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史上初の“平成生まれ”の直木賞作家として脚光を浴びた、朝井リョウさん。SNSと人間関係に翻弄される就活生をリアルに描いた直木賞受賞作『何者』をはじめ、鋭い目線で現代を切り取る作風が人気を博しています。
3月8日(金)に発売される最新作『死にがいを求めて生きているの』は、4月に終わりを迎える「平成」がテーマの物語です。
植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは? 毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、 目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる。
本作は、章ごとに異なる人物の視点で物語が進んでいく構成になっています。
その人物とは、植物状態となった智也の看護師である「友里子」、智也と雄介の小学校に転校してきた「一洋」、中学時代の智也に淡い恋心を抱いていた同級生の「亜矢奈」、大学時代にふとしたきっかけで雄介と知り合いになった「与志樹」の4人。
周りから「なぜ仲がいいの?」と言われるほど、性格が正反対である智也と雄介の“関係性の秘密”が、それぞれの人物との関わりから少しずつ明らかになっていきます。
本作で重要なのは、智也と雄介の相反する考え方。そこには“競争社会の是非”や“没個性の風潮”といった、平成を象徴する議論が大きく関わっています。
例えば、雄介が「テストの順位付けや運動会の競技廃止」に強く反発する一方で、智也は順位付けが廃止されることにほっとする描写はとても印象的です。
さらには「自身の存在意義や人生の生きがい」を強く求める雄介とは対照的に、智也は「そんなものはなくても自分の人生は歩んでいける」と考えています。全く異なる考えを抱く2人の関係性は、どのようなものだったのでしょうか。
タイトルにもある「死にがい」も、本作において重要なワードのひとつ。「平成」という時代を見つめ直すきっかけになる作品です。