• fluct

  • 小学5年生の主人公が、未知の大人と出会い成長する物語『たまねぎとはちみつ』著者・瀧羽麻子さんインタビュー

    2018年12月13日
    楽しむ
    偕成社ウェブマガジン「Kaisei web」より転載(一部編集)
    Pocket

    『うさぎパン』『左京区七夕通東入ル』など、文芸書で活躍されている瀧羽麻子さん。初めての子どもたちに向けた作品『たまねぎとはちみつ』が誕生しました。

    たまねぎとはちみつ
    著者:瀧羽麻子 今日マチ子
    発売日:2018年12月
    発行所:偕成社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784037273101

    引っ込み思案の小学5年生の千春が、ふとしたことから出会った、修理屋のおじさん。学校でも家でもないその場所でのおじさんとの交流が、少しずつ千春の内面を変えていきます。

    本作のヒントとなったのは、誰もが知る、あの名作映画なんだとか。今回は瀧羽麻子さんに、作品への思いを伺いました。

    写真撮影/浅野剛 

    瀧羽麻子(たきわ あさこ)
    1981年兵庫県生まれ。京都大学卒業。2007年『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。著書に『株式会社ネバーラ北関東支社』『はれのち、ブーケ』『いろは匂へど』『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』『左京区桃栗坂上ル』などがある。

     

    初めて児童書を書くにあたっての想い

    ――今回、初めての児童書となりますが、以前から児童書を書きたいという思いがおありになったのでしょうか?

    長く一般書を書いてきて、あまり児童書を書くという発想はありませんでしたが、数年前に短篇アンソロジーの依頼をいただいたご縁で、長篇にも挑戦させていただくことになりました。

    わたしは幼少時から本が大好きで、物語からいろんなものを与えてもらったと思っているので、変な言いかたですが、恩返しのような気持ちもあります。

    子どものときに本を読む習慣がつくかどうか、本を好きになれるかどうかで、ちょっとおおげさかもしれませんが、そのひとの読書人生が決まる気がします。

    そういう意味で児童書は、本の世界への入口として、重要な役割を担っているんじゃないかと。自分がそこにかかわれるのは、光栄に感じる半面、緊張もありました。

    ――これまでの作品は、大学生や社会人など、いわゆる大人が主人公でしたが、今回児童書を書くうえで特に意識されたことはありますか。

    児童書の初心者として不安もあり、担当編集者の方に質問したのですが、わたしの場合は作風も文体もいつもどおりで特に問題ないと言っていただけてほっとしました。

    ただ、これは児童書も一般書も同じですが、小説を書く上では登場人物と寄りそう必要があります。小学5年生の主人公がどんな気持ちでどんな行動をとるのか、しっかり想像するように心がけました。

     

    テーマのヒントになったのは、名作映画「ニュー・シネマ・パラダイス」

    ――ストーリーの構想はどのように得たのでしょうか?

    担当編集者の方とはじめて打ち合わせをしたときに、ふたりとも映画が好きだとわかって、「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな物語はどうだろう、という話になったんです。

    あの映画では、主人公の少年が映写技師のおじさんと知りあって大きな影響を受け、成長していきます。同じように、未知のおとなとの出会いによって世界が広がっていく、というのを基本軸にしようと決めました。

    あと、一般的な小学生の日常って、家庭や学校や習い事あたりで完結しているかと思うのですが、それ以外の場所での出会いがあるとおもしろいかも、と。

    一方で、友だちどうしのけんかや親への反発など、小学生にとっては身近なエピソードも盛りこんだつもりです。

    ――千春や俊太にとって、親でも学校の先生でもないおじさんという相談相手がいること、うらやましく読みました。瀧羽さんも幼いころ、近くに「おじさん」のような大人がいたのでしょうか。

    小学六年生のときに通っていた塾の講師の先生には、とてもお世話になりました。当時のわたしはちょっとした反抗期で、生意気でかわいげのない子だったんですが、ていねいに向きあってくださいました。

    とにかく子どもあつかいされなくて。「このひとはなんだか違う」と子ども心に感じた記憶があります。

    ちなみに、二十年以上経った今も交流は続いていて、わたしが本を出すたびに感想をくださいます。この『たまねぎとはちみつ』も、気に入ってもらえるといいなと思います。

     

    子どもだけでなく、お母さん世代にも響く物語

    ――千春とお母さんの関係も印象的でした。お母さんが、わが子を大切に思うあまり、いつのまにか子どもを束縛してしまっているところや、親子といえど、けっこうおたがいに気をつかっているところなど……子どもだけでなく、お母さん世代の読者も共感するところが多いと思います。

    ありがとうございます。わたし自身には子どもがいませんが、友人知人には子育て中のお母さんが大勢いて、彼女たちから話を聞く機会はよくあります。

    聞けば聞くほど、子育てってむずかしそう……毎日わが子と向きあっているお母さん方のことは、本当に尊敬します。

    ――現代を生きる子どもたちに、伝えたいことがありますか。

    世界は想像以上に広くて、いろんなおもしろいひとたちがいて、いろんなおもしろいことが起こっている(もちろん、つまらないひとたちもいるし、くだらないできごともあるけれど)。

    そして、その広い世界につながる扉は、案外すぐそばに存在しているのかもしれない。この物語を読んで、そんなふうに感じていただけたらうれしいです。

    ――ありがとうございました。

    たまねぎとはちみつ
    著者:瀧羽麻子 今日マチ子
    発売日:2018年12月
    発行所:偕成社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784037273101

    小学5年生の千春は、ふとしたことから修理屋のおじさんと知り合う。そのお店には同じクラスの俊太がいた。何かが変わった3人の特別な1年。

    『たまねぎとはちみつ』はKaisei webで連載していた作品を、改訂・単行本化したものです。現在第1話のみ公開しています。


    ※本記事は、偕成社のウェブマガジン「Kaisei web」に2018年11月30日に掲載されたものです。また、この記事の内容は掲載当時のものです。




    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る