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  • アドラー心理学の第一人者が自身の「読書術」を書き下ろし!岸見一郎さんインタビュー

    2019年03月15日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    2013年に刊行され、大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』。同書で著者・岸見一郎さんが解説したアドラー心理学は、20世紀初頭に提唱された理論であるにもかかわらず、あと数年で21世紀も四半世紀を過ぎようとしている現代にインパクトを与え、これまでたびたびブームを巻き起こしています。

    そして今年2月、岸見一郎さんが「読書」と「生きること」について書き下ろした新書『本をどう読むか 幸せになる読書術』がポプラ社より発売されました。

    「本を読むことで間違いなく幸せな人生を送ってこられた」という岸見さん。今回はその真意と“読書の効用”について、お話を伺いました。

    岸見一郎(きしみ いちろう)
    哲学者。1956年京都府生まれ。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。専門の哲学と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的に執筆・講演活動を行なっている。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(ともに共著/ダイヤモンド社刊)、『生きづらさからの脱却』(筑摩選書)、『人生を変える勇気』(中公新書ラクレ)、『幸福の哲学』(講談社現代新書)、『愛とためらいの哲学』(PHP新書)、『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)、『プラトン ソクラテスの弁明』(角川選書)など多数。

    本をどう読むか
    著者:岸見一郎
    発売日:2019年02月
    発行所:ポプラ社
    価格:864円(税込)
    ISBNコード:9784591162330

     

    理論ではなく、岸見一郎の「人となり」を知ることができる一冊

    ―― 『本をどう読むか』は幼い頃から学生時代、現在に至るまでの岸見さんの読書歴とエピソードを交えながら、「本を読むとはどういうことか」「どんなふうに本を読んできたか」について6つの切り口で書かれた一冊です。この本の執筆は、ご自身のこれまでを振り返って、丁寧に組み立て直すという作業だったと思うのですが……。

    そうですね。ただ、僕は本をたくさん書いてきましたけれど、そのなかでこの本はかなり短時間のうちに書き上げました。大まかな内容や章立ても、編集担当の方から「読書をテーマに本を書きませんか」とお話をいただいて、最初の打ち合わせをしたときからほとんど変わっていません。

    思いつくところから書き始めて、そこから「そういえばこんなことがあった」「あんな体験もあったな」というふうに繋がっていきました。僕は、わりあい子どもの頃のことなんかもよく覚えているのですよ。

    ―― 読み口はエッセイのようでありながら、読み応えは自叙伝といった感じでした。かなり網羅的な内容なので、インタビューで何をお聞きしようか困ったくらいです(笑)。

    『本をどう読むか』というタイトルですけれど、確かに僕の自叙伝のような感じですね。本を軸に書かれたものではあるのですが、僕のことをあまりよく知らない人にも「岸見一郎ってこんな人生を送ってきたんだ」と思ってもらえるような内容になっています。

    ―― 先ほど編集担当の方から伺ったんですが、読書論の本をかねてから書きたいなと思っていらっしゃったそうですね。

    読書論は、若いときからたくさん読んできましたから。でも、まさかこういう機会が自分にやってくるとは思いませんでした。

    清水幾太郎先生の著書に『本はどう読むか』という読書論の本があるのですが、若い頃に読んで、この本からは非常に影響を受けています。今回、読書論の本を出すにあたって、最初はタイトルに「哲学」とか「幸せ」という言葉を入れようかなとも考えていたのですけれど、最終的に『本をどう読むか』というタイトルがしっくりきて、これに落ち着きました。

    本はどう読むか
    著者:清水幾太郎
    発売日:1984年12月
    発行所:講談社
    価格:821円(税込)
    ISBNコード:9784061156975



    本を読むことは、生きることと同じ

    ―― 「本を読むこと全体」と「読書論を読むこと」は、似ているようでちょっと違うなと思っているんですが、いかがですか?

    読書は著者の意見を聞き、対話することですが、読書論を読む楽しさは、“本を読む喜び”を著者と共有することの楽しさです。僕は本が好きで、もちろん読書論の著者も本が好き。「本を読むのって楽しいよね」という喜びを共有する楽しみがあるなと思っています。

    とはいえ、そういう楽しみ方をするようになったのは最近の話で、若い頃は「読書の方向づけ」をするようなものとして読書論を読んでいました。たとえば加藤周一の『読書術』は繰り返し何度も読みましたし、今もそういう本だと思っていますけれど、やがて僕自身が本を書くようになって、学生の頃よりも本を読むようになると、読書論との向き合い方は「著者と対等な立場で楽しむもの」に変わっていきました。

    読書術
    著者:加藤周一
    発売日:2000年11月
    発行所:岩波書店
    価格:1,080円(税込)
    ISBNコード:9784006030247

    ―― 一方で世の中には、「速くたくさん読むにはどうすればいいか」「どう読めば身につくか」「難しそうな本をいかに乗りこなすか」というテクニックを解説する本のほうが多いような気がします。

    「年に何百冊読んだ」と言う方も多いですけど、僕にはそういう読書は無理です。それは、若い頃から原語で読むことを習わしにしていたからでしょうね。翻訳で読んでいたらもっとたくさん読めていたかもしれないですが、原語で読むとなるとまず一つひとつ単語を辞書で引いて読み進めることになるので、最初は読書というより“解読”といっていいくらいです。そういう作業をしてきたので、何冊読めるかというところへのこだわりはないし、本をたくさん読まなければいけないとも思っていません。

    むしろ、すぐれた本を時間をかけて読むのが読書の醍醐味だと思っています。これは生き方そのものにも関わることですけど、私がしてきたのは、経済性、対費用効果、効率、生産性……そういうものとは真逆の読書です。今の世の中はとかく効率が重視されますが、「読書量は多くないし速読もできない、名著といわれる本だって読んでいない。でも、本を読むことは楽しい」と思っている人が、この『本をどう読むか』を読んで、「これでよかったんだ」と思えるような本にしたかったのです。

    ―― “こうでなければならない”から解放される、“これでいいんだ”という肯定によって救われるという点は『嫌われる勇気』に通じますね。本の立ち位置としても似ている気がします。『嫌われる勇気』はアドラーの考え方を読みやすく紹介することでアドラー心理学に触れる人が増えて、結果的に楽になれた人が多かった。

    『本をどう読むか』についても、読書に対する敷居をなるべく低くしたいと思って書きました。読書って、大変でしょ。映像や音は、まず受け取るだけで「美しい」「癒される」と感じることができるけれど、読書はそもそも能動的な行為ですからね。それを「読みなさい」と強制されたり、読んだら読んだで感想文をまとめさせられたりするから、いよいよ読書が嫌いになってしまうのです。

    受験や資格といった勉強のための読書もありますが、それとはまったく違う読書もあっていい、どんな本であれ読んでいるときは“楽しい読書”でいいではないかというのが、この本で伝えたかったことです。「そういう読書でいいなら読んでみようかな」と思ってくれる人がいれば、この本の狙いは達成されたことになるでしょう。

    ―― わが身を振り返ってみても、「読書量が少ない」とか「良書・名著とされている本をいいと思えなかった」「読み切れなかった」「理解できなかった」ということ対して「だから私はだめなんだ」と思っていたことがあります。

    まず、“よい読書”をしようと思わないことです。“実りのある読書”じゃなくていいのです。今までそれを読書の目的にしてきた方には、そういうところから離れた読書体験をぜひしてみてほしいなと思います。

    人からすすめられたり与えられたりしたものではなく、できるだけ自分で選んで、そのなかできっと、寝食を忘れて読みふけってしまうような本と出合う。それこそが生きる喜びだと僕は思います。大人たちが“くだらない”と言うような本であっても、「こんなおもしろい本があるんだ」ということを、できるだけ若いうちにぜひ体験してほしい。だから「こういう分野の本を読んでみたいな」と思ったときの“初めての一冊”は良書じゃなくてもいいし、その後の読書にも失敗があっていいと思うのです。課題図書のリストなんかから、選ぶ必要はありません。

    ―― 「失敗してはいけない」「損したくない」という気持ちが「そもそも行為自体をしない」という姿勢に繋がってしまうのは、読書だけにあてはまるものではなさそうです。

    僕は、本を読むことと生き方は、基本的に同じだと思っています。

    生き方を大きく変えることは難しいけれど、本の読み方を変えることはできるでしょう? つまり本の読み方を変えることが、自分の生き方を変えるきっかけになるというわけです。

    後編に続く
    (本を読むことは“幸せ”か? 岸見一郎さんに聞く、読書と生きること)




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