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  • 実写とゲーム映像を組み合わせた“異色の映画作り”の裏側:「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」野口照夫・山本清史両監督インタビュー

    2019年06月20日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    “僕のお父さんは、齢60を超える光の戦士だ――”

    「正体を隠してオンラインゲームで父親とフレンドになり、共に世界を冒険して、終盤のボスを倒した後に実の息子だと打ち明ける」

    1人のプレイヤーによる実話ブログが、書籍化、TVドラマ化を経て映画化。「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」のタイトルで、6月21日(金)に全国公開されます。

    ドラマ放送時も「深夜放送なのがもったいないくらいだ」と声があがるほど好評だった「光のお父さん」。引き続きタッグを組んだ野口照夫・清水清史両監督に、撮影時のエピソードや映画の見どころを伺いました。

    (写真右)野口照夫:監督
    1974年生まれ、東京都出身。映像制作会社で経験を積んだ後、フリーに転身。インディーズ映画「演じ屋」(2001年)が大ヒットを記録し、2003年にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭でゆうばり市民賞を受賞。主な監督作品に、「たとえ世界が終わっても」(07)、「秘愛」(13)、「薔薇とチューリップ」(19)など。

    (写真左)山本清史:ゲームパート監督
    1978年生まれ、東京都出身。2006年に、井川遥・渡部篤郎主演「水霊 ミズチ」を監督。その後「三國無双」シリーズ(コーエー)や「Dragon’s Dogma」(カプコン)のオープニングやカットシーンを演出したほか、近年ではスマホゲームでシナリオディレクターをつとめ、ゲーム業界でも活躍。また「呪怨~終わりの始まり~」「呪怨 ザ・ファイナル」(ともに2015年)、「貞子vs伽椰子」(16)のノベライズを出版するなど、小説家としても活躍している。

    あらすじ
    この人が死んだとき、泣いたりするんだろうか──
    仕事一筋だった父親が、ある日突然会社を辞め、単身赴任先から家に帰ってきた。何があったのか一切語らない父を、母も妹も遠巻きに眺めるばかり。「父の本音を知りたい」という願いに突き動かされたアキオは、ある計画を思いつく。

    ―― 2017年4月のドラマ放送から約2年経ち、ついに劇場版が公開されます。映画化は非常に自然な流れで決まったと伺いましたが、2018年2月に、父親を演じた大杉漣さんの訃報が入りました。

    野口: ちょうど、映画版脚本の初稿を読んでいたときでした。まったく予期せぬ知らせで、連絡を受けてから数時間立ち上がれませんでしたね。

    山本: 「ファイナルファンタジーXIV」(以下「FF14」)のゲーム内も同じでした。葬儀は身内の方だけで行なうということだったので、撮影で使用していた「Indy Jones」のキャラクターでログインして「同じ気持ちの方はよかったら来てください」とツイートしたら、たくさんの方が来てくださって。ドラマは約230の国と地域で配信されていたので、アメリカやメキシコ、中国、インドネシアなど、いろんな国の方がいらっしゃいました。さまざまな言語で、みんなで思い出を語ったのがその日の晩でした。

    © 2010 – 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

    ―― 当初は、ドラマと同じく千葉雄大さん・大杉漣さんが親子を演じる予定だったんですか?

    野口: そうですね。ドラマ版キャストそのままで撮る予定でしたが、「大杉さんが不在なら一新するしかない」ということで、あらためてキャスティングが行なわれました。

    ―― そうして親子役に選ばれたのが、坂口健太郎さんと吉田鋼太郎さん。家族構成には妹が加わりました。

    野口: 妹が加わったのは大きなポイントですね。劇場版の制作にあたっては、ドラマ版よりも“父と子の距離感”をしっかり離すようにしたんです。山本舞香ちゃん演じる妹が加わることで、その距離感がしっかり生まれたと思います。

    ――「光のお父さん」は、アキオたちが実の父子として生活する現実世界と、マイディーとインディとして共に冒険するエオルゼアの世界、それぞれでのエピソードが互いに影響しながら物語が転がっていくのが特徴ですね。

    野口: 常に意識していたのは「静と動」です。僕が撮る実写パートは「静」で、基本的には家庭という狭い世界で起きているできごとや心情の変化を描写していきます。だから吉田鋼太郎さんには、抑えた演技をしてもらうことが多かったですね。一方で、山本さんが撮るゲームパートは「動」。実写パートで吉田さんが演技を抑えれば抑えるほど、インディのキャラクターが炸裂したときに笑えるし、そのコントラストがあることで、クライマックスのツインタニア戦でどちらも「動」になり、そこで着火する。そういうふうにしたいなと、構想の段階から思っていました。

    ▼アキオがゲーム内で使用する「マイディー」(左)と、父・岩本暁が使用する「インディ」(右)。

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    山本: 「静」の演技についていうと、ドラマ版では随所に入っていたモノローグを、劇場版ではかなりがっつり減らしましたね。

    野口: 吉田鋼太郎さんの“顔で語る演技”はもちろん、坂口健太郎さんもそういうちょっとした表情の変化を出すのがすごくうまいんですよね。

    ―― クライマックスで実写パート・ゲームパートがどちらも「動」になるというお話がありました。そこで2つが重なるまでには、それぞれが「分断されていない1つの物語」として違和感なく進むことが重要かなと思うのですが、撮影で苦労されたことはありますか?

    野口: ドラマ版では実写パートを撮り終えてからゲームパートを撮影したんですが、今回は同時に制作がスタートしたんです。難易度としては今回のほうが確実に高いはずですが、ドラマ版から一緒にやってきたおかげですごくスムーズに進みましたね。きちんと関係性が構築されてから映画に臨めたというのは、かなり大きかったです。

    山本: 撮影に入る前も、シナリオ開発から「映画ではどんなふうに撮影しようか」というところまでかなりじっくり話し合いましたからね。近所のファミレスに何度も通って、閉店時間まで。そのおかげでゴールがはっきりしていたので、撮影時に迷いがなかったです。登場人物のその時その時の感情が、撮影前の時点できちんと整理できていたので。

    野口: あの時間は、僕にとってもすごく貴重でした。山本さんは構成力にすごく長けている方ですし、実際にFF14のプレイヤーでもあるので、僕にはない視点でいいアイデアをたくさん出してくださいました。

    ―― 劇場版のゲームパートでは、ほかに類をみない革新的な撮影方法に挑んだということですが……。

    山本: スクウェア・エニックスさんが映画撮影用に開発サーバーと同等の環境を用意してくださって、そのなかでプレイヤーたちが同じ空間でやりとりしながら“演技”をしたんです。それから、ドラマ版との違いで一番大きいのは「フレームレート(fps)」ですね。「1秒間に使用するコマ数」のことで、通常は24fpsくらいで撮るんですが、ゲームの表現レベルがドラマより格段に上がって、劇場版のエオルゼアパートは120fpsで収録・再生することができました。1秒24コマが120コマに増えると何ができるかというと、スローモーションが非常にスムーズに表現できるんです。

    ―― 確かに、「スクリーンでこんなにきれいにFFのゲーム映像が見られるんだ」と思いました。

    山本: これって、ゲームのユーザーも誰も見たことがないんですよね。FF14にはスローモーションの表現がないので。おそらくFFプレイヤーの方々は、「まさかツインタニアがこんなふうに動くなんて」「翼、こうなってんの!?」って驚かれると思います。

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    ―― エオルゼアパートの撮影では、ほかにどんなことを意識されましたか?

    山本: 野口監督が先ほどされた「静と動」の話にもつながるんですが、ドラマのときよりできることが圧倒的に増えて、僕自身もFFの世界に対する知識が増えたので、「なるべく動きのある場所で撮影する」というのが僕自身にとっては一つのテーマでした。単にカメラを動かすだけじゃなくて、人がすれ違いやすい場所とか、周りのモブキャラクターが賑やかにおしゃべりしているとか、そういうところで撮ろうと。そうすることで、「自分がその世界にいる」という感覚を味わえると考えたんです。

    野口: キャラクターのエモート(感情表現)もかなり増えましたよね。モンスターに攻撃されたときの痛そうな顔、初めて見たとき感動しましたよ。

    山本: 「膝を突く」なんてエモートも、ドラマ撮影時にはなかったですよね。撮影後に実装されたエモートがたくさんあるんです。

    野口: さらに驚いたのが、吉田直樹プロデューサーとエモートの話をしたとき、「エモートが増えたのは僕の指示じゃなくて、現場のスタッフたちが自主的にやったんです」って言ったんですよ。ドラマ版「光のお父さん」で山本監督が作った映像を見て、「こういう楽しみ方をしてくれているユーザーがいるんだ」と知ったのがきっかけのひとつだというんです。

    山本: 「仕事は全部こなしたうえで、余った時間で作っている」っておっしゃってましたね。「イカれてるな」って思いました(笑)。

    ――「光のお父さん」が、現実のゲームを変えてしまったわけですか……。マイディーさんとお父さんはFF14によって現実での親子関係が変わり、ブログ読者やドラマの視聴者が新たなプレイヤーになり、それらの反響がFF14自体にも影響を与えた。あらためて、「光のお父さん」がもたらした影響の大きさを感じています。

    山本: もう一つ言うと、これは偶然ですけど、「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」メインストーリーのエンディングと映画のエンディングがリンクしているんです。場所とシチュエーションが一緒なんですけど、これはプレイヤーにとっては、気づくと嬉しいポイントではないかなと思います。念押ししておきますけど、本当に偶然ですからね。ゲーム側のストーリーが公開されたのは、撮影が終了した後でしたから。僕とマイディーさんもびっくりして、「やばい、これステマだと思われるんじゃないか!?」って顔を見合わせました(笑)。

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    ―― それでは続いて、本作の大きなテーマの一つである“家族”についてお話を伺います。お二人は、ゲームにまつわる家族の思い出ってありますか?

    野口: 僕はそこまでゲーマーというわけではなくて、むしろ、ゲーマーじゃないからこその視点で「光のお父さん」に参加できたというのが大きかったと自負しています。でも不思議なもので、この作品に携わることになって幼少期の父との記憶を思い返したとき、そんな僕でも「父親とファミコンを買いに行った」っていう記憶が一番最初に思い起こされたんですよ。たしか小学1年生か2年生の頃だと思うんですけど、新宿にファミコンを買いに行ったんですよね。ファミコンを買った帰りに中華料理屋に入って、親父の頼んだ中華丼に金ダワシの破片が入っていたなんてことまで、その日のことだけは妙に記憶に残っている。それくらいゲームを買ってもらうって嬉しいことだし、原体験として象徴的な存在なんだなと思いました。

    ―― 山本監督はどうでしょう?

    山本: 僕にとってもファミコンの存在は大きくて、当時父親の仕事の都合でマレーシアにいたんですが、日本にいる祖母がファミコンと「ドラゴンクエストⅢ」を送ってくれたんですよ。それで僕と姉が楽しそうに遊んでいるのを見て、親父も「ちょっとやってみようかな」なんて思ったんでしょうね。姉弟で遊び方を教えることになったんですが、最初に入力した名前が「やまもと」だったんです。

    ――「光のお父さん」と同じ展開じゃないですか!(笑)

    山本: そうそう、同じなんです。でもうちの父は最初の村を出た後、「おおがらす」を倒せなくてレベル1で辞めてしまいました(笑)。母親も「テトリス」と「ソロモンの鍵」にはまって、延々プレイしていましたね。幼少期を思い返すとき、やっぱりゲームがいろんな記憶のひきだしになっているように思います。

    ―― では最後に、これから映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。

    野口: 「光のお父さん」の制作にあたっては、家族の物語であることはもちろん、僕はこれが「一人の男の蘇生劇」だというところをずっと意識していました。この作品で僕がすごく好きなのは、あることをきっかけにお父さんが人生に立ち止まったとき、彼には見えていなかった“それ以外の道”を息子が指し示すというところ。やっぱり真面目な人って、あるときふっとレールから外れてしまったとき、そこで立ち止まってしまうと思うんです。僕自身も、映像がうまく作れない環境になったとき、「もうこの先に自分の道はないんじゃないか」と思いました。でも、ふと横を見ると、意外に“ほかの道”がある。今、いろんなしんどい思いをしている人が世の中にたくさんいると思いますが、ちょっと力を抜いて周りを見てもらえるような、そんな映画になっていたらいいなと思います。だから、最後のお父さんの独白や、息子たちと共に挑むクライマックスのツインタニア戦は、特に「ここが勝負だ」という気持ちで作りました。ぜひ楽しんでください。

    © 2010 – 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

     

    「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」

    2019年6月21日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

    監督:野口照夫(実写パート)・山本清史(エオルゼアパート)
    脚本:吹原幸太
    原作:「一撃確殺SS日記」(マイディー)/ ファイナルファンタジーXIV(スクウェア・エニックス)

    出演:
    坂口健太郎 吉田鋼太郎
    佐久間由衣 山本舞香
    前原 滉 今泉佑唯 野々村はなの
    和田正人 山田純大 / 佐藤隆太 財前直見

    声の出演:南條愛乃 寿美菜子 悠木碧

    配給:ギャガ

    ファイナルファンタジー14光のお父さん
    著者:マイディー
    発売日:2017年03月
    発行所:講談社
    価格:1,944円(税込)
    ISBNコード:9784062205122

    ©2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会
    ©マイディー/スクウェア・エニックス




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