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名古屋在住。『グッモーエビアン!』『ミドリのミ』など名古屋が舞台の小説も発表している。「でも名古屋のこと、そんなに好きじゃなかったんだけど(笑)。これを書いて、今はちょっと好きになりました」という『名古屋16話』。名古屋市16区と近郊の8都市を舞台にしたショートストーリー集である。収められているのは、テーマも味わいも実に多彩な、悲喜こもごもの物語。地元の人にとって楽しいご当地本であるのはもちろん、名古屋にゆかりのない人でも、お気に入りの一編にきっと出会える、チャーミングな本だ。
第11話「とある書店の一日」は、一冊の本の視点で語られる、優しく温かい物語。吉川トリコさんお気に入りの書店の一つ、瑞穂区にある七五書店がモデルになっている。「一見すると普通の“町の本屋さん”なのに、置いている本のラインアップがおもしろくて、個性的なお店です」。本日の書斎は、同店に併設されたカフェ、まほろば珈琲館。マスターが淹れた香り高い珈琲を傍らに、キーボードをセットアップしたタブレットに向かう。
『名古屋16話』には私小説かと思わせるような作品もしばしば出てくる。「中日新聞のウェブサイト〈中日新聞ほっとWeb〉で月1回の連載。軽い気持ちで始めたけど、毎回違う話を書くのは大変で。ネタに困るあまり、自分を切り売りするしかなくなってしまったんです。生まれ育った静岡や第二の故郷ともいえる岐阜、それらの土地の思い出と自分のことがまるっと生で出ちゃった、みたいな(笑)。自分にとっては特別な一冊。いろいろなタイプの話が入っているから、私の名刺代わりの本にもなるかな」
『名古屋16話』で「ジロさん」として描かれている「ゴロウさん」こと熊谷隆章店長。「彼が主催する名古屋書店員懇親会によく参加している関わりもあって、モデルになってもらいました」。穏やかなたたずまいが、まさに小説そのまま!
吉川トリコ Toriko Yoshikawa
1977年、静岡県浜松市生まれ。以後、愛知県に移住。名古屋市在住。2004年「ねむりひめ」で第3回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞・読者賞をダブル受賞。受賞作を含む『しゃぼん』でデビュー。その他の著書に『グッモーエビアン!』『夢見るころはすぎない』『なにもいらない』『少女病』『うたかたの彼』『ぶらりぶらこの恋』『ミドリのミ』などがある。
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●あわせて読みたい:『名古屋16話』の「瑞穂区の書店」のモデルはここ。作家からも町の人々からも愛される「七五書店」
(「新刊展望」2016年2月号「創作の現場」より転載)