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LINEノベルが主催するイベント「あたらしい出版のカタチ」の第3弾が、6月19日(水)にLINE株式会社大崎オフィスで開催されました。
前回のイベント同様、参加は抽選制。70人弱の参加者が集まりました。
第1回「100万部超えを生み出した編集者が語る『ミリオンセラーの作り方』」、第2回「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」と開催されてきた「あたらしい出版のカタチ」イベント。
今回の登壇者はLINEノベル統括編集長の三木一馬さん、新潮文庫nex編集長の高橋裕介さん、LINEノベル事業プロデューサーの森啓さんの、これまで登壇してきた3名に加えて、「あたらしい出版のカタチ」イベントでは初、作家の相沢沙呼さんと円居挽さんが登壇しました。
登壇者
・三木一馬:LINEノベル統括編集長(㈱ストレートエッジ代表)
・高橋裕介:新潮文庫nex編集長
・森啓:LINEノベル事業プロデューサー(LINE㈱執行役員)
・相沢沙呼:1983年生まれ。2009年に『午前零時のサンドリヨン』(東京創元社)で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。主な作品に代表作に「小説の神様」シリーズ(講談社)、「マツリカ」シリーズ(KADOKAWA)など。
・円居挽:1983年生まれ。2009年に『丸太町ルヴォワール』(講談社)で単行本デビュー。同作から連なる「ルヴォワール」シリーズや、「シャーロック・ノート」シリーズ(新潮社)などで知られる。
高橋さんがイベント直前にアンケートを実施し、参加者の中には作家志望・執筆活動中の人が多いことがわかった今回のイベント。
作家お二人のデビューまでの過程や、プロットの公開など、参加者の創作意欲をかき立てる内容となりました。
まずは作家お二人のデビューまでの経緯について、投稿歴を交えながら振り返りました。
同学年生まれ・同年デビューと共通点が多い二人。
相沢さんは15、6歳の頃にライトノベルの新人賞へ投稿することからスタート。結果が奮わず、自分の方向性に迷っていたころ、本格ミステリの新人賞として権威ある鮎川哲也賞に投稿した『午前零時のサンドリヨン』が同賞を受賞しました。
一方で円居さんは、高校2年生の頃に投稿を開始。ジャンルに拘らず、まずは作家になることを目標にしていたそうです。2003年頃から電撃文庫などライトノベルの新人賞に投稿するも結果が出ず、自分のスタイルを見直した大学6回生の頃に、『丸太町ルヴォワール』の原型を「講談社BOX」に投稿しデビューに至ったとのことです。
相沢さんは鮎川哲也賞に投稿する際、好きな作家である北村薫さんが選考委員になったことがきっかけの一つとなったそう。「北村先生に読んでもらいたい」という気持ちがあったと言います。
また円居さんは「講談社BOX」に投稿した内容について、当時は新入社員だった編集者と打ち合わせ、20回以上の改稿を繰り返したそうです。「キャラクターやトリックも増え、結末まで変わった」ものの、編集者と二人三脚、密な関係を築きデビューに至っています。
挫折やジャンルの変更、そして選考委員や編集者との巡り合わせと、デビューの過程が似ていることも印象に残りました。
お二人の作家デビューまでの話が終わり、話題は「どのように物語を作っていくか」に。新潮文庫nex 編集長の高橋さんが、お二人の作品のプロットを会場に表示し、作家本人を交えての解説。
プロットはいわば小説の素材。それが公開されるということで熱心にメモを取る人や、写真に収める人など、参加者の熱量を感じる時間となりました。
円居さんのプロットは『シャーロック・ノート』、相沢さんのプロットは『スキュラ&カリュブディス 死の口吻』。
LINEノベル統括編集長の三木さんは「どちらもライトノベルに近い、キャラクターに重きのあるプロット」ということに注目。相沢さんは「世代的にライトノベルの読者だった」ことに触れ、キャラクターのキャッチコピーや印象的なセリフなどを入れながら説明することで、小説の背景や舞台設定の理解を深めているとコメントしました。
「リアリティーのない、非現実的な世界設定」でも、キャラクターが小説に説得力を持たせているプロット作りであることがわかります。
また両プロットの紹介後、円居さんが「ライトノベルは企画書を社内で通してから執筆する」という噂について三木さんに質問。三木さんは、担当編集が「いい!」と思ったら本になることもあるし、企画会議があることもある、と回答。同じ出版社でもレーベルによってさまざまなプロセスがあるようです。
イベント終盤には、相沢さんから円居さんに「プレゼント」としてマジックを披露するなど、和やかな雰囲気のまま進行。また、相沢さんの書いた『小説の神様』の実写映画化が決定したことについて会場から拍手が送られました。
最後に、登壇者への質疑応答の機会が設けられました。
「物語の中盤はどのように書いているか」という質問に対して、相沢さんは「主人公をどん底まで突き落とす」という持論を紹介。円居さんはミステリ小説の観点から、結末に至るまでに必要ないくつかの伏線を用意し、どのようにしたら面白くなるか考えて情報の提示順を決めていると答えました。
それに対して三木さんは、「好きなことや本筋ではないこと、(中盤では)遊んでほしい」と言います。不必要な部分が削られる漫画やアニメという媒体に対して、小説は枝葉があるメディア。その枝葉に楽しみがあるのが小説だと話します。
高橋さんは、島田荘司さんの『アルカトラズ幻想』を例に挙げながら、プロット上は関係ないけれど、作者のこだわりが垣間見えるところを読者も読みたいと思っていると三木さんの話に補足しました。
「LINEノベルで新人作家がプロの作家に食い込むためにはどうすればいいのか」という、LINEノベルでデビューする方法についての質問もありました。LINE文庫は8月5日から、毎月10冊刊行予定で進行しているそうです。三木さんは「毎月10冊出すレーベルはさほど無い、そう考えると門戸は広い」とコメントしました。
また、LINEノベルは「誰もが自由に投稿し、読めて、評価する」というプラットフォームになることを明示。その中で、読者人気の高さは「一つの指標」として評価されるとのこと。また、多くの編集者がプラットフォーム内を横断的にチェックし、作家を探すことに力を入れると表明しました。
最後に三木さんから「新人の作家が食い込んでほしいし、僕らも探していきたい」と、LINEノベルの活発な創作を促す話をし、イベントは盛況のうちに終了しました。
引き続き第4回のイベントも開催予定となっています。詳細は後日発表されるとのことです。
・小説プラットフォーム「LINEノベル」提供開始 出版社9社が参画 文庫レーベル立ち上げも
・LINEノベルの登場で「小説」はどう変わる?ミリオンセラーを生んだ編集者が語る「あたらしい出版のカタチ」