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直木賞作家・白石一文さんの小説『火口のふたり』が柄本佑さん・瀧内公美さん出演で映画化され、2019年に公開されることが明らかになりました。
白石さんの小説が映画化されるのは今作が初めてで、出演者は柄本さん・瀧内さんの2名のみ。
メガホンを取るのは「赫い髪の女」「キャバレー日記」といった日活ロマンポルノの傑作において脚本を手がけ、「Wの悲劇」「共喰い」などでキネマ旬報脚本賞史上最多となる5度受賞している荒井晴彦さん。
映画監督としては「身も心も」「この国の空」に続く3作目で、自ら脚本もつとめます。
本書の主人公、直子と賢治はいとこ同士。若い頃に忘我の性に溺れた幸運を持っている。その二人が、十数年ぶりに再会し、かつての愛欲をよみがえらせる。
描こうとつとめたのはセックスそのものである。
男女は生殖のために交わるのではない。埋めなくてもいい隙間を埋めるために交わる。
そこに人間ならではの葛藤と絶望、光が生まれる。深々とした性は味わうもよし、その深さを想像するだけでも心をみずみずしくする。
この小説を読んだ方々が、意識の中で、ほんのいっときでも直子と賢治のような「火口のふたり」になってくれれば、それでいい。(河出書房新社公式サイト『火口のふたり』【著者のことば――刊行によせて】より)
『火口のふたり』は、東日本大震災から7年目の夏、結婚式に出席するため故郷の秋田を訪れた男と、新婦の女を描く物語。
男は、離婚、退職、再就職後も会社が倒産し、何もかもを失った「永原賢治」。旧知の仲である「佐藤直子」の結婚式のため帰省し、久しぶりの再会を果たしますが、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という直子の言葉をきっかけに再び身体を重ねてしまいます。
一度だけと誓ったはずが、なつかしい感覚と理性との狭間で翻弄され出口を見失っていく2人。
噴火する火口のように燃え上がる愛、そしてそれに身を委ねて深みにはまっていく危うい関係を描き出した本作は、2012年の刊行当時も大きな反響を呼びました。
今回の映画化決定に当たり、荒井晴彦さん・白石一文さん・柄本佑さん・瀧内公美さん4名のコメントが公表されました。
この映画で描かれようとしているものの手がかりがつかめる内容となっています。
荒井晴彦監督
2006年に西馬音内盆踊りを見たのが、スタートだったかもしれない。あきた十文字映画祭が映画教室をやるというので、シナリオ指導で十文字町に来ていた。映画祭は2月なので、夏の秋田は初めてだった。雪の無い秋田はなんかスカスカしている気がした。雪が無けりゃ何も無いとでも言ったのだろうか、映画祭の吉村美貴子に、相米慎二監督が三日間観た西馬音内盆踊りというのがあるんですよ、見ますかと言われた。毎年8月16、17、18日に開催される盆踊りの2日前に、NHKの盆踊りの特集で観た相米に言われて田辺マネージャーが宿の手配で電話してきたという。2日前では宿はある筈も無く、吉村が奔走して、2晩は確保したが1晩は吉村の家に泊めたという。相米は「来年は俺も踊ろうかな……」と言い残して帰ったそうだが、その来年、2001年、相米は、2月の映画祭(露天風呂で降りかかる雪が相米の頭で溶けていた)のあと、入院、9・11の二日前に死んでしまう。西馬音内盆踊りを観た。黒い布に目穴が開いた彦三(ひこさ)頭巾と深くかぶった編み笠で踊り手の顔は隠れている。男か女かも分からない。くるっと回転する時の草履が道をこする音がいい。亡者踊りともいわれてるように、死とエロスが匂い立ってくる。相米が三日間観ていたというのが分かる気がした。いつかこの盆踊りと男と女を絡めた映画を作りたいと思った。
東日本大震災と原発事故の翌年、白石一文の「火口のふたり」が刊行される。津波の翌年に××が××する話をよく書くなあと感心した。意表をつくカタストロフィーだが、まだ、あれから2年もたっていない時だ、あるかもと思わせられた。白石さんに原作をもらいに行った時、福岡を秋田に変えていいですかとお願いした。白石さんはアライさんじゃ仕方が無いですねと言ってくれた。その時から4年、震災から7年もたってしまった。
直子の結婚式に出るために故郷へ帰った賢治は直子に「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と言われる。
「賢ちゃんが相手の人とうまくいかなくなるのは分かってたし、だったら、私、待ってればよかったかなって。ヘンな嫉妬なんてしないで、もっとちゃんと自分の身体の言い分を聞いてあげた方がよかったのかもしれないって」と直子は言う。何があろうと「自分の身体の言い分」を聞いてあげようという映画です。
原作者・白石一文氏さん
『赫い髪の女』や『遠雷』の頃から荒井晴彦さんの脚本に魅せられてきた者のひとりとして、その荒井さんから映画化の話をいただき、一も二もなくすべてをお任せすることにした。しかも今回は自らメガホンを握って下さるという。原作者としてこれに優る光栄はない。
「火口のふたり」はあの大震災から時を経ずに一気呵成で書き上げた小説で、私としてはめずらしいほど生命力にあふれた作品だ。人のいのちの光が最も輝く瞬間をどうしても描きたかったのだろう。
映画界の伝説ともいうべき荒井晴彦さんの手で、その光がよりなまなましく、妖しく観る者の心を照らし、身の内に眠っていた“おとこ”や“おんな”が強く喚起されんことを切に願っている。
柄本佑さん
荒井晴彦脚本作品に出ることは僕の夢でした。今回のお話をいただいた時、小躍りしました。なんたって脚本だけでなく監督も荒井さんなんですから。ホンはなんともチャーミングで「大人」なホンでした。5歳の時から僕を知ってくれている荒井監督。今まで仕事したどの監督よりも付き合いの長い監督です。どんな映画になっているのか。出ている自分を見る不安はありますが、いち映画ファンとして出来上がりが楽しみです。
瀧内公美さん
最初に脚本を読んだ時の感想は、絡みのシーンが多い、他愛のないことをずっと喋っている。面白いけれど、私に出来るのかなぁと思いました。現場に入り柄本さんとお芝居をすると、賢治と直子として他愛のないことを話す、食べる、身体を合わせる、寝る。そんな二人の日常を積み重ねていくうち、ああ生きるってこういう事なのかなと、自然と身体が動き、賢ちゃんを真っ直ぐ見て、聞いて、素直に直子として生きたように思えます。
良い緊張感と幸福感が現場に漂い、荒井さんと柄本さんの何気ない会話の端々に、この映画にとっての大切な何かがあるような気がして、さりげなく聞いているのが毎日の愉しみでした。
まだ仕上がりは見ていませんが、綺麗に撮っていただきましたので、実物より綺麗な私を見て欲しいです(笑)。お楽しみに。
出演:柄本佑 瀧内公美
脚本・監督:荒井晴彦
原作:白石一文『火口のふたり』(河出文庫刊)
音楽:下田逸郎
製作:瀬井哲也 小西啓介 梅川治男
エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎 森重晃
プロデューサー:田辺隆史 行実良
企画:寺脇研
企画協力:河出書房新社
撮影:川上皓市 照明:川井稔・渡辺昌
録音:深田晃 装飾:髙桑道明
衣装:小川久美子 美粧:永江三千子
編集:洲﨑千恵子 助監督:竹田正明
制作担当:東克治
特別協力:あきた十文字映画祭実行委員会 横手フィルムコミッション 秋田フィルムコミッション研究会
製作:「火口のふたり」製作委員会
制作プロダクション:ステューディオスリー
配給:ファントム・フィルム
2019年、全国ロードショー
※本作について、18歳未満の観覧は禁止されています。
©2019「火口のふたり」製作委員会