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史上初のゴールデンウィーク10連休。
ほんのひきだしでは「10連休読むならこれしかない!」と題し、さまざまな出版社の文芸編集者に「10連休に読むなら?」というテーマでおすすめ本を選んでいただきました。
今回本をご紹介いただくのは、集英社 文芸書編集部の佐藤香さんです。
世界各地で起こる銃乱射事件やテロ。本書はその被害者遺族となった6歳の少年の視点から描く、衝撃のデビュー小説です。
ニューヨーク近郊、一年生のザックが通う小学校に「じゅうげき犯」が侵入し、19名を射殺。ザックは無事だったものの、10歳の兄アンディはその犠牲者のひとりとなってしまいました。その日から家族の生活は一変します。憔悴しきる母親と、どこか様子がおかしい父親。悪夢にうなされながらもひとりぼっちになったザックは、アンディが生前使っていたクロゼットの中を「ひみつ基地」にして、死んだ兄に語りかけるのでした……。
本書は6歳の一人称視点で綴られ、原書はかなり平易な英文で構成されています。そこで、翻訳者・越前敏弥さんのアイディアで「小学3年生までに習う漢字だけ使う」ことになりました。大人の読者の方には少々読みにくいかもしれませんが、ひらがな交じりの文体からは、逼迫した現場の混乱やザックのいとけなさが現実感をもって伝わってきます。悲しみや怒り、安堵と喜び、優しさ、そして勇気。子供のさまざまな感情がないまぜになったままダイレクトに飛び込んできて、私自身も編集作業をしながら目頭が熱くなりました。
なぜ幼い子がこんな思いをしなくてはならないのか。この子をどうしたら守ってやれるのか……。フィクションにも関わらず、本書に寄せられた感想の中で特に多かったのは「ザックを抱きしめてあげたい」というものでした。
社会派かつ読みやすい作品を出したいという気持ちで版権を取得した本書でしたが、結果としては、すべての方におすすめできる、家族の絆と成長の物語となりました。ぜひ10連休のあいだに、ご家族みなさまで読んでいただければ嬉しいです。
次回は【KADOKAWA 文芸局 服部圭子さん】のおすすめ本です!
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