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史上初のゴールデンウィーク10連休。
ほんのひきだしでは「10連休読むならこれしかない!」と題し、さまざまな出版社の文芸編集者に「10連休に読むなら?」というテーマでおすすめ本を選んでいただきました。
今回本をご紹介いただくのは、文藝春秋 第一文藝部の山田憲和さんです。
これは奇妙な男の話です。
男は、159歳……万延2年の生まれ。西暦で言うと、1861年になります。まだチョンマゲの世の中でした。
この10連休で元号が変わりますが、『人類最年長』の主人公の男は、万延から文久、元治、慶応、大正、昭和、そして平成が終わるまで、8つもの元号にまたがって生きています。
男が生まれたのは横浜で、江戸が東京になるのを目撃しました。とても成長の遅い子どもで、四十を過ぎるまでは報われない女性遍歴を重ねた……などとのたまっております(笑)。
歴史的瞬間にも立ち会っていて、日露戦争、関東大震災、東京大空襲では危機一髪の状況にも陥りました。五千円札の樋口一葉さんやSONYの井深大さんのような有名人とも出会いました。高度経済成長のころには「不死化細胞」の研究にも協力させられました。
この男、どういうわけか、死神に逃げられてしまいます。死ぬことができないのです。長く生き続けるというのは、世界一孤独なのでしょうか……。それでも男はへこたれません。明治以来の日本の近代化をたったひとりで生き抜いて「ノーホエア・マン」と呼ばれるようになりました。
そして30歳の女性看護師に、自らの秘密を語りながら、
「あなたのおっぱいを触らせてもらえないだろうか?」
などと頼むのです。本気なのか、ボケているのか、まったく……。
著者の島田雅彦さんには、徘徊癖があって、いつも街をうろうろしています。最長で36時間ぐらい飲んだくれることもあるらしい。『人類最年長』の男は、まさしく島田さんの分身で、江戸の昔から繁華街を歩き続けて、この国の移り変わりをすべて見つめています。
大所高所から見下ろすことなく、時の権力者に影響されることもなく、地に足をつけて生きる人たちの本物の歴史があるのです。
さあ、夢見るようなタイムスリップがはじまります……。
内容紹介
江戸が東京になって、日露戦争、関東大震災、東京大空襲、そして平成の終わりまで、たったひとりで生き抜いた男がいた。
男は1861年3月13日、横浜で生まれた。
とても成長の遅い子どもで、3歳になるまでまともに歩けず、ゆっくりと時間をかけて成長してからは、人並みに結婚もした。
何度も死に損なったけれど、それなりに人生を楽しんで、あらゆるものを見てきた。
五千円札の女と懇意になったり、朝鮮人狩りから少女を救ったり、ヤミ市の少年たちに自活の道を施したり、不死化細胞の研究に協力させられたり、数奇な運命とともに生きた。
この男、159年にも及ぶ人生最後の望みとは?
30歳の女性看護師に何を託すのか。(文藝春秋BOOKSより)
次回は【集英社 文芸書編集部 佐藤香さん】のおすすめ本です!
Vol.8を読む 》