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思春期の葛藤を描いた作品が、幅広い年齢層から支持されている辻村深月さん。悩みを抱える少年少女を描いた『かがみの孤城』は、2018年の本屋大賞を受賞しました。
3月5日(火)に発売された最新作『傲慢と善良』は、「婚活」をテーマに描く恋愛小説です。
婚活で知り合った38歳の架と35歳の真実。婚約もし、幸せいっぱいに見えた二人ですが、突然真実が失踪してしまいます。
彼女は、郷里・群馬にいたころに婚活で知り合った相手からストーカー被害を受けていました。架は、失踪の鍵を握るストーカーを探しに、群馬へと向かいます。
今まで知らなかった彼女の「過去」と向き合っていくなかで、明らかになっていく”真実”とは一体……。
本作は「結婚」が大きなテーマとなっており、タイトルの『傲慢と善良』は、ジェーン・オースティンの有名な小説『高慢と偏見』とかけられていることがポイント。
18世紀の結婚がうまくいかなかった理由を「高慢(プライド)と偏見」であるといったオースティンに対して、本作では「傲慢と善良さ」にあるといいます。
傲慢はまだしも、良い印象である「善良さ」がなぜ、結婚を阻んでしまうのでしょうか。作中に出てくる結婚相談所の小野里がこのように言う台詞があります。
善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、“自分がない”ということになってしまう。
(本書 p.110)
自分はそんなことはない、と思う方もいるかもしれません。ですが、振り返ってみて、進学を、就職を、恋愛を、すべて自分だけで判断してきたと言い切れるでしょうか。親の期待や常識に囚われていた部分が、多少はあるのではないでしょうか。
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」という、ゼクシイのコピーが共感を呼んだことも記憶に新しいですが、「高慢と偏見」が描かれた18世紀とは違い、私たちが生きている現代は、結婚することも子供を産むことも自由に選ぶことができます。
ですが、自由に選べるからこそ、傲慢と善良さゆえに、私たちは迷い、選ぶことができなくなっているのかもしれません。「婚活」を通して、現代の息苦しさや痛みを描く本作は、多くの大人の共感できる圧倒的“恋愛”小説です。
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・「映画ドラえもん のび太の月面探査記」辻村深月による完全書き下ろしの小説版が来年2月に発売
・辻村深月『噛みあわない会話と、ある過去について』は、共感度100%の短篇集!