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史上初のゴールデンウィーク10連休。
ほんのひきだしでは「10連休読むならこれしかない!」と題し、さまざまな出版社の文芸編集者に「10連休に読むなら?」というテーマでおすすめ本を選んでいただきました。
今回本をご紹介いただくのは、新潮社 編集委員の寺島哲也さんです。
内容紹介
野生の眼を持つ霊長類学者・山極寿一と、物語の森に住む小説家・小川洋子。ある時は京都大学の研究室で、またある時は屋久島の自然の中で、現代に生きるヒトの本性をめぐって、いきいきとした対話が続けられた。野生のゴリラを知ることは、ヒトが何者か自らを知ること――。発見に満ちた知のフィールドワークが始まる。
桜も満開となった4月の週末、京都の市立動物園に小川洋子さんとゴリラを見に出かけた。ゴリラ舎(「ゴリラのおうち」という看板がある)には生後4か月の赤ちゃんゴリラのキンタロウがいて、愛くるしい表情で人気を博していた。
母ゲンキの周りを7歳のゲンタロウが走り回り、父モモタロウは悠然と銀色の背中(シルバーバック)を見せながら佇んでいる。副園長の坂本英房さんに様々なエピソードを伺ったが、ゴリラ研究の第一人者・山極寿一さんと縁の深い「ゴリラのおうち」には温かい家族の時間が流れていた。もし京都に行かれる方がいたら、ぜひ市立動物園で赤ちゃんゴリラのキンタロウに会うことをお勧めしたい。本当に可愛いです。
アフリカでゴリラと暮らした霊長類学者と、ヒトの心の森に分け入る小説家――この発見に満ちた対談は、さまざまな場所で延べ10時間以上にわたって行われた。
小川さんは、山極さんから「言葉のない世界の気配」を感じ取ろうとし、山極さんは「アフリカの熱帯雨林を歩く時の感覚を取り戻し、ゴリラになり、自分が体験してきたことを伝えたい」と言った。この二人の話に耳を澄ましていると、ゴリラの世界はかぎりなく豊かで奥深く、ヒトが学ぶことはたくさんあると感じる。
最初の対談は河合隼雄財団創立記念の講演会(2014年2月、紀伊國屋サザンシアター)だったが、山極さんは、「いつか小川さんとアフリカの自然の中で話ができたらいいね」と語っていた。それから2年後の2016年3月、野生のシカやサルが生息する屋久島の原生林で稀有な対話は実現した。本の帯や表紙には、その時の貴重な写真が使われている。ガジュマルの樹の下で話す二人の会話を、読者がすぐ隣りで聞いているような本づくりを心がけた。ページの間から、木々を揺らす風の音やけものや鳥たちの声を感じてくださると嬉しいです。
次回は【小学館 出版局文芸編集室 幾野克哉さん】のおすすめ本です!