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  • 「バカ」がつくほどの犬好きが集まった編集部の奮闘記──片野ゆか著『平成犬バカ編集部』インタビュー

    2019年01月27日
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    集英社「青春と読書」2018年12月号より転載
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    動物にも個別の意識がある

    ──平成になってからの変化がいろいろと書かれていますが、柴犬の顔が丸くなってきたというのには驚きました。

    特に純血種の場合は、プロによるブリーディングの影響力が大きくて、顔形や体形が時代によって変わることがあります。本来の柴犬は、耳がピンとして顔も三角という感じでしたが、いまは丸いほうが親しみが湧くということで、そちらのほうが好まれる。同時に性格や気質も丸くなっています。

    飼い主自身は、うちの子はかわいいと思っていても、他人からは顔や態度がキツそうだと怖がられてしまうという悩みがけっこうあったんです。時代のニーズに応じて、親しみやすい顔に変化していったのだと思います。

    ──犬と一緒に旅行へ行くというのも、平成になってからの新しいスタイルだそうですね。

    自動車に犬を乗せるというのはよくありましたが、泊まりがけで出かけるという発想は昭和にはなかったですね。まず、犬が泊まれるところがなかった。いまは犬連れの宿泊客を受け入れるペンションや旅館も増えています。やはり家で留守番をさせているより、一緒に行ったほうが何倍も楽しいですからね、ほんとうに。

    ──飼い犬の避妊去勢手術も、平成12(2000)年頃から広まり始めた。

    平成の中期以前までは、獣医さんでも手術をやる方はあまりいなかったと思います。なぜかというと、当時は、獣医師のあいだでも手術した場合のメリットとデメリットの判断基準について意見が割れていたんです。もちろん、育てられない子犬が生まれてしまうのは、その子たちにとってかわいそうだという愛護寄りの考え方の獣医さんもいましたが、その頃は少数派でした。

    現在では、生後1年未満で避妊去勢手術をすると、乳がんの発生率が何パーセント抑えられるとか、病気予防やストレス緩和につながる医学的なデータがそろっていて、獣医師会でも手術を推奨しています。

    飼い主も、無責任な出産をさせないとか、病気のリスクについて考える人が多くなった。特にメスの場合は乳腺腫瘍や子宮がんなどになる確率が高く、死亡原因の上位にもなっています。そういうこともあって手術が当たり前になってきました。

    ──飼い主自身も積極的に情報を得ているわけですね。

    インターネットの普及によって、いろいろな情報を短時間で得られるようになったのは、すごく大きいと思いますね。今、譲渡会とか地域猫の保護の話などが多くの人に知られるようになりましたが、インターネットがなかったら、動物への意識はこれほど劇的に変わらなかったはずです。

    たとえば子犬を5頭保護して、飼い主を見つけたい、というとき。昭和の時代だったら、ご近所を回るとかポスターを貼るぐらいしかなかったじゃないですか。それが平成12年を過ぎたあたりから、インターネットで情報発信をすれば、犬を飼いたいと思っている人とつながることができるようになった。寄附金を集めたり、医療費の支援を呼びかけたり、ネットワークづくりが簡単になりました。

    ──その他、フィラリア予防薬の開発などによって寿命が大幅に延び、しつけもそれまでの“飴と鞭”ならぬ“鞭と鞭”のトレーニングから“ほめてしつける”トレーニング方法に変わるなど、犬にとっては良い変化が起きていますね。

    昭和のときだって、犬好きは犬好きでほんとうにかわいがってはいたのですが、動物にも個別の意識があると考える人はごく一部でした。それが、動物の身になって動物のことを考えなければいけないと、ようやく多くの人々が気づいたわけです。

    ただし人間には福祉がありますけど、動物にも福祉が必要だという概念を理解している人はいまだに少数だと思います。動物愛護法のなかでも、愛護という言葉はあっても福祉という言葉はまだありません。そういうことも含めて、動物に対する意識は今後も変わる必要があると思います。



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