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文章ができた段階ではじめて、絵の担当を決めたお二人。
桜庭さんは何人かのイラストレーターの中から、嶽さんの絵を見て「不思議な世界を繊細で、大胆に描いている」と感じて選んだそうです。桜庭さんの書いた絵コンテをもとに相談しながら構成を決めていったとのこと。
桜庭「『絵を読む』という絵本が好きで、自分の短い文章が絵と一致していないほうが、すごい大きな世界が描けるのではないか、と思って。なので文章がなかったり、たった一言だったりするシーンも『ここは絵に任せたい』と直接お会いして伝えたかったんです」
桜庭さんはライトノベル『GOSICK -ゴシック-』(角川文庫)シリーズで、文章と絵を組み合わせて作品ができたときに、自分ひとりでは届かない世界まで広がったという経験をしたそうです。今回の恋の絵本シリーズでも同じような経験ができるのではないか、という期待と興奮があったといいます。
辻村さんは、最初から「絵は今日マチ子さんしか考えられない」と決めていたそうです。
辻村「今回の絵本を書くにあたって、ジェンダー観というのはとても大事になると思いました。もし、この絵本で描かれるジェンダー観を一から説明するとなったらそれだけでも危ういなと思ったんです。今日さんになら、逆にこちらが教えてほしいくらいに信頼して絵を託せる」
制作過程も結果も異なるお二人ですが、共通していることは「絵」の担当をした人の本になったこと、といいます。
桜庭「わたしは二人が一人になるというシーンを書いたのですが、嶽さんはそれを、二人の着るシャツの柄がひとつの柄に融合するという絵で表現した。でき上がった絵を見て『あっ』となった。思いもつかなかった絵が上がってきたときはうれしかったです」
辻村「ラストにの1ページにしかけがあるので、絵の方の負担が相当大きなものになると思って『どうしたらいいかわからないですけど、お願いします』という感じでした。今日さんの絵を経ると、自分でも気づかなかった部分があったり、さすが今日マチ子しびれる! と(笑)」
桜庭「絵本って、『絵を読む』っていうことだと、書いてみてが改めて思いました。書いた本人が『こういう話だったんだ』って思うことがあって。絵本ってすごいですよね」
恋の絵本は子どもたちに対してどのような意識で書いたか、お二人とも自身の経験をもとに語りました。
辻村「多分、読んでもラストの意味に気づかないまま最初は本を閉じる、読んでしまう子も多いと思います。でもいつか再び開いたときに自分にとって必要なタイミングで気づいてもらえることもあるかもしれない、それがなんかタイムカプセルみたいな楽しさがあっていいなと」
桜庭「子どものころ好きだった作家さんや作品は、読者である子どもだった私のことを信じてくれていました。私はそのことに救われた。『子どもだからわからない』と決めつけるのではなくて、『子どもにはわかる』と信じて書こうと思いました」
今回のイベントでは、お二人が大好きで人におすすめしたい絵本が紹介されました。交互に紹介しながら「それ面白そう~」と本を読み合って「二人の作家」から「二人の絵本好き」の表情になったのが印象的です。
▼桜庭一樹さんの選んだ3冊の絵本
▼辻村深月さんの選んだ3冊の絵本
大好きな絵本の紹介後は、お二人の告知やサイン会が行なわれ、終始和やかな雰囲気のままイベントは終了しました。
「恋の絵本」シリーズは下記スケジュールで刊行予定。長く愛されるシリーズとして、今後も注目のシリーズです。
①『すきなひと』 桜庭一樹・作/嶽まいこ・絵/瀧井朝世・編 2019年5月刊
②『すきっていわなきゃだめ?』 辻村深月・作/今日マチ子・絵/瀧井朝世・編 2019年5月刊
③『まっくろいたちのレストラン』 島本理生・作/平岡 瞳・絵/瀧井朝世・編 2020年刊行予定
④『こはるとちはる』 白石一文・作/北澤平祐・絵/瀧井朝世・編 2020年刊行予定
⑤『タイトル未定』 村田沙耶香・作/米増由香・絵/瀧井朝世・編 2020年刊行予定
・すべての「好き」を肯定する「恋の絵本」シリーズが創刊 第一弾は桜庭一樹・辻村深月の直木賞作家2人が絵本に初挑戦!