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  • 「文學界」前編集長が語る、川上未映子『夏物語』 生むこと・生まれることのすべてが詰まった超大作

    2019年07月12日
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    武藤旬(「文學界」前編集長、現・第一文藝部)
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    川上未映子さんの最新作『夏物語』が、7月11日(木)に発売されました。

    夏物語
    著者:川上未映子
    発売日:2019年07月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,944円(税込)
    ISBNコード:9784163910543

    本作は、芥川賞受賞作『乳と卵』の登場人物たちが再び織りなす長編小説。

    パートナーなしでの出産を希望する夏子、精子提供で生まれた潤、出産は親たちの「身勝手な賭け」だという百合子。相反する考え方がぶつかり合い、この世界に生まれることの意味を問いかけます。

    今回は文芸誌「文學界」(文藝春秋)前編集長の武藤旬さんに、本作について文章を寄せていただきました。

     

    「生むこと」「生まれること」のすべてが詰まった超大作

    川上未映子さんの新作『夏物語』は、私がこの6月まで編集長をしていた文芸誌「文學界」の3月号と4月号に前後篇一挙掲載した、原稿用紙にして1,000枚分の大作である。

    文芸誌には、100~200枚程度の中・短編が毎号いくつか載っているのが普通である。喩えが適当かどうかわからないが、幕の内弁当のようなものだ。自分の好きな作家の新作目当てで買ってくれた読者が、知らなかった別の作家の作品に出合う、というのが理想である。エビフライも美味しいけれど、シュウマイもいけるやん、といった塩梅だ。

    ところが、3月号と4月号には、創作は『夏物語』しか載せなかった。というか、分量的に他の作品を載せる余裕がなかったのである。

    これは大きな賭けだった。幕の内弁当ではなく、メインのおかずが一つしかない、ステーキ弁当かうなぎ弁当のようなものだからだ(※連載がご飯のイメージ)。野菜しか食べられない人は一体どうするのか。

    しかも代わりの原稿は用意していなかった。締切りに間にあわなければ雑誌に大きな穴が開く。正直、胃の痛くなる思いだった。しかし、すべては杞憂だった。

    昨年12月21日に川上さんから送られてきた完成稿は、これまで読んできたどんな小説とも違う、最初から世界文学のマスターピースに名を連ねているような輝きを放っていた。ステーキ弁当どころか、満漢全席だったのである。

    ストーリーはあえて紹介しない。間違いなく言えるのは、ここには人が生まれて、生きて、そしていなくなることの、すべてがある、ということだ。この夏、ぜひこの弩級の超大作を体験して頂きたい。

    武藤旬(「文學界」前編集長、現・第一文藝部)




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