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任天堂ゲームの専門誌「ニンテンドードリーム」。1996年の創刊以来、ライトユーザーからコアなファンまで幅広い層から支持されている同誌ですが、昨年、初の女性編集長が誕生しました。
投稿者であった学生時代から同誌に長く携わってきた新編集長は、ゲームを、またネット時代における「雑誌の役割」をどのように捉えているのでしょうか。同誌編集長の冠美花さんに寄稿していただきました。
ゲーム雑誌の編集長が女性であることは、なかなか珍しいようです。それなりに驚きの声をいただきました。さらに「もともと投稿者なんです」ということをお話しすると、けっこう驚いていただきます。(いいのか、悪いのか?)
出だしから自分の話で恐縮です。
ニンテンドードリームは、「マリオ」や「ポケモン」、「どうぶつの森」といったゲームのことを掲載している月刊誌です。今であれば任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」の情報がメインになります。
ゲーム制作者へのインタビューや投稿ページが充実していることに定評をいただいており、「読者との距離が近い雑誌」として親しまれています。愛称は“ニンドリ”。創刊から23年、今年のはじめには通算300号を迎えました。
作っている自分たちとしては、感謝の気持ちこそあれど「めでたい!」という意識はありませんでした。それでも300号の発売時には、長年の読者、かつての読者、いろんな人からお祝いの言葉をいただいて、長く支持されてきたことを実感しました。子どもの頃から読んでいたという読者さんから、今では親子で読んでいますというお便りも!
そもそも私が読者としてこの雑誌と出会ったのは、前身「64ドリーム」の頃。「宮本茂×糸井重里 対談」という特集に惹かれたからでした。任天堂・マリオの生みの親と、ほぼ日・MOTHERの生みの親です。今思えばシブイ女子学生……。
ゲームを作る人のお話って、おもしろい。おもしろいゲームを作る、その人自身がエンターテイナーなんですね。クリエイターとしての発想や考えを知ることも興味深いのですが、「楽しませてやろう!」という気持ちが伝わってくるんです。
だから、ゲーム雑誌ながら知りたいのは、情報だけではなくそういう“作り手”のこと。もともとゲームを遊んでいなかった初代編集長が、ゲームメディアの世界にイチから飛び込んだからこそ、自然と注目した点でもあったのでしょう。
私にとってゲームとは、“能動的に新しい体験をさせてくれるメディア”であり、“人と楽しみを分かち合って広がるもの”です。人によっては“ひとりで浸れる世界”であったり、“自由を得られる場所”であったりします。インタビューを通して得られる作り手の思いや人柄は、ゲームへの愛着をより膨らませ、ニンドリは「ファン雑誌」として定着してきました。
とはいえ現在、情報はおろかゲーム制作者が語る場も、ファン同士が繋がる場も、インターネットが中心となっています。ゲーム機自体がインターネットに繋がるのですから、それらの場所がネットに移るのは自然なこと。
では雑誌の役割とは……?
そんな状況で前編集長が掲げていたのは、「ニンドリを開いているあいだは、嫌なことを忘れて好きなゲームに浸ってほしい」ということ。ずっと読んでくださっている読者の皆さんは、そんな時間を買ってくださっているのでしょう。
そのためには、編集者と読者の思いがうまく重なる必要があります。「楽しい」を届けるために、まずは自分たちの「楽しい」を大事に。「読者と近い」と感じてくださるのは、そういうところなのかもしれません。
ちなみにニンドリ読者は半分くらいが女性。だから女性が編集長になることはちょうどいいと思いました。いち投稿者から編集長になったことは、いろんな人から「ニンテンドー ドリームだね!」と言われます。それを「ドリーム」と言ってもらえるなら、たくさんのドリームを作りましょう。個人の「楽しい」思いが何かを生み出すことのできる場所、それがニンドリであればと思います。そしてゲームをきっかけに、読者の皆さんの興味が様々な方向に広がれば嬉しいです。
徳間書店「ニンテンドードリーム」編集長
冠 美花 KANMURI Mika
学生時代よりDTPのできるライターとして「ニンテンドードリーム」に携わり、後に編集者として数々の書籍を制作。2017年末に編集長に就任。
(「日販通信」2019年8月号「編集長雑記」より転載)