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『軍鶏』『迷走王ボーダー』『リバースエッジ』で知られる、たなか亜希夫さんの最新作『リバーエンド・カフェ』第1・2巻が、双葉社より9月28日(金)に同時発売されました。
『リバーエンド・カフェ』の舞台は、東日本大震災後の宮城県石巻市。北上川の中瀬にある小さなカフェを訪れる人々の悲喜こもごもを描いた人間ドラマで、現在「漫画アクション」(双葉社)にて連載中です。
『リバーエンド・カフェ』の主人公は、高校2年生の入江サキ。彼女は中学生の時に思わず口にした“ある一言”をきっかけに、以来ずっとクラスメイトからいじめを受けています。
「卒業まであとたったの1年半」「それまでなんとかやり過ごそう」と自分に言い聞かせながら、つらい日々を耐えるサキ。
しかしある日、謎の中年男に出会います。
▼誰かが流した噂を信じてサキに絡んできた輩から、追い払ってくれた謎の中年男。
男に助けてもらった日の夜、悪夢にうなされて目が覚めてしまったサキ。
ふと家のベランダから外を眺めると、北上川の中瀬に小さな明かりが灯っているのに気がつきます。
翌日あたりへ向かってみると、そこには家のようなものがポツンと建っていました。
そして建物の中には、なんと昨日の謎の男が! そう、彼は中瀬にある小さなカフェを営むマスターだったのです。
▼その不思議なカフェの名前は「リバーエンド・カフェ」。
偉そうで、ぶっきらぼうで、何かあるとウンチクを語りたがる、まさに“オッサン”というタイプのマスター。
強引にカフェの開店準備を手伝わされ、最初は疎ましく思っていたサキ。しかし、次第にマスターのやさしい人柄や彼の淹れるコーヒーの魅力に惹かれ、いつしかお店に通うようになります。
『リバーエンド・カフェ』では、どこにも居場所がなかったサキが、マスターやカフェを訪れる一風変わった客たちとの出会いを通じて、傷ついた心を癒やしながら成長していく姿が描かれています。
『リバーエンド・カフェ』の舞台である石巻は、東日本大震災で大きな被害を受けたエリアです。
震災の数年後を描いているため、発生直後の直接的な描写はありませんが、風景からはまだ傷跡があちこちに残っているのがわかります。
登場人物たちもフラッシュバックに苦しんでおり、また、主人公のサキがいじめられている理由にも震災が大きくかかわっています。
『リバーエンド・カフェ』に登場するのは、つらい過去の記憶や現在の厳しい境遇から心が固まってしまい、その場から動けなくなっている人たち。そんな彼らがマスターの一杯のコーヒーをきっかけに、前を向いて一歩踏み出す姿が描かれています。その行き先は必ずしもハッピーエンドとは限りませんが、この作品にはそんな人生さえ肯定するようなやさしさがあるのです。
著者のたなか亜希夫さんは石巻出身。頻繁に石巻を訪れては取材をしており、この作品の中にいまの石巻が様々な角度から描かれています。『リバーエンド・カフェ』には、たなかさんの故郷へのあたたかい眼差しが感じられ、それがまた読む人の心を癒やしてくれるのです。
物語はまだまだ序盤。マスターは未だ謎の男のままで、その過去はほとんど語られていません。これからの展開が楽しみな人間ドラマです。
©たなか亜希夫/双葉社