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史上初のゴールデンウィーク10連休。
ほんのひきだしでは「10連休読むならこれしかない!」と題し、さまざまな出版社の文芸編集者に「10連休に読むなら?」というテーマでおすすめ本を選んでいただきました。
今回本をご紹介いただくのは、小学館 出版局 文芸編集室の幾野克哉さんです。
大学病院のことを、「権力闘争に明け暮れる医師たちが集まった伏魔殿」と思っている人は、けっこう多いようです。おそらく医療テレビドラマの影響が大きいのでしょう。
本書には、「世のイメージが悪すぎる大学病院で、本当は何が行われているのか」が描かれています。著者の夏川草介氏は、長野県で地域医療に従事する現役医師です。主人公である青年内科医・栗原一止は、より良い医師を目指して、信州にある「24時間365日対応」の地域病院・本庄病院から信濃大学病院へと籍を移しました。
ルールだらけの大組織になんとか順応しながら2年の日々を過ごしましたが、29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、局内の実権を掌握している准教授と対立してしまいます。大学病院という存在がなければ地域医療は成り立たないのが現実であり、とてつもない技量や知識を持った教授も存在する。しかし、大組織ゆえのひずみや弊害がないわけがない。栗原一止が患者のためにとった「ルール違反」の行動に、大学病院という組織はどんな評価を下したのでしょうか……。
思わず、堅苦しい紹介になってしまいましたが、夏目漱石を敬愛する栗原一止は、これまでのシリーズ同様、医療の限界を感じながら、人間の可能性を信じ、むなしくてあっけない「死」と向き合いながら、ささやかな希望を持ち続けています。
美しい信州の風景のもと、一止を支える妻ハル(榛名)との間には、小春という新たな家族も加わりました。読んだ人すべての心を温かくするベストセラー「神様のカルテ」10周年を飾る最高傑作です。
次回は【講談社 第五事業局文芸第二出版部 戸井武史さん】のおすすめ本です!