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6月13日(木)、代官山 蔦屋書店にて「恋の絵本」シリーズ刊行記念イベント桜庭一樹さん、辻村深月さんのトーク&サイン会が開催されました。
「恋の絵本」シリーズとは、児童書の出版社・岩崎書店が“人を好きになる”という純粋な気持ちと、現代の感覚に響く恋をテーマに企画した新しい絵本シリーズ。第一弾として桜庭一樹さん×嶽まいこさん『すきなひと』と、辻村深月さん×今日マチ子さん『すきって いわなきゃ だめ?』が刊行されました。
定員だった60席は老若男女さまざまなファンの方で満席に。シリーズ監修のライター瀧井朝世さんによる進行の中、恋の絵本シリーズについて制作背景や、お二人の好きな絵本の話題について盛り上がりました。
左から瀧井朝世さん、桜庭一樹さん、辻村深月さん
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イベントのはじめに、シリーズ監修の瀧井さんから本シリーズが作られた経緯について。
岩崎書店は、京極夏彦さんや宮部みゆきさんなど小説家が文章を手がけたシリーズ「怪談えほん」(監修・東雅夫さん)がヒット。今回は「恋」をテーマにした絵本シリーズの制作を、岩崎書店の編集部とブックデザイナーの名久井直子さんから提案された、とのこと。
瀧井さんはこの提案を受けて、小さいころに窮屈だと感じた「結婚したら幸せ、恋愛とはいいもの」という価値観にしばられないことや、恋は必ずしも楽しいものではなく、甘酸っぱさや寂しさがあることを伝えたいと思ったそうです。
家族観や恋愛観、ジェンダー観が変わってきている中で、現代の感覚に寄り添った「恋」の絵本というコンセプトのもと「恋の絵本」シリーズは歩みを始めました。
岩崎書店からの条件「絵本をはじめて書く作家」を受けて、瀧井さんは「この人の絵本が読みたい」と桜庭一樹さん、辻村深月さん含む5名(島本理生さん、白石一文さん、村田沙耶香さん)の作家に「恋」というテーマを依頼。
瀧井さんから依頼を受けたお二人は元々「怪談えほん」の読者だったそうで、この依頼をもらったときは「大変うれしかった」とその時の喜びを口にしていました。
以前より絵本を書いてみたかった桜庭さんは、子供のころの記憶にある「長い長い大河小説のような、だけど読むと5分しか経っていない絵本」を書いてみたい、辻村さんは小説とは違う絵本の流儀を書くことで勉強したい、と考えながら絵本作りに取り組んだそうです。
辻村さんは「これ(恋の絵本)を受けたら『怪談えほん』のオファーが来なくなっちゃいますか?」と不安がる一面も。
今回のトークイベントでは、絵本をまだ読んでいない参加者のために、桜庭さん、辻村さんによる朗読が行なわれました。
両作家それぞれの「間」が贅沢な朗読。読み終わった後は拍手に包まれました。
お二人の朗読で会場も温かい雰囲気になったあとは、同じ「恋」というテーマにもかかわらず、どうしてこんなにも違う作品ができたのかという話題に。
桜庭さんの『すきなひと』はある時「風邪を引いた」ことが着想のきっかけになっているとのこと。
桜庭「絵本の依頼を受けた後、まだ何も決まっていないときに熱を出しました。その時、LINECameraというアプリで絵を描いて遊んでいたのですが、スタンプで絵を作るこのアプリで、自転車に乗った女の子と車に乗った女の子がすれちがう絵ができました」
「スタンプなので同じ顔をしているんですよ。それを見て、『これだ!』と最初のシーンを思いつきました」
ラインカメラのスタンプでお絵描き。「夜道で自分とすれ違い、拡声器で声をかけた」 pic.twitter.com/LAqrXdFts8
— 桜庭一樹 (@sakurabakazuki) October 16, 2017
『すきなひと』のモデルとなった絵
多様な恋が肯定されるならば、“自分”に出会って、“自分”が変化するという話も「恋」のひとつといえるのではないか、と考えたそうです。
辻村さんは「恋」というテーマから、絵本のタイトルにもなった「好きって言わなきゃダメかな」という気持ちがきっかけになったといいます。
辻村「好きな人がいないというと、『好きな人を作れ』って強制される感じに抵抗がありました。そういう気持ちの子は、今もいるのだろうと思って。恋の絵本だけれども、同調圧力への戦いを描いた絵本でもあります」
「一方で、みんなと好きな人の話題で盛り上がりたいという気持ちもあって。その狭間にいながら、その子の気持ちを肯定するものが書きたかったんです」
誰が誰を好きになってもいいし、恋について思う自分の気持ちを自由に育てていい、そういう気持ちで読んでほしいーーその思いが『すきって いわなきゃ だめ?』に繋がったそうです。
お二人のお話は、お互いの絵本ができるまでの過程について盛り上がっていきました。