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  • KAKATO×オオクボリュウ『まいにちたのしい』インタビュー:3人が追求した“自由で気持ちいい”絵本作り(前編)

    2019年09月26日
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    ほんのひきだし編集部
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    ラップグループ「KAKATO」(環ROY×鎮座DOPENESS)とオオクボリュウさんによる絵本『まいにちたのしい』が、8月22日(木)、ブロンズ新社より刊行されました。

    「ラッパーが絵本を作ったら楽しいんじゃないか?」という編集者の発想から生まれた本作。

    声に出して読めば「言葉」「音」「絵」を乗り物にして、今よりもっと自由で楽しい気分になれること間違いなし! KAKATOのお二人とオオクボリュウさん、担当編集者の佐古奈々花さんに、ラッパー×アーティストならではの“初めて”がたくさん詰まった今回の絵本作りについて伺いました。

    まいにちたのしい
    著者:KAKATO オオクボリュウ
    発売日:2019年08月
    発行所:ブロンズ新社
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784893096616

    KAKATO
    環ROY(写真中央)と鎮座DOPENESS(写真左)の2人によるラップグループ。NHK Eテレ「デザインあ」の音楽制作、子ども向けラップワークショップの講師など、幅広く活動。U-zhaan、矢野顕子、坂本龍一などコラボレーションした楽曲も多数。

    オオクボリュウ(写真右)
    イラストレーションとアニメーションの分野で活躍するアーティスト。D.A.N、Mndsgn、PSGのミュージックビデオや、星野源、Benny Singsのアートワーク、NHK Eテレ「デザインあ」のアニメーションをはじめ、雑誌・書籍の表紙なども多数手がける。

    ※プロフィール写真※『まいにちたのしい』装丁デザイナー 菊地昌隆さん撮影

    (聞き手=YOURS BOOK STORE 有地、
    ほんのひきだし編集部 浅野)

    ―― 初めての絵本作りだったということですが、まずは『まいにちたのしい』をどんなふうに作っていったのか教えてください。

    オオクボリュウ 毎回ブロンズ新社に集合して、その場で作っては手直しして、それを繰り返して作っていきましたね。初めて集合したのが、2018年の4月頭くらい。1年ちょっとかけて作りました。

    鎮座DOPENESS 初期のうちは何か一言を出してみて、「じゃあこういう感じ」って言葉を重ねたり、絵を描いてもらったりして「それいいじゃん!」「こっちはこうしよう」って話しながら作ってました。お茶しながら、普通に今おしゃべりしているみたいな感じで。

    オオクボリュウ (担当編集者の)佐古さんが毎回めずらしいお菓子買ってきてくれてね。

    鎮座DOPENESS そうそう、お菓子につられて(笑)。

    佐古 打ち合わせが終わった後、皆さん「ごちそうさまでした」って帰っていくんですよ(笑)。でも、わりと早い段階で、今の形に近いものができあがっていましたね。

    オオクボリュウ 製作の過程でテーマはあんまり変わっていないんですけど、僕らは“絵本”のことは全然知らないので、どうまとめるか、編集長や佐古さんにいろいろ軌道修正をしてもらいました。

    ―― 佐古さんにお聞きしたいんですが、そもそも「ラッパーが絵本を作ったら面白そうだ」と思った理由はなんですか?

    佐古 たとえば谷川俊太郎さんは詩人ですが、ラップのように、言葉がリズムを持つ絵本をたくさん作られていますよね。そういった作品を読んでいて、「ラッパーは言葉とリズムで遊ぶ達人だから、絵本を作ったら面白いんじゃないかな」と思ったんです。KAKATOのお二人の楽曲は昔からいちファンとして聴いていたんですが、使っている日本語がとてもやさしくて、心地いい言葉のチョイスをされる方だなと思っていて。そういう意味でとても“絵本に近い”と感じていたので、文章はKAKATOのお二人、それから絵はオオクボリュウさんにお願いしたいと最初から思っていました。

    環ROY ぼく、佐古さんにそう言われて、詩人とラッパーの違いを考えてみたんですよ。詩にもリズムがあるし、ラップにも当然リズムがある。じゃあ違いはなんだろ、って。

    佐古 お、 言ってください!

    環ROY 詩って、その詩人が持つ身体的なリズムを楽しむものなんだろうなって思いました。ようはグリッドの中に留まらない固有のリズムを持っているんですよね。対してラップって、反復する外的なグリッド、つまりビートなんですけど、それにアプローチするんです。ビートという共有しやすい軸があって、その内側に入ることを前提に表現するのがラッパー。そういう違いがあると思いました。だから『まいにちたのしい』は、文字数に明確な法則性があって、やっぱり「ラッパーが文を書いた絵本」って気がします。だから詩人の方たちの仕事とはまた違った、新しいものにきっとなっていると思うんです。佐古さんは慧眼の持ち主(笑)。

    ―― 皆さんはオファーがあったとき、どんなことを思いましたか?

    オオクボリュウ ROYくんにも鎮さんにも、僕が20歳くらいの頃からずっとお世話になっているので、お二人と何か作ってみたいなとは思ってたんですよ。それがいよいよできたなっていう。まさか絵本とは思っていなかったですけど(笑)。

    鎮座DOPENESS うん、そんな感じだよね。「あ、ここなんだ」って思った。

    ―― 絵本作りにあたって、何か参考にしたものはありますか?

    オオクボリュウ かこさとしさんの『あさですよ よるですよ』ですかね。豆の一家の一日を描いた絵本。

    鎮座DOPENESS 絵本作りを始める前に、最初は勉強会をしたんだよね。編集長や佐古さんがいろんな絵本を持ってきてくれて、いろいろ読んで「これいいね」って話したりして。

    佐古 『あさですよ よるですよ』は、「朝から晩まで1日のことを絵本にしましょう」と決まったときに、参考になると思ってお持ちしました。一番最初は、谷川俊太郎さんの『もこ もこもこ』とか、感覚的な絵本、音を感じる絵本をご紹介したと思います。

    あさですよよるですよ
    著者:加古里子
    発売日:2017年02月
    発行所:福音館書店
    価格:990円(税込)
    ISBNコード:9784834083002
    もこもこもこ
    著者:谷川俊太郎 元永定正
    発売日:1977年04月
    発行所:文研出版
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784580813953

    ―― そういうふうにして、「こんな絵本もあるんだ」「こういうこともできるんだな」と選択肢を増やしていったんですね。

    環ROY 例えばですけど「絵画」っていったら、遠近法の絵とか、浮世絵、抽象画とか水墨画……って挙げたら色々ありますよね。で、それを知ると「こういうこともしていいんだな」って、なんか少し自由な気持ちになるじゃないですか。そうやって作法とか形式を知りつつ、柔軟に考えるためには、絵本をたくさん見てみることは必要だったんだろうなって思います。そもそも門外漢ですし(笑)。

    ―― なるほど。本職ではないということや、ラッパーである、アーティストである、ということをどれくらい意識していましたか?

    オオクボリュウ みんなそんなに意識してないんじゃないですかね。自然にそうなってはいるかもしれないけど、それらしくやろうとは思ってないです。

    鎮座DOPENESS 確かに、意識しすぎてはないね。けど、さっきROYが言ってたように、俺らはラッパーだから「ラッパーっぽい選択」を自然にしてたとは思います。

    環ROY ラップは大きく見れば「言葉」だし、「言葉」は遥か昔からみんなに使われてきたわけだから、もっと普遍的な視点でアプローチ出来たらいいよね、っていう裏テーマはありました。

    鎮座DOPENESS そうだね。やっぱり「ラップ」ではなくて「絵本の文」だから、「ラップ」ではダメなわけで、そういうことに自然になっていったよね。ラッパーとして(笑)。

    ―― おすすめの読み方はありますか。

    環ROY 自由です! 「普段読んでいる絵本より、リズムを意識して体全体で読んだら楽しいですよ!」って気持ちはあります。

    鎮座DOPENESS 普段自分が出さないくらいの声で読んでみてほしいですね。理想的な読み方とかはないんで、超自由です。大胆になればいいんですよ。平坦に読むのもそれはそれでいいし、ビートも、あってもなくてもいい。俺は一回(ビートを)作りましたけど。

    オオクボリュウ 確かに、あるとき鎮さんから送られてきましたね。あれは家で録ったんですか? たまに聴いてます。

    鎮座DOPENESS うん、家で作った。2行ずつビート変えてみるか、って試しに作ってみて、「『まいにちたのしい』をこれで歌ってみよう」って家で遊んでた。録音して、客観的に聴いてみたかったんだよね。

    ―― どんなビートだったんだろう。聴いてみたいです。

    佐古 KAKATOのお二人の読み聞かせ動画の冒頭に、ジングルのような感じで一部使わせていただいてますよ。

    鎮座DOPENESS 違うビートを作って乗せてみてもいいし、BPM早めてもいいし。皆がどういうふうに読むのか楽しみですね。

    ―― 実際に、『まいにちたのしい』をお子さんに読んでみたりしましたか。

    鎮座DOPENESS 締め切りの直前に、ブロンズ新社の近所の保育園に読み聞かせに行ったよね。どんどんラップにしていったら3歳児クラスの子が「はやすぎて無理だよ〜」って言ったりして(笑)、5歳児クラスの子はその場で復唱してくれて、一緒に読んだりもできた。

    環ROY うちの子はお風呂に入っているときに「つんつるしゃわわー さっぱっぱー」とか言ったりして、ところどころ覚えはじめています。あと手を繋いで「しゅたたたたっち」っていいながら僕の周りをぐるぐる走ったりしてくれますね。

    ―― 「どたどた ばったん しゅたたたたっち」「しゅるるる りりりり ぱっぱか ぼかーん」のページは、声に出すのがすごく気持ちよかったです。読む声がどんどん大きくなりました。

    鎮座DOPENESS そこ、俺の宿題だったところです!

    オオクボリュウ いつもどおり集まって考えてたんだけど、時間切れになっちゃったとこですね。

    鎮座DOPENESS 「ここ鎮さんが考えてね。じゃあね」ってなって(笑)。ここは、頭の中に子どもたちがいて、俺がそれを眺めてるのをそのまま擬音化させた感じですね。最初のうちは「男の子がどたどたしてる」「りりりりは女の子」ってイメージしてたんですけど、途中で「女の子もどたどたするよな」って思って、そこからはあんまり考えずに言葉にしていったかなあ。

    環ROY ここは絵も言葉も他のページとは違ってて、ひっかかりがありますよね。ちょうどここが全体の真ん中になっています。音楽でいうところのサビみたいな位置付けなんですよね。

    後編へ続く 》




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