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  • 「バカ」がつくほどの犬好きが集まった編集部の奮闘記──片野ゆか著『平成犬バカ編集部』インタビュー

    2019年01月27日
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    集英社「青春と読書」2018年12月号より転載
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    批判も炎上も 閉塞感に風穴をあけてくれる「Shi-Ba」の魅力

    ──今回の本の主な舞台は、平成13(2001)年に創刊された初めての日本犬専門誌「Shi-Ba」(シーバ)ですが、この雑誌に焦点を当てようというのは、どんなところから?

    私はものを書き始めてから、もっぱら犬のことを中心に書いてきたのですが、そのなかで多くの方たちと巡り合い、そのお付き合いを通していろいろなことを知ることができました。そうするあいだにも犬たちを取り巻く環境が変化しているのを目の当たりにして、それを現代史として書き留めておきたいという気持ちがあったんです。

    でも、それだけを追っていたらお勉強チックになって、おもしろくないですよね。ならば、ちょっとバカがつくほどの犬好きの人の経験をたどっていくうちに、いつの間にか平成の犬事情がまるっとわかってしまう、そんな本にしたいなと思ったんです。

    もうひとつ、犬ライフのほんとうの魅力というのは、笑いだと思うんですね。毎日の暮らしのなかで、そんなにゲラゲラ笑うことってないじゃないですか。でも、犬と一緒にいると、ほぼほぼテンション高くて毎日笑っている。それはほとんどの飼い主さんが体験していることだと思うんですけど、それほど意識はしていない。ですから、犬といることで得られる笑いとかユーモアとかおおらかさというのは、いかに幸せなことで、貴重なことかというのをなんとかうまく伝えたいと思ったんです。

    そこで思い浮かんだのが「Shi-Ba」の編集長の井上祐彦(まさひこ)さんでした。この稀代の「犬バカ」を主人公にすれば、おもしろいかたちで書くことができるのではないかと。

    ──井上編集長はもちろんのこと、犬の肛門をアップした写真の特集を組むなど、破天荒な雑誌で、スタッフの方たちも編集長に劣らず立派な「犬バカ」ですね。

    創刊号では編集長の愛犬、柴犬の福太郎が唐草模様のバンダナを巻いている写真が表紙になっていますけど、当時はまだ犬に服を着せることを批判する雰囲気が強かったんです。でも、そうした批判を恐れないのが「Shi-Ba」の魅力のひとつです。この本の構想を練り始めたのは2、3年前なんですが、その頃から、社会全体にいいしれない閉塞感を感じるようになった。これをいったら誰かに突っ込まれるとか、こんなふうにいったら誤解されるとか。ネットの影響もあって、言葉ひとつ出すのも非常に神経質になってしまう。

    「Shi-Ba」には、そうした閉塞感に風穴をあける姿勢があって、そこに深く共感しました。

    ──創刊10周年の記念号では、ヌード写真やお笑い芸などをオマージュした「袋とじ」を企画して、編集部のサイトが炎上していますね。

    「こんなのを見て笑える神経が理解できない」とか「柴犬好きの俺に謝れ」といった批判的な書き込みがネットにあふれて炎上しましたが、長年の読者はこの雑誌の独特のユーモアをよくわかっていて、ちゃんと火消し役になってくれました。

    あの企画に限らず他の犬雑誌では絶対にできない特集が多いのが「Shi-Ba」の特徴です。一部の人から「え! これ何? けしからん」といわれても、編集長をはじめスタッフの方たちはほんとうに犬を大事に思って企画を考えています。むしろ深く犬を理解している人なら絶対に受け入れられるはず、と読者を信じているんです。だから動じない。そういう根っこの強さや気骨ある姿勢は非常に尊敬できますね。

    まあ、もともとは編集長が自分の犬を表紙にしたいという、完全に個人の欲望爆発なんですけど(笑)、そういう犬バカの欲望に忠実だったからこそ、雑誌もこれだけ長く続いているんだろうと思います。

    Shi‐Ba (シーバ) 2019年 01月号
    著者:
    発売日:2018年11月29日
    発行所:辰巳出版
    価格:996円(税込)
    JANコード:4910144550193



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