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近年、アニメを観賞する環境が大きく変化しています。
ほんの数年前までは、アニメといえばTVの地上波放送で見るのが当たり前でした。眠い目をこすりながら深夜アニメを見たり、ハードディスクレコーダーの残り容量を気にしながら録画したり、番組の放送局が自分の住むエリアで見られなくて嘆いたり……。
しかし、そんな悲喜こもごもも今は昔。そのうち「昭和・平成の懐かしい風景」として語られることになるかもしれません。
この数年で、Amazonプライムビデオ、Netflix、Hulu、dアニメストアなどの定額制動画配信サービスが一気に普及。アニメを好きな場所で、好きな時に、好きなデバイスで見るというライフスタイルが根付いてきています。
動画配信サービスで見られるのは、過去のアニメ作品だけではありません。同時配信・見逃し配信などで、放送中の作品もほぼ同タイミングで見られるようになっています。
たとえば、現在放送中の2019年春アニメで、原作コミック第1巻が売行き好調な上位5タイトルについて配信状況を見てみましょう。そのほとんどが主要な動画配信サービスで定額見放題の対象になっていることがわかります。
※「◯」は定額見放題の対象、「レンタル」は1話ごとに料金がかかります。(2019年6月14日現在)
いまやほとんどの最新アニメが、地上波放送だけではなく、動画配信サービスでも見られる環境が整っているのです。
一般的にアニメの原作コミックは、アニメ放送開始とともに売上が急上昇し、アニメが話題になるほどより大きく跳ね上がります。これは映像化されることで作品の認知が高まり、その原作コミックの購入者が増えるからです。
そして、これは地上波放送作品に限った話ではないでしょう。動画配信サービスの利用者が増加している現在、動画配信された場合でも原作コミックの売上にプラスに作用していると思われます。
そこで気になってくるのが、「動画配信サービスだけの売上効果」です。
先ほど述べた通り、地上波放送と動画配信が同時期に行なわれているタイトルが多いので、動画配信サービスだけの影響を切り分けて見ることは困難です。しかし、2019年春アニメのなかで1点だけ、動画配信サービスの影響を切り分けて見られる作品があります。
それは、Netflixで独占配信されている『ULTRAMAN』です。
『ULTRAMAN』は、円谷プロダクションの特撮ドラマ「ウルトラマン」から数十年後の世界を舞台に、初代ウルトラマンの息子・早田進次郎の活躍を描いたSFヒーローアクション漫画。単行本は現在第13巻まで発売中です。
Netflixは近年アニメ配信に力を入れており、大手アニメスタジオと提携して作品を制作、これまでもいくつかのタイトルをNetflix独占で配信しています。
アニメ「ULTRAMAN」の配信が始まったのは、4月1日(月)。原作漫画の売上にはどのような影響が出ているでしょうか?配信前(3月)の第1巻の売上と、4月の売上を比較してみます。
約4.0倍に跳ね上がっています!
以前第5位まで発表した「2019年春アニメ原作コミック売上ランキング」を第10位まで見てみると、『ULTRAMAN』は第9位にランクイン。売上の伸び率が大きいだけでなく、地上波放送作品と遜色ない売上を記録しています。
もちろん『ULTRAMAN』は多くのファンを抱える伝説的な特撮番組「ウルトラマン」を元にした作品なので、通常以上にアニメ化のプラス影響が出た可能性はあります。それでも、動画配信サービスの影響力は、すでに無視できないレベルになっていると言っても間違いなさそうです。
Netflixでは、今後もコミックを原作としたアニメの独占配信の予定が組まれています。
2019年では、6月28日(金)より「7SEEDS」(原作:田村由美)、7月31日(水)より「ケンガンアシュラ」(原作:サンドロビッチ・ヤバ子、作画:だろめおん)が配信開始。夏には「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」(原作:車田正美)、冬には「Levius」(原作:中田春彌)も予定されています。
また、2020年には「攻殻機動隊 SAC_2045」(原作:士郎正宗)、時期は未定ですが「スプリガン」(原作:皆川亮二)や「ULTRAMAN」のシーズン2の制作も決定。過去の名作の掘り起こしやリメイク、連載中の作品まで、幅広いラインアップとなっています。
もちろん、地上波放送されているアニメの数に比べると、動画配信サービスで独占されている作品はまだわずかです。
しかし、世界を相手にビジネスしている外資系動画配信サービスがよりよい条件を出版社に提示し、しかもコミックを売る力もあると分かった場合、地上波ではなくネット配信独占でのアニメ化を選択するケースが増えてくる可能性も十分考えられます。
今後の動向に注目です。