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  • 1月1日で生誕100周年!サリンジャーを読むための「3つのキーワード」

    2018年12月21日
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    サリンジャー初心者のための「3つのキーワード」

    来る2019年1月1日、アメリカの伝説的作家 J.D.サリンジャーが生誕100周年を迎えます。

    1950年代、彼が30代の頃にもっとも活躍し、2010年1月27日に亡くなったサリンジャー。

    生誕100周年を迎えるにあたって2本の映画が制作され、今年10月には高校生の男の子がサリンジャー探しの旅に出る「ライ麦畑で出会ったら」が公開。そして2019年1月18日(金)には、サリンジャーの人生を映画化した「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」が公開されます。

    “青春小説の金字塔”として世界中で愛読されているサリンジャーの作品ですが、実はまだ1冊も読んだことがないという方も多いのではないでしょうか。

    今回はいま初めてサリンジャーに触れる方へ向けて、彼の小説を読むための「3つのキーワード」を示しつつ、それに紐づく作品をあらすじとともにご紹介します。

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    【1】表現内容と表現方法の一致

    「サリンジャーの代表作は?」と聞かれて真っ先に挙がるのは、やはり『The Catcher in the Rye』でしょう。

    日本で初めて翻訳された際には『危険な年齢』(橋本福夫訳)、続いて『ライ麦畑でつかまえて』(野崎孝訳)、そして村上春樹さんによって『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と訳され、現在は野崎孝訳・村上春樹訳の2冊が主に書店店頭に並んでいます。

    世界で累計6,500万部、現在も毎年25万部売れているという本作の特徴が、1つ目のキーワード「表現内容と表現方法の一致」です。

    まずはあらすじを見てみましょう。

    主人公は、ペンシルヴァニアの高校に下宿しながら通う、ニューヨーク出身の16歳の少年「ホールデン・コールフィールド」。語り手は“17歳になったホールデン”で、物語は彼が1年前のクリスマスの頃を振り返るという形式で展開されていきます。

    成績不振のため、退学処分を言い渡されたホールデン。ルームメイトとも喧嘩して寮を飛び出し、故郷のニューヨークに戻るもさまざまな“気の滅入る出来事”に遭遇。気分が落ち込んだ彼は一度実家に戻り、そこで妹のフィービーに再会します。

    そして彼女との会話の末、自分がなりたいのは「ライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、崖から落ちそうになったときに捕まえてあげる人(=ライ麦畑のキャッチャー)」のようなものだと言うのです。

    それから彼は高校の恩師にも会うもののすぐに別れ、再びフィービーに会います。そして彼女の無邪気な姿に心を打たれたところで、物語は幕を閉じます。

    本作は一口にいうと「ホールデンの身に起きた一連の出来事を通して“社会の欺瞞”への反発を描いたもの」といえるでしょう。しかし本作が“青春小説”と呼ばれるのには、もう一つの特徴が作用しています。

    それは「ホールデンから“you”に対して語りかける形」を取っていることです。

    そのため(この“you”をどう捉えるか、どこまで具体的に訳出するかは訳者によって判断の分かれるところですが)、文体がきわめて口語的で、読者は小説を読んでいるというよりも「友人のおしゃべりを耳で聞いている」ような感覚を味わうことになります。

    たとえば……

    ※村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』より

    こいつはきわめつけの大嘘だった。というのはうちのおばあちゃんときたら、マチネーとかそういうのをべつにしたら、家の外にだってろくに出やしないんだから。でもいずれにせよ僕は、どんなに切羽詰まろうと、たとえ世界中のお金をくれると言われたって、モロウみたいなカス野郎のうちになんて行くわけないんだよ。断じて。

    今の文学的位置づけからは考えられないことですが、アメリカ本国ではこの本が出版されたのち、ホールデンのこうした態度や言葉づかいが問題視され、なかば有害図書のような扱いを受けたこともあったようです。

    ですが、この語り口、文体こそが本作の魅力でありコア。村上春樹さんは、翻訳家・柴田元幸さんとの対談で次のように表現しています。

    『キャッチャー』という作品について僕がもっとも深く感心するのは、表現された内容と表現の方法とが、ほとんど等価に、それでいてそれぞれに個別的な動き方をしているということです。とにかくこの小説では、表現内容に劣らず、文体というものが大事です。文体が生きて動いているということが、その自発的な流動性こそが、何よりも大事な要素なんです。

    (『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』より引用)

    難しい説明だと思うかもしれませんが、読んでみれば一目瞭然。

    また“若者の言葉づかい”というのは、時代によって変化するものです。ぜひ村上春樹訳と野崎孝訳、両方を読み比べてみてください。

    ライ麦畑でつかまえて
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 野崎孝
    発売日:1984年05月
    発行所:白水社
    価格:968円(税込)
    ISBNコード:9784560070512
    キャッチャー・イン・ザ・ライ ペーパーバック・エディション
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 村上春樹
    発売日:2006年03月
    発行所:白水社
    価格:968円(税込)
    ISBNコード:9784560090008

     

    【2】グラース家

    サリンジャー作品を語るにあたり、「グラース家」に触れないでいることはできません。

    グラース家は、サリンジャーのさまざまな作品に登場する架空の一家。両親と5男2女の子どもたち、総勢9名の大家族で、皆高い知性を持ち、会話や手紙のやり取りがウィットに富んでいるのが特徴です。

    まずは『ナイン・ストーリーズ』を題材に紹介しましょう。

    ナイン・ストーリーズ
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 柴田元幸
    発売日:2012年07月
    発行所:ヴィレッジブックス
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784863323957

    『ナイン・ストーリーズ』はタイトルのとおり、9編の物語をおさめた短編集です。第1編「バナナフィッシュにうってつけの日」は、ある意味でこの短編集における最重要作。というのも、サリンジャーが作家として注目されるきっかけとなった作品であると同時に、一連の“グラース家物語”の始まりとなる作品だからです。

    「バナナフィッシュにうってつけの日」は、グラース家の長男であるシーモア・グラースが、ある日宿泊したホテルで幼い女の子と「バナナフィッシュ」という架空の魚について会話を交わしたのち、部屋へ戻り、眠っている妻の姿を見つめながら拳銃自殺するという衝撃的なもの。

    しかし家族の中心的存在だった彼は、グラース家を描くのちの作品でもたびたび言及されることになります。この“不在の在”が、サリンジャーの小説にえもいわれぬ味わいと奥行きをもたらしているのです。

    グラース家の物語では、“ライ麦”にならぶもう一つの代表作とされる『フラニーとズーイ』、そして『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア ―序章―』も押さえておきたいところです。

    『フラニーとズーイ』は、次女で末っ子の女子大生フラニーと、五男の俳優ズーイをめぐる物語。

    エゴイズムと俗物根性にまみれた世界に嫌気がさし、殻に閉じこもって宗教的な祈りと救いを求めるフラニーと、彼女を救い出そうとする兄のズーイ。たびたび脱線しながらユーモアと隠喩たっぷりに展開される2人の会話の応酬には、青春の煩悶といらだちが鮮やかに立ち現れており、“若さゆえの傷つきやすさ”について深く考えさせられます。

    フラニーとズーイ
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 村上春樹
    発売日:2014年03月
    発行所:新潮社
    価格:693円(税込)
    ISBNコード:9784102057049

    『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア ―序章―』は連作2編をひとつにまとめたもので、いずれも次男バディの視点から書かれています。

    特に注目すべきは「シーモア ―序章―」。「バナナフィッシュにうってつけの日」の最後のシーンで、幸せの絶頂にいたはずのシーモアはなぜ自殺しなければならなかったのか。

    今は亡きシーモアへの愛情と崇拝を再確認しながら、語り手であるバディは彼の精神世界を探り、自死の真相を解き明かそうとします。しかしバディの綴る言葉は、次第に迷宮へ迷い込むように本筋を見失い──。

    あちこちに飛び回るバディの雑然とした思考がそのまま文章になっており、読みやすいとは決していえませんが、興味深い意欲作であることは間違いありません。

    大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモアー序章ー 改版
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 野崎孝 井上謙治
    発売日:2004年06月
    発行所:新潮社
    価格:649円(税込)
    ISBNコード:9784102057032

     

    【3】本にならなかった作品たち

    サリンジャーの生前に本として出版されたのは、これまで紹介した『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『ナイン・ストーリーズ』『フラニーとズーイ』『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア ―序章―』の4冊だけ。

    しかし「雑誌に掲載されたものの本になっていなかった作品」は、もっとたくさんありました。

    最後に紹介するのは『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』。収録されている9編は、いずれも生前本になっていない作品です。

    このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年
    著者:ジェローム・デーヴィド・サリンジャー 金原瑞人
    発売日:2018年06月
    発行所:新潮社
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784105910068

    その内訳は、ホールデン・コールフィールドに関連する短編が6作、ホールデンともグラース家とも関係のない短編が2つ、そしてサリンジャーが最後に発表した中編小説「ハプワース16、1924年」。「ハプワース」はグラース家を描いた最後の1編で、「バナナフィッシュにうってつけの日」で自殺したシーモア・グラースが7歳のとき、“夏のキャンプ教室で家族へ宛てて書いた手紙”という形がとられています。

    ストーリー性らしいものがほぼ見いだせず、古今東西の作家や著作に対する賛辞・批判、性や処女性に関する考察、宗教にまつわる話題、前世をめぐる洞察など、およそ7歳とは思えない知的な関心ごとが種々雑多に書き連ねられた“手紙”。

    読者や批評家からの評価は端的にいってよくなく、またほかの作品と比べても非常にとっつきにくい内容ではあるのですが、シーモアの複雑な内面的本質を捉えるには無視できない作品です。

     

    サリンジャーと、彼の作品を真に理解するために

    今回取り上げた5冊が、現在日本で本として手に入れられるサリンジャーの作品のすべてです。

    ここであらためて気に留めておきたいのが、なぜサリンジャーを語るうえで「ホールデン少年」と「グラース家の人々」が外せないのかということ。

    特に“ライ麦”に関しては、ジョン・レノンを路上で射殺したマーク・チャップマンをはじめ、有名人を射殺・射撃した犯人が愛読していたというネガティブなトピックでも注目を集めるところとなりましたが、これだけ若い世代からの熱狂的な支持を得たのには、「ホールデンは自分だ」という強い認識が根底にあったからだと思います。

    サリンジャー自身にとって、ホールデンやグラース家はどんな存在だったのでしょうか?

    2019年1月18日(金)公開の映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」では、彼の人生を通してそんなテーマも描き出されています。

    サリンジャー作品を読み解く手がかりとしても、ぜひ一度鑑賞してみてください。

     

    映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」

    出演:ニコラス・ホルト、ケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、ホープ・デイヴィス、サラ・ポールソン

    監督・脚本:ダニー・ストロング
    製作:ブルース・コーエン(「アメリカン・ビューティー」「世界にひとつのプレイブック」)、モリー・スミス(「ラ・ラ・ランド」)

    原作:『サリンジャー 生涯91年の真実』(晶文社)

    提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
    配給:ファントム・フィルム

    2019年1月18日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

    rebelintherye-movie.com

    © 2016 REBEL MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

    (109分/アメリカ/カラー/2017年/英語) 原題:REBEL IN THE RYE

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    【応募期間】2018年12月21日(金)~2019年1月7日(月)23:59

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    サリンジャー
    著者:ケネス・スラウェンスキー 田中啓史
    発売日:2013年08月
    発行所:晶文社
    価格:5,060円(税込)
    ISBNコード:9784794969088


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