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2012年に『罪の余白』でデビュー以降、『悪いものが、来ませんように』『火のないところに煙は』など、巧妙な仕掛けで読者を「やられた!」と見事に魅了してきた芦沢央さん。
今回は、発売前から大注目を集めている最新作『カインは言わなかった』について、編集を担当した文藝春秋 浅井愛さんに見どころを教えていただきました。
芦沢央さんにとって10作目の単行本、それがこの『カインは言わなかった』です。
3年前の最初の打ち合わせの時点ですでに核となるイメージをお持ちで、これはすごいものになりそうだという予感がありました。
驚いたのはその後です。そのイメージをどこまで面白くしていけるのか、果てしなく追求していく芦沢さん! どんどんアイデアを重ね、新しい案が生まれると、それまでに書き上げた原稿を惜しげもなくデリート。破壊と創造を繰り返しながら、それぞれのパートや登場人物同士が高め合っていきます。これが芦沢流かと何度も嘆息しました。
そうしてとことん粘りながら高みを目指していく様は、まさに本作の登場人物たちの姿そのものでもありました。
本作は芦沢さんにとって初となる芸術ミステリーで、舞台はHH(ダブルエイチ)カンパニーというバレエ団です。そこでは、世界に名を轟かせるカリスマ芸術監督・誉田(ほんだ)と、彼に見出されたダンサーたちが連日、新作公演「カイン」に向けて緊張感に満ちたリハーサルを繰り返しています。そこに、舞台美術を手掛ける気鋭の画家・藤谷豪という存在も加わり、最上の表現を目指す者同士の魂のぶつかり合いや嫉妬、あくなき挑戦といったものが描かれていくのですが……。
はたして芸術におけるゴールとはいったい何なのか? 生贄のように我が身を捧げ続ければ、いつか芸術の神は微笑んでくれるのか。
そんな究極の問いをあぶり出すかのように創り上げられていくのが作中作「カイン」で、旧約聖書の「カインとアベル」に材をとったこの作品、ともに精一杯の捧げ物をした兄弟の一方だけが神に選ばれるという示唆的な物語と呼応するかのように、ドラマは進んでいきます。
神たる指導者と弟子。さらには兄弟、ライバル、恋人同士という、簡単には逃れられない関係のあいだに生じる愛憎、そして執着。そうしたものがどれだけひとを翻弄するのか、その感情の行き着く先には何があるのか――。
冒頭で描かれる殺人シーン。本作はその犯人を問うフーダニット・ミステリーでありながら、人間が抱えるどうにもならない想い、いわば“激情”に光を当て、そこに寄り添わんとする物語でもあります。
すべてのピースが揃ったときにみなさんがどんな景色を目にして下さるのか、いまからとても楽しみです。
文=文藝春秋 別冊文藝春秋編集部 浅井愛
あらすじ
「世界のホンダ」と崇められるカリスマ芸術監督率いるダンスカンパニー。
その新作公演三日前に、主役が消えた。
壮絶なしごきにも喰らいつき、すべてを舞台に捧げてきた男にいったい何があったのか。
“神”に選ばれ、己の限界を突破したいと願う表現者たちのとめどなき渇望。
その陰で踏みにじられてきた人間の声なき声……。様々な思いが錯綜し、激情はついに刃となって振るわれる。(文藝春秋BOOKSより)
ついにこの日が… 芦沢さんにとって2年ぶりの長篇『カインは言わなかった』が本日発売になりました!
芦沢さんはなぜ“ダンス”に、なぜ “師弟”にこだわったのか? まずはご本人のお話をお届けします!『カインは言わなかった』誕生秘話https://t.co/HfzTEaAyCt#カインは言わなかった #芦沢央 pic.twitter.com/ncH07SL3AM
— 『カインは言わなかった』(芦沢央)公式 (@nono_cain) August 28, 2019