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これまで欧米の作品が主流だった海外文学ジャンルで、実は近年、中国人・韓国人作家(および中国系アメリカ人作家)による作品が静かなブームを巻き起こしています。
中華料理や三国志をはじめ、韓国料理や韓流ドラマ、K-POPなどで“文化”自体にはなじみがあるものの、なぜか文学に関しては、灯台下暗しとばかりにあまり光が当たってこなかったように思います。
そんななか、今、どのような形で中国・韓国の文学は脚光を浴びているのでしょうか?
※主なテーマは4つ。今回は「中国編」と題して①②をお届けします。
① SFの勢いが目覚ましい中華圏
② 負けず劣らずの存在感を放つ華文ミステリー
③ 空前の豊饒ぶり! 百花繚乱の韓国文学
④ フェミニズムとの強い結び付き
中国からの新たな風としてまさに今勢いを増しているのが、「SF」の領域です。
最前線で旗振り役をつとめているのは、中国系アメリカ人作家のケン・リュウさん。日本での刊行第1弾となる短編集『紙の動物園』は、又吉直樹さんがテレビ番組「アッコにおまかせ!」(TBS系)で推薦したことでその名が知れ渡りました。
『紙の動物園』は、SF・ファンタジー作品を対象とするネビュラ賞、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞それぞれで短編小説部門を受賞。史上初の三冠を成し遂げて、国際的にも高く評価されています。
ケン・リュウさんは中国で生まれ育ったのち、両親とともに渡米。創作活動は英語で行なっていますが、その筆致に、東洋の土地や伝統が織り成す独特の雰囲気が色濃く滲んでいるのが特徴です。
しかし注目すべきは、作品の素晴らしさだけでなく、彼自身が中国SF小説の翻訳の第一人者として活躍しているということ。それを知るための最初の一冊には、『折りたたみ北京』がおすすめです。
『折りたたみ北京』は、ケン・リュウさんが編んだ“中国SFアンソロジー”。「貧富の差によって3つの層に分かれた北京の街が、1日ごとにルービックキューブのように回転し折り畳まれる」という奇抜なアイデアの表題作をはじめ、選りすぐられた7人・13作品が英語に翻訳され、収録されています。
本書の登場は、中国SFが未曾有の収穫期を迎えていることを世界に知らしめ、日本でも2018年2月に刊行されるや大きな話題になりました。
さらに今年2月には、この続編となる『Broken Stars(原題)』がアメリカで刊行。また『折りたたみ北京』で取り上げられた作家のうち、郝景芳さんの『郝景芳短篇集』が3月に白水社から刊行、劉慈欣さんの『三体』、陳楸帆さんの『荒潮』が早川書房から年内に刊行予定です(※『三体』『荒潮』は仮題)。
▼『折りたたみ北京』は「SFが読みたい!2019年版」発表の「BEST SF 2018」海外編第1位にも選ばれました。
さらにもう一人、ケン・リュウさんに並ぶ有名な中国系アメリカ人のSF小説家として、テッド・チャンさんが挙げられます。
テッド・チャンさんは極端な寡作で知られており、日本で出版されているのも短編集『あなたの人生の物語』の1作のみ。しかし、彼の名前や本のタイトルは知らなくても、映画版なら「ああ!」と思い当たる方が多いのではないでしょうか。
同書の表題作を原作に、2017年に公開されたのがこちらの映画。「メッセージ」です。
主人公の女性言語学者が、宇宙船とともに突然現れた異星人の言語を解読していくうちに、驚愕の真実に到達するという物語。
小説においても、確かな科学知識に裏打ちされた怜悧な洞察力と、深遠な描写がSF読者の心を捉えています。
テッド・チャンさんは、16年ぶりの新作短編集『息吹』が早川書房より年内に刊行予定(※仮題)。遅筆の巨匠が今度はどんな物語を紡ぐのか、発売が待たれます。