'); }else{ document.write(''); } //-->
平成という時代を、皇后として歩んでこられた美智子さま。『根っこと翼 皇后美智子さまという存在の輝き』は、そんな美智子さまの秘話と素顔を綴ったエッセイ集です。
著者は、美智子さまの長年の親友である末盛千枝子さん。美智子さまの本を数多く手掛け、全幅の信頼を寄せられてきた編集者です。
ご成婚60年を迎えられた天皇皇后陛下やこれまでの道のりなど、知られざるエピソードに触れることができる本作。その一部と、著者が作品に込めた思いについて、編集を担当した新潮社企画編集部の武政桃永さんに文章を寄せていただきました。
新元号が「令和」に決まり、いよいよ平成が終わろうとしています。紙幣デザインの変更が発表されるなど、「新しい時代」へ向けて期待も高まっている今こそ、ぜひ読んで欲しい一冊が本書です。
著者は美智子さまと30年来のご交流があり、美智子さまが全幅の信頼を寄せる親友の末盛千枝子さん。美智子さまの初のご著書でベストセラーになったご講演録『橋をかける 子供時代の読書の思い出』を手掛けた編集者です。
「(交流する中で)知り、感じる皇后さまの素顔は、私一人の中にしまっておくのはあまりにもったいないように思ってきた。散々迷った挙句、恐れながらも書かせていただくことを決意した」と末盛さんは執筆の動機を語り、そのことについて美智子さまは、末盛さんは自分のことを他の人と違う視点で見てくれているから、とご了解下さったそうです。
そんな末盛さんだからこそ知り得た美智子さまの数々の秘話は、ときにチャーミングで、ときに哀しく、そして時に涙が出るほどに心揺さぶられるものばかりです。
例えば、「母と娘」という章での、ご長女・黒田清子さんとのやりとり。
アリとキリギリスの話をお二人でされていたとき、美智子さまがご自身を「私はやはりキリギリスね」とふとおっしゃった。すると清子さんが楽しそうに笑われながら「そう、そう、やっぱりアリではいらっしゃらないのね。でも……キリギリスだけとも違うし。ああ、一所懸命アリになろうと努力しているキリギリス?」と返されたといいます。美智子さまのご性格の中にある、優等生だけではおさまらない芸術家の部分も清子さんは大好きで尊敬していらっしゃる、という微笑ましいエピソードです。
また、陛下との本当に仲の良いご様子もたくさん綴られています。
お輿入れのとき、美智子さまが持参された大きなパンダのぬいぐるみがトラックからおろされると、陛下が自ら美智子さまがお使いになるお部屋まで運び椅子に座らせたといいます。パンダのぬいぐるみはご友人たちからのプレゼントだったそうで、なおのこと美智子さまは嬉しく思われたことだろう、と。
『根っこと翼』というタイトルは、先にも挙げた『橋をかける』のなかのお言葉の一つです。美智子さまは、読書というものが、悲しみに耐える「根っこ」と、希望へと飛翔する「翼」を与えてくれたとおっしゃっています。国民の幸せを祈り、国民の悲しみに寄り添い続けた皇后さまという存在の礎には、そのような「根っこと翼」があったということも、末盛さんが伝えたかった事柄の一つなのでしょう。
多数収録された秘蔵写真も必見です。ぜひお手に取ってみてください。
*
新潮社 企画編集部 武政桃永