'); }else{ document.write(''); } //-->
1979年に「感傷の街角」で第1回小説推理新人賞を受賞してデビューし、「新宿鮫」シリーズはじめハードボイルド小説の数々で知られる大沢在昌さん。
デビュー40年目の節目を迎える今年、記念碑的作品となるミステリー巨編『漂砂の塔』が発売されました。
「武器を持てない」「捜査権もない」おまけに土地柄「応援を要請してもなかなか人が来られない」という場所で、潜入捜査することになった主人公を描く本作。650ページ超の大ボリュームにもかかわらず、読者からは早くも「図らずも一気読みしてしまった」「650ページもあると思えないほどスルスル読めてしまった」との声があがっています。
今回はそんな『漂砂の塔』の魅力と執筆の舞台裏を、編集を担当した集英社文芸編集部 栗原佳子さんに教えていただきました。
『漂砂の塔』の連載が始まったのは、2016年の初め。集英社では11年ぶりとなる、待ちに待った大沢在昌さんの小説連載でした。
大沢さんといえばハードボイルド小説の第一人者。『新宿鮫』の鮫島を筆頭に、クールで強い男を数多く描いてきた作家ですが、本書の主人公・石上は、著者いわく「ヘタレな男」。ロシア系のクォーターで日本人離れした容貌と高い語学力を持ち、何度も潜入捜査を経験してきた国際犯罪捜査官でありながら、荒事が不得手で、潜入捜査から戻ると極度の緊張が解けるせいか吐いてしまう。「向いてないんですよ。いつ正体がバレるかと思うと、生きた心地がしない」と上司にこぼすような人物です。
そんな石上が、日本人の変死体が発見された北方領土の小島に、捜査のために送り込まれます。そこは日中露の三カ国が共同でレアアースを採掘する、利権と欲望の渦巻く島。雪と氷に閉ざされ、武器も捜査権も持てない土地で孤軍奮闘することになる石上は、「こんな捜査をひとりでやろうというのが無茶なのだ」とぼやきながら、それでも諦めずに地道に捜査を進めてゆきます。一癖も二癖もある島の人間たちから情報を収集するうち、秘められた島の過去が浮かび上がり――。
物語の幅を制限しないように、最初からプロットをカチッと決めることはしない、と話す大沢さん。それどころか本書は、犯人が誰かさえ決めずに書き始めたそうです。作家生活40年を迎える著者のエンターテインメント魂がこもった、スピーディで先の読めないミステリー大作。一気読みの快感を、ぜひ味わってください。
(文・集英社 文芸編集部 栗原佳子)
2022年、雪と氷に閉ざされた北方領土の離島。
日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。
凍てつく海岸に横たわる死体。何者かに抉りとられていた両目。
捜査権がなく、武器も持てない土地に送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な警視庁の石上(イシガミ)だった。
元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボス……敵か、味方か?
信じられるのは、いったい誰だ?
日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く!
『漂砂の塔』特設サイトにて、大沢在昌さんと『孤狼の血』の柚月裕子さんによる対談が公開中! 本作の試し読みもこちらから。