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デビュー作となる絵本『そらからきたこいし』が刊行された、しおたにまみこさん。
“ちょっといいものひろった” そんな小さなうれしさが、はるか遠く、空の彼方まで思いをはせることにつながっていく、スケールの大きな作品です。
今回はしおたにさんに、何年もかけて完成したこの力作が、どのようにして生まれたのかを伺いました。
――『そらからきたこいし』、女の子がある日、地面から少しだけ浮いている小石を見つけるところから始まる、ふしぎな雰囲気のただようお話ですね。どんな風にお話が浮かんだのですか?
はじめは「星屑が落ちてくる」というイメージと「浮かんでいる石」のイメージが別々にありました。浮かんでいる石は大きくて、自然と一体化している苔むしたイメージでした。
星屑がキラキラ落ちてくるというのは綺麗だなと思っていたのですが、お話を考えようとしてもまとまらないので放っておいたんです。
それで、浮かぶ石の方のお話をベッドでゴロゴロしながら考えていたら、いつのまにかふたつの話がドッキングしていました……。
――おお、ドッキング。この本のなかにもそんなシーン、でてきますね。
あ、ほんとですね。最終的にはじめにあった二つのお話のイメージとは、かけ離れたものになったなあと思っています。
――ドッキングの前とあとでさいしょからのすがたと変わっていく……まるでこの絵本のストーリーのようでもあります。さて、女の子は、その浮かぶ小石を集めていきますが、しおたにさんは、なにかを集めたことはありますか?
やっぱり石は好きで、砂利のなかから透明感のある石を探したりしてました。それを集めていたかは覚えていないんですが……。いまは、鉱石などをすこし集めています。
でも、形の良いものをと思うとなかなか値が張るので、年に1、2個買うか買わないかです。最近、なんだか値段が上がってきているような気がして、今年はまだ買えてません……。
あと、子どもの頃、ダンゴムシを集めていたそうなのですが、自分でも信じられません。
――絵のことをお聞きします。墨色の濃淡が見ていて心地よく、もののやわらかさや硬さが伝わってきますね。おもわずさわりたくなります……。こまかく描きこまれているので、画面の隅っこまでたのしく見入ってしまいますが、画材はなんでしょう?
基本は木炭鉛筆です。木炭の粉に何か混ぜ物をして扱いやすいように鉛筆の形にしたものだと思うのですが、本当のところはわかりません。あと、木炭も使います。ヤナギやクワのものが良く売っているので、たぶんその辺りのを使っていると思います。
木炭では広い面を描くのですが、粉が舞って少々不都合なこともあるので、最近は使用頻度が激減しています。ほかには、色鉛筆、定着剤、ハケ、布、ネリゴム、鉛筆、白のガッシュ、マスキングテープなどを使っています。
――いつもどんな風に絵を描いていますか?
最初はベースの陰影を中心に描きます。
ついつい気になる箇所ばかりに手を入れてしまうのですが、そうすると、全体のバランスが崩れてしまい余計に時間がかかるので、背景から手前に向かって順序良く描いていくのが理想です。でも、気がつくとやはり一部ばかり描いているので注意が必要です……。
あと、空気遠近法的に後ろよりも手前のものを描きこむのですが、ちょっと気をぬくと、意味のない箇所でずっと点描じみたことをしていることがあり、これにも注意しなくてはなりません……。
――しおたにさんの絵に、つい目を奪われてしまうのは、その描きこみの「執念」のせいかも……!? どうしてその手法で描くようになったのでしょう?
静謐な雰囲気が好きなのでモノトーンなのかもです。自分のことなのですが、よくわかっていません……。
―― 一枚の絵を仕上げるのにどのくらい時間がかかりますか?
絵によります。細々したものが多いシーンだと1ヶ月かかったり、描くものが少ないと、1週間で描けたり。かなり描き進めたのに失敗したってことも多いので、それも含めると、けっこう時間がかかってしまいました。もう少し早く描けるようになりたいです。
――初めての絵本ですね。デビューってことばからなにを連想しますか?
デビュー……。これからはもしかして絵本作家と名乗ってもいいのかなと思ったりします。誰に名乗りたいわけでもないのですが、いままで肩書きがなかったのでちょっとうれしいです。
はじめて身近な人以外に見てもらう機会を得たのですが、まだ、「見られてしまう!」という気持ちのほうがつよい気がします。わたしが家に引きこもって作ったものをみなさんがどのように感じてくださるのか、とても緊張しております。
初めての絵本ですので、拙いところがたくさんあると思いますが、よろしくおねがいいたします。
――ありがとうございました。
あるとき、女の子はほんのすこしだけ地面から浮いている小石を見つけました。不思議に思ってしらべはじめますが、誰に聞いても、本を読んでも、「うかぶ小石」のことはわかりません。でも、女の子がよく探すと、うかぶ小石はいろんなところですこしずつ見つかって……。
木炭と鉛筆による緻密なタッチの絵で、女の子の小石への思い、小石が集まってからおこったとくべつなできごとを、繊細にえがきます。小さな身近なものへ寄せる思いが、遥か彼方にあるものへの思いへとひろがっていく、新人作家の鮮烈なデビュー作。
※本記事は、偕成社のウェブマガジン「Kaisei web」に2018年9月20日に掲載されたものです。また、この記事の内容は掲載当時のものです。