• fluct

  • LINEノベルの登場で「小説」はどう変わる?ミリオンセラーを生んだ編集者が語る「あたらしい出版のカタチ」

    2019年04月27日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
    Pocket

    先日リリース発表された小説プラットフォーム「LINEノベル」のイベント第1弾として、4月24日(水)、六本木・文喫で「あたらしい出版のカタチ 第1回:100万部超えを生み出した編集者が語る『ミリオンセラーの作り方』」が開催されました。

    登壇者は、LINEノベル事業プロデューサーの森啓さん(LINE㈱ 執行役員)と、電撃文庫編集長を経て㈱ストレートエッジを立ち上げ、このたびLINEノベルの統括編集長もつとめる三木一馬さん、新潮文庫nex編集長の高橋裕介さん。ミリオンセラーのヒット作を世に送り出してきた三木一馬さんと高橋裕介さんの2人が、ずばり「どのようにミリオンセラーを生み出しきたか」「これからのミリオンセラーはどのように生まれるか」をテーマに、1時間半にわたってトークを繰り広げました。

    定員40名の席は、申し込み受付開始後すぐに完売。

    参加者にはプロ・アマ問わずすでに創作活動をしている人も多く、熱心にメモをとる姿や、会終了後に登壇者も交えて交流しているようすが見られました。

    *****

    イベント前半の話題は、「どのようにミリオンセラーを生み出してきたか」。

    たとえば三木一馬さんが手がけた『ソードアート・オンライン』をはじめとする“ライトノベル”は、それまでの小説とは異なる「グラフィカルで、漫画と同じような感覚で読める小説」として、中高生男子をメインターゲットに、ここ10年~15年間で爆発的に市場を成長させてきました。

    ソードアート・オンライン 1
    著者:川原礫
    発売日:2009年04月
    発行所:アスキー・メディアワークス
    価格:637円(税込)
    ISBNコード:9784048677608

    “漫画と同じような感覚で読める”という特徴にもあるように、三木さんが意識したのは「小説でありながら、漫画のコンテンツを作るような編集機能」。

    「大ヒットしている漫画は、ストーリーもさることながらキャラクターが印象的である」という点から、かっこいいけれど読者との距離が近い“隣にいてほしい存在”の魅力を解説。

    また、自身が編集を手がけた『俺の妹がこんなに可愛いはずがない』を例に、「ニーズのあるところにどんな切り口でコンテンツを届けるかという視点も必要」「この作品のヒロインは、兄とは不仲だが、ある秘密の共有をきっかけに物語が転がっていくという設定。『従順な妹・慕われている兄』という当時の妹ブームに対するアンチテーゼとしての側面もあった」と述べました。

    一方、新潮文庫nex 高橋編集長は「小説そのものを見つめ直す」「作品のファンを生む」「“作家のファン”に育てる」という3つのステップを、著者・知念実希人さんにとって初めての書き下ろし文庫シリーズとなった『天久鷹央の推理カルテ』を例に解説。

    「文庫読者の高齢化と、これまで小説が得意としてきた純文学・SF・ミステリーなどのジャンルで面白い漫画がたくさん生まれていることが悔しくて、“そんな中で小説を読む理由って何だろう”と考えていました」

    20~30代の読者をターゲットに「小説が育んできた魅力を持ちつつ、新しい面白さを」と考えているところに届いた原稿が、現役医師作家であるという個性を活かし、事件やストーリー展開だけでなく、キャッチーなキャラクター設定にまで徹底して“医療”という軸を通した「本格小説」でした。

    その目論見はみごとにはまり、作品はヒット。さらに当初メインとしていた世代で読者層が固まってきた頃、高橋さんはさらなる読者拡大へ向け、キャラクター小説でありながら「表紙イラストのキャラクターを従来より小さくする」「キャラクターに頼らず、本格小説として書店店頭でアピールする」といった策を講じます。

    このようにして、あと一歩というところまできていた同作をミリオンヒットに押し上げたのだそうです。

    天久鷹央の推理カルテ
    著者:知念実希人
    発売日:2014年10月
    発行所:新潮社
    価格:594円(税込)
    ISBNコード:9784101800103

    しかしこれらは、あくまでも「紙の媒体で」「書店店頭で」ヒット作を生み出した事例。

    小説投稿サイトの登場で「書く」「読む」が身近で気軽なものとなった今、LINEノベルがリリースされることで「小説を作り、読者に届ける」ことはどう変わっていくのでしょうか?



    三木さんは、「チャネルや発信者の増加で『みんなが同じものを見る』ということが少なくなり、一世を風靡するムーブメントが起こりにくくなっている一方で、人がコンテンツをキャッチアップするポイントが増えたことで、何かをきっかけに一度着火したときの効力範囲は大きくなっている」「『紙の本でミリオンセラーを作ろう』は難しくても、合算してミリオンセラー級のコンテンツを作ることは、実はやりやすくなっているように思う」
    「(読むことへのハードルが下がると)この作品は面白い、いや面白くないというコミュニケーションが生まれる。賛否両論生まれることで、自分も読んで確かめたいという気持ちが生まれ、応援する人が増えて作品が売れていく。ミリオンセラーはその結果ついてくるのではないか」とコメント。

    事業プロデューサーの森啓さんも「LINEは、スタンプやマンガや音楽といった分野で、従来からあるコンテンツを、時代に合わせたフォーマットに最適化し、デリバリーすることで新しいコミュニケーションを生んできた。LINEノベルにおいても、コミュニケーション作りが重要」としており、「多彩なコンテンツが読める」「読めば読むほど無料(読書の習慣化)」という軸となるサービス以外にも、コミュニケーションインフラである「LINE」ならではのさまざまなアイデアを考えているそうです。

    またLINEノベルは、“出版社による囲い込み”を取り払い、投稿されたコンテンツに対して参画出版社全社がオファーできるところもポイント。高橋さんも「あっちがかめはめ波を打ったら、こっちは黒龍波を打つ。そういう異種試合がオープンで開かれるのが楽しみです」とコメントしていました。

    LINEノベルは今夏にアプリの配信を予定しており、サービス開始時の参画出版社は9社となる予定。

    また今回開催されたイベント「新しい出版のカタチ」についても、第2弾の企画がすでに進行中だそうです。

     

    関連記事

    小説プラットフォーム「LINEノベル」提供開始 出版社9社が参画 文庫レーベル立ち上げも




    タグ
    Pocket

  • 広告用

    20190320
  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る