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白い紙の上に、線の太さや墨黒の濃淡だけで表現される「水墨画」。重厚で大人向けのもの、というイメージのあるこの芸術を題材にした、「青春小説」。
6月25日(火)に発売された『線は、僕を描く』は、一見ミスマッチともとれる「水墨画」×「青春小説」の組み合わせで、「第59回メフィスト賞」を満場一致で受賞した話題作です。
講談社が発行する文芸誌「メフィスト」から生まれた公募新人賞で、コンセプトは“面白ければ何でもあり”。その特徴は「一次選考から最後まで編集者が直接、下読みを介さずに選ぶ」「内容の制約なし」「賞金なし」など。
型破りなこの賞への応募作品は多種多様。そしてそれを選ぶ編集部側もまた、小説の見方や嗜好が多様な人々の集まり。それだけに、ときには評価が大きく分かれることも。
そんな中にあって、本作は編集部の皆さんから「最高」「傑作」と絶賛の嵐だったというのですから、その圧倒的な魅力がうかがえます。
著者の砥上裕將さんは水墨画家。本作には、まさにご自身の体験や創作活動が反映されています。
挿絵や、カバーを外した表紙には、実際に砥上さんの描いた水墨画が使用され、物語の世界観を見事に表現しています。
▲砥上さんによる水墨画「春蘭」(左)「山葡萄」(右)
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけての勝負を宣言する。
水墨画とは筆先から生み出される「線」の芸術。描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで回復していく。
そして一年後、千瑛との勝負の行方は。(講談社『線は、僕を描く』公式サイトより)
砥上さんは本作についてのインタビューで、両親を亡くした喪失感によって「真っ白」になってしまった霜介を、まだ水墨画が描かれていない「白い紙」の状態にたとえ、そこから“何か”が生まれる瞬間を体現する人間として描いた、とコメントしています。
水墨画というと少し難しそうなイメージがあるかもしれませんが、作中では専門的な技法や筆の動き、さらには心の在り方まで細部にわたって丁寧に描写。そのため、水墨画の知識がなくても、初心者の霜介と一緒に一から勉強していくような新鮮な感覚を味わうことができます。
それでも、読む前に少しは予習しておきたい!という方は、『線は、僕を描く』公式サイトで水墨画の主な道具や用語などが紹介されていますので、ご覧になってみてください。
清々しい感動を漫画でも! 小説の発売に先駆け、6月19日(水)発売の「週刊少年マガジン」(講談社)29号で、コミック版の連載がスタートしました。
作画を担当するのは、『この剣が月を斬る』『ベイビー・ワールドエンド』の作者・堀内厚徳さん。原作の砥上さんは水墨画監修として参加されています。
小説発売・コミック連載を記念して、「講談社BOOK倶楽部」では砥上さんと堀内さんのインタビュー記事を公開中! それぞれの視点から作品への熱い思いが語られていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
▲コミック版『線は、僕を描く』、週刊少年マガジンで大ヒット連載中!
(漫画/堀内厚徳 原作・水墨画監修/砥上裕將)