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LINEノベルが主催するイベント「あたらしい出版のカタチ」の第2弾が、5月10日(金)、六本木・文喫で開催されました。
今回のテーマは「編集者がいらない時代に、僕たちはどう生き残るか」。
小説投稿サイトなどの台頭によって、誰でも気軽に作品を発表し、直接読者とつながることができ、実際にWeb発の人気作も数多く登場している昨今。
「編集者の存在意義はどこにあるのか?」という視点から、3名の編集者とLINEノベル事業プロデューサーが“あたらしい出版のカタチ”について語る回となりました。
登壇者
・三木一馬:LINEノベル統括編集長(㈱ストレートエッジ代表)
・高橋裕介:新潮文庫nex編集長
・河北壮平:講談社タイガ編集長
・森啓:LINEノベル事業プロデューサー(LINE㈱執行役員)
第1弾の参加チケットが受付開始から数時間で完売したことを受け、第2弾は抽選制に。今回も約40名が参加しました。
まず話題にあがったのは、「そもそも編集者の役割とは何か」。
新卒で講談社に入社した河北さんは、「講談社ノベルス」「講談社タイガ」「メフィスト」など多くのレーベルの単行本・雑誌を担当してきた経験から、編集者は【プロデューサー】【ディレクター】【マネージャー】【タレント】という4つのポジションに分けられると解説。
たとえば「スケジュールを管理し、作家から原稿を受け取る仕事」はマネージャー、「作家とともに“作品づくり”に悩む姿勢」はディレクター、「作品を世に送り出すために、プロモーションやメディア化など本作りの全てに携わる」プロデューサー。また、かつて“編集者は黒子”といわれていたが、最近では担当作を広く認知させるためにメディアなどに露出し注目を集める編集者も増えており、それゆえ「タレント」的な役割も人によって増してきているのだといいます。
これに対して高橋さんは「編集者は、つまり何でも屋。週刊誌なら取材相手や出来事を、小説なら物語やテキストの面白さを最大化するのが目的で、そのために何をするかによって、役割がプロデューサーになったりタレントになったりする」。
三木さんも「作家はゼロから1を生み出し、編集者は情報そのものに価値を与えたり、高めたりするのが仕事」「ファッション誌に代表されるような“ライフスタイルの提案”は、ブランドの組み合わせや商品選びなど、“本来は読者自身がすること”を記者が代行し、そのぶん効率化された時間を読者がお金で買っている。一方で漫画や小説は、それ自体にすでに価値があって、編集者はそれを高めるのが仕事です」と述べました。
3人の話から明らかになったのは、“編集者”が内包する要素が実に多様で、概念として把握できても実態をとらえづらいということ。そして「情報の価値を高めるのが編集者の仕事」と聞いて気になるのが、「記事・作品を無料で執筆している書き手」「情報を無料で収集・提供しているキュレーター」「無料でコンテンツを提供しているツールやサービス」の存在です。
これが、イベントの大きなテーマである「今の時代に編集者は必要なのか」「出版のカタチはどう変わっていくのか」という疑問につながっていきます。
インターネットやサービスの発展・普及によって、編集者を介在させずに、“書き手”と“読み手”が直接つながることもできるようになった現在。「タダで面白いものが読める」という体験がある意味スタンダードになり、「編集者がいなくても、作家は面白い作品を書けるのではないか」「出版社がなくても、作品は読者に届くのではないか」と大なり小なり思っている方は多いのではないでしょうか。
ここから話題は、「今の時代、編集者は不要なのか?」「これからの編集者の役割とは」へ。
三木さんは「成功しているクリエイターにとっては、編集者は不要かもしれない。ただ、どんなコンテンツも、一度盛り上がったら、その後右肩下がりになっていくことは避けられません。そういうときに『いいもの作ろうぜ』と一緒に悩むことができる相棒が、編集者です。創作ってメンタルとの闘いなので、スケジュール管理ではなく、平穏な執筆環境を得るうえで、編集者は必要だと思います」。
河北さんも「新入社員時代、先輩から『面白かったら作家のおかげ、売れなかったら編集者のせい』という言葉を教わりました。『面白いものを読者に届けたい』という目指すべきものは同じでも、編集者にもいろいろなタイプがいて、作家との相性はさまざまです。作家にとってはどんな編集者と組むかがますます重要になりますし、一方で編集者としては“選ばれる編集者”でありたいと思っています」と考えを語りました。
ここでポイントとなるのが、LINEノベルのビジネスモデル「あたらしい出版のカタチ」には「編集者」が存在していること。
LINEノベル事業プロデューサーの森さんは、事業モデルの構想にあたり、前述のような議論を受けて「やはり編集者は必要だ」という判断に至ったのだといいます。
LINEノベルでは投稿作品・作家に対して参画出版社がオファーを出し、書籍として出版する場合には担当編集者がつくことになります。作家の視点からいうと、“パートナー選び”があらかじめ仕組み化されているともいえます。
韓国・中国では“紙の書籍を全国に流通させる物流基盤が弱い”という点も大きな要因となって、Web投稿小説が盛り上がっており、Web小説が映画やドラマの原作になるケースも非常に多く、また、その多くが30歳以下の若い著者によるものなのだそう。
LINEノベル事業プロデューサーの森さんは、この事実を目の当たりにし、「日本においても、“小説”はまだまだ盛り上がるのではないか」と考えたのだといいます。
「本は売れない」「紙の本は衰退する」と言われて久しいなか、コミュニケーションに強い「LINE」に小説のプラットフォームが生まれたことで新たな“面白い小説”が生み出され、ユーザー同士のコミュニケーションによって読者の輪が広がり、それがまた「読みたい人」「書きたい人」を新たに増やしていく……というムーブメントが日本でも起こるかもしれません。
・LINEノベルの登場で「小説」はどう変わる?ミリオンセラーを生んだ編集者が語る「あたらしい出版のカタチ」