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  • 日本人が書いたと思えない!このミス第2位『ベルリンは晴れているか』が圧倒的リアリティで話題に

    2018年12月16日
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    日販 MD課 溝口
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    今年9月に筑摩書房から発売され、先日発表された「このミステリーがすごい!2019年版」で国内編第2位を獲得した『ベルリンは晴れているか』

    著者は『戦場のコックたち』が2016年の直木賞・本屋大賞にノミネートされた深緑野分さん。

    『ベルリンは晴れているか』は、ミステリー小説としての技巧もさることながら、書店員をはじめとした読者から「日本人が書いたとは思えない」「ドイツで戦争を体験した人の翻訳小説かと思った」と声があがるほどの圧倒的なリアルさ・臨場感が話題を呼んでいます。

    ベルリンは晴れているか
    著者:深緑野分
    発売日:2018年09月
    発行所:筑摩書房
    価格:2,052円(税込)
    ISBNコード:9784480804822

    あらすじ
    1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。
    ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
    米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。
    しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――
    ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。

    (筑摩書房『ベルリンは晴れているか』特設サイトより)

    あらすじにもあるように、本作の舞台は、ナチスによる恐怖政治に終止符が打たれたものの戦火の跡と混乱が残るドイツ。

    戦争によって天涯孤独となった主人公・アウグステは、“陽気な泥棒”(=実態は元俳優の「カフカ」というユダヤ人)とともに、不審な死を遂げた恩人の甥を探す旅をしながら、本作のメインテーマである「殺されるような人物ではなかったのに、なぜ、そして誰に殺されたのか」という謎の真相に迫っていきます。

    そして、少し物語が進んでいくなかで私たちを一気に戦後ドイツへ引きずり込むのが、冒頭で触れた「リアリティあふれる描写」です。

    たとえば、恩人の遺体を確認した後、ソ連の警察署から帰るアウグステが夜空を見上げて考え込むシーン。

    夜空はいくらか霞んでいて、星があまり見えない―― 今年の夏がこんなに暑いのは、建物が崩落した時に舞い上がった塵だの燃えかすだの何だのが、まだ大気を漂っているから、外に熱が出ていかないためだとどこかで聞いた。今もあの空に、何日か、何ヶ月が、何年か前に燃えた塵が飛んでいるのかもしれない。(p.53)

    この物語は、敗戦2か月後の7月から始まります。数か月、もしかしたら何年も前の塵が、まだ漂っている――。

    長かった戦争が終わってもなお、人々の日常にはその気配が残っているということが伝わってきます。

    掏摸はまだウンター・デン・リンデンを歩き続け、通りの終点である、巨大なブランデンブルク門に近づいていく。(中略)ソ連の占領の印である赤い布がかかっている。門の前には、赤い星を頂いた大きなスターリンの肖像画が置いてあり、赤軍兵たちが周りに花を飾る最中だった。(p.77)

    これは、カフカに鞄をすられたアウグステが彼を追いかけるシーン。

    些細な風景描写だと読み流すこともできますが、米ソ英仏4か国の統治下にあった当時のベルリンの状況がここでも表現されています。管理する国によってベルリンの街や人々の雰囲気は異なり、作中でもそのようすがアウグステの目を通して描かれています。

    ナチス時代のドイツを描いた小説や映画はいろいろありますが、“違和感がない”を通り越して「実際には当時を経験していない人物が書いている」「しかも筆者が現地の人ではない」という事実に対して違和感を覚えるという体験は、そうそうできるものではないはず。

    「第二次世界大戦中のベルリンの空気が肌に伝わる」との評も寄せられている本作。巻末の主要参考文献を見てみると、記載されている文献・映像資料・小説は40冊以上。執筆に際して深緑さんが行なった取材の量は、前作『戦場のコックたち』のなんと4倍近くにもなります。

    リアルを知らなくても感じることができる「不思議なリアリティ」と、驚きの連続となる「極上のミステリー」を、ぜひ堪能してみてください。




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