですよね。文字が上下していて動きがあります。

    鎮座DOPENESS これはデザイナーの菊地(昌隆)くんが考えてくれたんだよね。

    オオクボリュウ 普通に横に並んでいるのと、言葉のかたまりごとに上下しているものと、一字ずつゆれているものと3パターン作ってくれて、最終的に一字ずつ字が上下している今の配置になりました。でもこれ、僕個人としては「これが一番採用されないんじゃないか」って思ってたんですよ。セオリー的に、普通の本ならありえないレイアウトですよね。でもOKだった(笑)。

    鎮座DOPENESS 「あ、いいんだ!」って思ったよね。

    環ROY たしかにみたことない感じだもんね。

    佐古 かたまりごとに上下させたものは読むときにイントネーションが引っ張られそうだったのと、これは一字ずつゆれていますけど、読みづらくはない絶妙な組み方だったんです。普通のおはなし絵本じゃこういう組み方はできない、この絵本じゃなきゃできないと思ったので、「それならやっちゃったほうがかっこいいよね」ということで選びました。この組み方が、この絵本には一番ぴったりだと思ってます。

    環ROY 「イントネーションが引っ張られちゃいそう」なんて考えたことがなかったので、やっぱり編集のプロは違うなって思いました。

    オオクボリュウ フォントも菊地くんがすべて書き下ろしました。作れるだろうなと思って頼みました(笑)。絵ができてから、それに合う感じのを考えてもらったんです。原画を描くときも余白のことは考えずに、見開きでかっこよくおさまるように描きました。なので頼んだときは文の配置も全然決めていなかった。あとから文字を入れてもらったんですけど、見事に収めてくれました。

    環ROY それってかなり凄いことだよね。シーンによっては「文字を入れるところがありません!」ってことも起こり得るわけじゃない。“言葉組”も“視覚組”も、仲がいいからしっくりくるところに収まったんだろうね。

    ―― あと、色づかいも面白いなと思いました。

    オオクボリュウ 最初はもっと色数が多かったんですよね。僕の彩色はけっこうざっくりしていて、パソコンでCMYKをぽちぽちいじって作った色を、特色に置き換えて2パターン刷ってもらって、どのインクの掛け合わせにするか判断していった感じです。

    佐古 パソコンで作っていただいた色合いを完璧に再現するのではなくて、特色に置き換えて刷ってみたときに偶然出た色を面白がりながら、最終的にこの色に決まりました。

    オオクボリュウ 特色に置き換えたことで最終的に統一感が出ましたね。あと、基本的には5色なんですけど、1か所だけ“緑色”があるんですよ。そこにしか使われてないレアな色です(笑)。それにしても、やっぱり特色インクってお金がかかるから普通はあまり使わないんですよ。それが今回は好き勝手にやらせてもらえたので、仕事としても面白かったですね。「さすが、絵本はすごいな」って思いました。

    ―― 冒頭で「まさか絵本を作ることになるとは思っていなかった」とおっしゃっていましたけど、実際に作ってみて、皆さんいかがでしたか?

    鎮座DOPENESS どうだろう、まだ整頓されてない気がする。子どもができて、ふと手に取ったときに「俺が作った絵本だ」ってやっと思えるんじゃないかなあ。ROYの子どもが読んでるところとか、まだ見てないけど、それ見たら実感がわくのかもしれない。

    オオクボリュウ 僕は絵本を出すことに対しては、ハードルを感じてましたね。オファーを受けてからも「いいのかな」みたいなことはずっと思ってて。

    環ROY わかるわかる。俺はなんとなく「初老になったら、絵本を作ったりすることもあるのかな」っていうのはぼんやりあったけど、現時点で、自ら「絵本を出したい」とは思ってなかった。

    オオクボリュウ 絵本って、どんな内容でも表面的にまとめて形にすることはできると思うんですよ。ある意味参入しやすいからいろんな絵本がありますけど、やっぱりどういう内容でも形には絶対なるっていうのが怖いですよね。軽々しくはできない。だから、自分から絵本を出すことはないなってずっと思ってました。

    ―― 絵本作家で人気のある方のなかには、もともとは絵本作家じゃなかった方も多いんですよ。「結果的に絵本にたどりついた」というもののほうが、もしかしたら読み手としてもしっくりくるのかもしれないですね。

    鎮座DOPENESS 「結果的にそうなった」か。確かに、絵本を作ることは最初から決まってたけど、『まいにちたのしい』もそんな感じですね。本当に、誘われなければ3人とも絶対に作ってなかったでしょうね。でもとても楽しかったですよ。

    ――「自分たちの追求してきた“気持ちいい”を、絵本でやってみたらどうなるか」。お三方だからこそ実現した作品だなと、あらためて思いました。本日はありがとうございました!

     

    著者プロフィール

    KAKATO
    環ROYと鎮座DOPENESSの2人によるラップグループ。NHK Eテレ「デザインあ」の音楽制作、子ども向けラップワークショップの講師など、幅広く活動。U-zhaan、矢野顕子、坂本龍一などコラボレーションした楽曲も多数。

    オオクボリュウ
    イラストレーションとアニメーションの分野で活躍するアーティスト。D.A.N、Mndsgn、PSGのミュージックビデオや、星野源、Benny Singsのアートワーク、NHK Eテレ「デザインあ」のアニメーションをはじめ、雑誌・書籍の表紙なども多数手がける。

    ※冒頭のプロフィール写真※『まいにちたのしい』装丁デザイナー 菊地昌隆さん撮影




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