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時代小説好きの“次の一冊”に!新米足軽の活躍を描く文庫書き下ろしシリーズ:わが店のイチオシ本(vol.47 TSUTAYA清水春日店)

全国の書店員さんが、もっともお勧めの本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。

第47回は、静岡県静岡市にあるTSUTAYA清水春日店の書籍チーフ(文芸・文庫担当)の中川咲絵さんのご登場です。

中川さんの“イチオシ本”は、地元・静岡も登場する人気時代小説「三河雑兵心得」シリーズ。リアル書店ならではのお客様とのエピソードも交え、ご紹介いただきました。

 

時代設定とキャラクターが魅力!今後が楽しみな文庫書き下ろしシリーズ

当店は年配の男性のお客様が多く、佐伯泰英さん、葉室麟さんなどの時代小説を愛読されていて次に何を読もうかと悩んでいるお客様には、「三河雑兵心得」シリーズをおすすめしています。

同シリーズは、おすすめ時代小説(歴史小説)紹介サイト「時代小説SHOW」の2020年文庫書き下ろし時代小説ベスト10で第1位を獲得。その後、時代小説おすすめ本コーナーで販売してから売上が止まることなく、今でも大きく展開しています。本書は三河を舞台にした徳川家康が登場する作品であり、さらに地元静岡も登場するということで、購入されるお客様も多いです。

この作品の魅力を2点あげるとすると、まず1つ目に、時代小説の文庫書き下ろしの中でも、戦国時代を描いた珍しい作品であることです。それに付け加えて足軽の目線から見た戦国時代が新鮮かつリアルであり、鎧の付け方などの戦支度や槍の使い方、鉄砲の撃ち方や戦法の解説もあり、とても興味深いです。戦の描写も丁寧で臨場感があり、あまり歴史に詳しくない私でも次へ次へと読み進められました。

2つ目は、キャラクターの魅力です。主人公の茂兵衛は、乱暴者の農民から足軽へと転身、生き残ればいいとガムシャラに戦う不器用な姿は、応援したくなる主人公ナンバーワンです。人間臭く愛すべき茂兵衛がこれからどのように活躍し、出世していくのか楽しみです。

コロナ禍という状況もあり、さまざまなことが息苦しく感じることが多いですが、泥臭く、懸命に戦いながら少しずつ成り上がっていく茂兵衛の姿に励まされ、スカッと爽快な気分になれるシリーズです。

このようにいつもお客様にさまざまな本をおすすめしていますが、お客様が次に来店された際に、お返しにと本をすすめ返されることがあります。こういったやりとりは、リアル書店だからこそできる、とても嬉しい出来事です。

しかし、お客様からのおすすめ本が当店に在庫がない本であったり、棚に1冊しかない作品であることが多く、自分がまだまだ勉強不足であること、「おすすめ本」の選定の難しさを感じます。お客様からの気づき、学びは本当に多いです。

当店は中型書店なので品揃えの面でいうと、ライトユーザー向けの売れ筋・ベストセラーの展開は充実していますが、本を愛する読書家のお客様にも喜んでいただける、他書店とは違う独自の棚づくり、本の発掘が課題だと感じています。

これからもお客様の声を大切に、多くのお客様から愛されるお店をつくっていきたいです。

◆作り手からのメッセージ◆
実は、井原忠政というペンネームは、徳川四天王から一字ずつもらっています。酒井忠次の「井」、榊原康政の「原」、本多忠勝の「忠」、井伊直政の「政」。もともとは違う名前で活動されていた著者が戦国を舞台にした歴史時代小説に挑戦するに当たり、並々ならぬ覚悟を示しました。(双葉社 文芸出版部 大城武さんより)


TSUTAYA清水春日店
(Tel. 054-355-3737)〒424-0842
静岡県静岡市清水区春日1-8-30
※営業時間 9:00~24:00


(「日販通信」2022年1月号「わが店のイチオシ本」より転載)