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12月21日(金)に発売された『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』は、哲学者の千葉雅也さん、AV監督の二村ヒトシさん、現代美術家の柴田英里さんの、ありそうでなかった顔合わせによる鼎談集。
ポルノ表現や、LGBTへの社会的容認の進展、#MeTooをはじめとするフェミニズムの問題など、現代社会におけるさまざまなマイノリティの課題を取り上げている本書。アイデンティティに大きくかかわる「性」の観点から、他者を肯定し、主体的に生きるということについて掘り下げています。
数度のディスカッションを経て誕生した一冊ですが、三者三様の語り手による議論は、とても刺激的なものだったようです。そんな鼎談の様子と本書の魅力について、編集を担当したKADOKAWAの麻田江里子さんに文章を寄せていただきました。
「偏見をなくそう」「セクハラ撲滅」……ここ数年、だれかが「正しさ」を叫ぶのを聞くたびに、何かが心にひっかかるのを感じていました。
差別も偏見もなくなって、誰も不当に扱われることがない世の中になったらすごいと思います。ただ、「正しいこと」を訴える声が大きくなっていく中で、なにか本質的で大事なことが見えづらくなってしまっているような気がしていたんです。その大事なことが一体何なのか、私にはかいもくわかりませんでした。
そんなモヤモヤを晴らし、蒙をひらいてくれたのがこの鼎談でした。
「欲望」は、生き方についての大きなキーワードとして立ち現れます。千葉さんが「序」で書いています。
欲望とは、積極性です。積極性とは、言い換えれば「肯定」です。欲望とは、肯定することです。肯定的生、肯定的性。それはしかし、逆説的に思えるかもしれませんが、何らかの「否定性」としぶとく付き合い続けることを含意しているのです。
3人の語り手のバランスもすばらしいです。
柴田さんは表現者・論者の立場から、問題を提起し、考えを語ります。二村さんはAV監督として現場の感覚を語り、2人に鋭い質問を投げかけます。千葉さんは哲学者としてアカデミックな視点で、議論を深め、論点を整理し、話を前へ進めていきます。互いが互いに影響を及ぼしながら、自由にダイナミックに話が展開されました。
鼎談の収録中や、本文原稿を読んだとき、千葉さんから届いた「序」を読んだときなど、この本の編集中、何度も、世界が整理されていき、見えなかったものが見えてくる感覚を味わい「すごいすごい」と大感激しました。
脳が刺激されて心臓がドクドク波打つこの興奮を、読者のみなさんにも味わっていただけたらうれしいです。
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KADOKAWA文芸局 学芸ノンフィクション編集部 麻田江里子
【目次】
序
第1章 傷つきという快楽
第2章 あらゆる人間は変態である
第3章 普通のセックスって何ですか?
第4章 失われた身体を求めて
終章 魂の強さということ