'); }else{ document.write(''); } //-->
アメリカで話題の、LGBT理解と個性の尊重を訴える絵本『にじいろのしあわせ~マーロン・ブンドのあるいちにち~』の日本版が、12月8日(土)に発売されます。
本作はもともと、マイク・ペンス副大統領の妻と娘によって作られた絵本のパロディ本で、LGBT政策・権利拡大に対し反対姿勢をとるペンス副大統領を皮肉って作られたもの。
ところがアメリカでの発売当初から、その内容に感銘を受ける人が続出し、現在では累計発行部数が80万部を突破するほど支持を得ています。
本書の主人公は、マーロン・ブンドというオスのウサギ。ペンス副大統領の一家が実際に飼っているウサギがモデルです。
ペンス副大統領は、お屋敷に住むおじいちゃんとして少しだけ登場しています。
しかし、マーロンはおじいちゃんを「あんまりおもしろいひとじゃない」と一蹴。物語のなかではこのように、ペンス副大統領を風刺した表現も見て取れます。
そんなマーロンの「とびっきりのいちにち」が描かれている本書。今回はその内容を、一部抜粋して紹介します。
ある日マーロンは、ウェスリーというオスのウサギに出会います。
ふっくら ふわふわの からだ、
しなやかな ながいみみに、ふさふさのしっぽ。
なんてすてきな ウサギなんだろう!
出会った瞬間から、彼に惹かれていくマーロン。2匹はすぐに意気投合し、庭やお屋敷のなかを、一緒に元気にかけまわります。
階段やキッチン、副大統領がいる会議室のなかも、ピョンピョンとかけぬけていきます。
そうして楽しい時間を過ごしていくうちに、2匹はお互いへの想いを募らせていったのです。
おもうぞんぶん はねまわってから、ぼくはいった。
「ウェスリー、ぼくは もう きみなしで はねまわりたくないよ」
すると ウェスリーが いった。「ふしぎだね。ぼくも そうおもってたんだ。マーロン・ブンド、もう きみなしじゃ はねまわれない」「だったら けっこんして ずっといっしょに はねまわろうよ」
互いの想いを確認し合い、“結婚”を決意する2匹。友達の動物たちにも、そのことを公表します。
ところが結婚までの道のりには、大きな壁が立ちふさがっていました。
みんなの「リーダー」であるカメムシが、「オスのウサギが、オスのウサギと結婚できるわけがない」と、猛反対したのです。
「オスのウサギは メスのウサギと、メスのウサギは オスのウサギと、けっこんすることになっている。それが ふつうなんだ。おまえたちは ふつうとちがう。ふつうとちがうのは いけないことだ」
2匹の結婚を認めず、「お前たちは普通じゃない」と言い切るカメムシを前に、動物たちは言います。
アナグマのヘッコキーくんが まえにすすみでた。
「ぼくも ふつうとちがうよ。サンドイッチを たべるとき、みみだけ さきにたべちゃうし」「ぼくだって ふつうとちがうよ」ハリネズミのトゲトゲ・キューリくんも いった。
「ほんを よむとき、いつも さいしょに さいごを よんじゃうんだ。かなしすぎる おはなしだと こまるから」
次々に、自分たちの「普通とちがうところ」を公表していく動物たち。そんななか、カメのノロノロさんが、こんな一言を発しました。
「だれでも ふつうとちがうところは あるでしょ。ふつうとちがうのは いけないことなんかじゃないわ」
カメのノロノロさんが いった。
「すてきなことよ」
「普通とちがう部分は誰しもが持っていて、それはいけないことではない」――動物たちは、自分自身の「普通とちがう部分」を告白することで、互いにその“違い”を認め合い、違いがあることは“素敵なこと”であると、確認し合いました。
このあとは、だれがリーダーにふさわしいのかを、皆で投票して決めることになります。結果はどのようになるのでしょう。そして、マーロンとウェスリーは結ばれるのでしょうか。
物語の結末、そして伝えたいメッセージは、本作における最後の文章に集約されます。
どっちだって いいんだ。おんなのこを すきになっても、おとこのこを すきになっても。
サンドイッチを みみから たべても、やわらかいところから たべても。
虹にさまざまな色があるように、幸せの形もひとそれぞれ。いろんな色の――にじいろのしあわせが、あっていい。そんなあたたかいメッセージが込められた作品です。
(訳者解説より)
本作は、アメリカ現政権の、時代に逆行したスタンスをシニカルに描いた作品でありながら、大ヒットを記録しました。
その背景には、LGBTを題材に、「個性の尊重」や「友情の大切さ」「人それぞれの幸せ」など、普遍的なテーマが描かれていることがあります。
動物たちの目線から投げかけられる問いに、あなたならどう答えるでしょうか。「だれもが幸福になる権利を持っていて、その形はさまざまであっていい」そんなことを見つめ直すきっかけになる一冊です。